メディカル・ヘルスケア☆いのべーしょん

医療と健康(ヘルスケア)融合領域におけるイノベーションを考察するブログ

簡易型機器によるセルフスクリーニング

2010-10-30 23:18:02 | 医療

軽症群または病気における初期ステージにある患者群をターゲットとした仕組みとして、様々な機器やシステムを利用したケアこそ効果的だと考える。なぜならば医師にかかる前段のスクリーニング機構を推し進めるとすれば、究極は自分自身で簡易診断ができれば、スクリーニングとしてのより一層、重層的な構造の構築につながるからである。生体センサなどエレクトロニクスやIT技術の活用により、今までブラックボックスだった身体機能にスポットを当てて可視化したり、生体信号をモニタすることで病気の兆候を拾い上げたり、といった従来は医師にかかっていたけれども、症状としては病気の前段のグレーな状態を明らかにすることによって、医師にかかるべきかどうかの一次的なスクリーニング機構として機能することが十分考えられる。
 医療の中でのスクリーニングという括りよりも、より健康維持に近い予防を目的とした、健康診断の延長、あるいは体調や病状の変調をモニタするといったモニタリングという括りとして機能すれば、医療全体の枠組みの中でより前段、早期での処置の階層が確立する。

病院は真に治療が必要な人だけの受診機関とすべく、医師不足や医療費増大に対しての有効な施策とするために、患者の側に受益者負担の原理から自己負担割合を強いることによって、健康維持や健康増進への投資欲が高まるといった行動変容が期待できる。

厚生労働省が提唱する「健康日本21」は、生活習慣を改善し病気を減らす取り組みとして様々な疾病のガイドラインを提供しており、従来の「病気にかかったら治す」治療に重点が置かれた医療から、高齢化が進行した成熟社会ではQOLを最大化する予防に重点がシフトし、そのニーズをとらえようと多様な新興のヘルスケア産業が誕生している。これに連動して最近では様々な電機メーカが医療分野に参入を図るべく、エレクトロニクス技術を応用した多種多様な機器を開発しており、関連する学会や展示会も隆盛の様相を呈している。

医師不足に伴う医療サービスの供給が不十分な現状を鑑みれば、近い将来スクリーニングや予防措置は自己責任で自己管理が求められる時代となることが考えられ、現行保険制度に代わる新しい枠組みでの健康と医療のはざまにおけるサービスやシステムの概念がより重要となることが予想される。

 

 医療行為の一部の提供者が専門医師からより下層の医療従事者へのシフトが進む際に、技術の進歩による医療機器の発展は不可欠である。しかもその方向性としてより低価格、より簡便化が、ビジネスとしてすそ野を広げる上で重要である。実際、センシング技術の進歩を背景に、個人ユースを想定した様々なモニタリング機器が上市されている。
 ポータブルな診断機器(血液分析装置)を中核として、日ごろは自分でチェックし、気になったら保険の契約先医療機関へ連絡を取る。また、ネットワークを用いてデータセンタへ逐次送信し、データセンタはデータの管理、監視を行い、兆候が出た場合は保険の契約先の医療機関に連絡し、2次支援先の病院を受診してもらうなどの対応をとることで、予防型の医療サービスを提供する。

 

このような簡易型のモニタリング機器と一口にいっても、対象疾患や検出対象、さらには検出方法や検出レベルなど様々であるが、その多くは専門の医師により診断に用いられる専用の医療機器に比して精度は落ちるものの、一律に正常値の範囲と照合するのではなくとも、個人個人の日々のバイタルデータの相対的な変動や変調が検出できれば十分である。

例えば、体脂肪率が市民権を得ている背景には、体脂肪率計や脂肪率測定機能付き体重計の普及があり、体重、体脂肪減少をモチベートしていると考えられる。体脂肪計の精度は医療機器に求められる水準からすると極めて低いが、精度云々が重要なのではなく簡単に見える化できたことこそが意義のあることであり、数々の肥満対策に一役も二役も買っていると考える。

したがって、体重計、体脂肪計と同様に、モニタする対象を絞り込むことによって機能を限定して、個人ユースに耐え得る小型化、低価格化された簡易モニタリング機器や簡易診断機器が今後多数製品化され、医療階層の中の最下層を下支えすると考えられる。また新たな効用として、臨床に頼っていたヘルスケアデータに代わるN数の多い統計的なデータも得られることとなり新たな知見が得られる可能性もある。

 


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