メディカル・ヘルスケア☆いのべーしょん

医療と健康(ヘルスケア)融合領域におけるイノベーションを考察するブログ

人災と認定された中国鉄道事故

2011-12-29 17:53:58 | 日記
 40人もの死亡者を出した中国高速鉄道事故を当局は「人災」と認定した。

 2011年7月に起きた中国新幹線の事故では、証拠隠ぺいを図ろうとしてか事故車両を直ちに埋めその直後に掘り返し、世界を唖然とさせたが、事故から5か月が経過した今、ようやく当局は「当然」ともいえる認定をした。

 事故原因は以下の4つとしている。
①信号機の設計上の欠陥
②運行管理センターの設備や技術審査における規則違反
③落雷による同センターや線路の電気回路の誤動作
④鉄道局作業員の安全意識の低さ

http://www.asahi.com/international/update/1228/TKY201112280678.html

 さて、この事故から以下の3つのことが想起される。

 一つは、中国当局と世論の力関係の変化である。
 当初の政府には、事故の状況を内々に抑え込もうという意図が感じられたが、事故後の政府や鉄道局の対応に対して厳しく断罪すべきという世論の高まりを受け、温家宝首相が現地入りしたという経緯がある。
 アラブの春においてネットを通じ民衆の力が政府を打倒したことは記憶に新しいが、中国においても、同様に中国版ツイッターなどのソーシャルメディアという媒体によって民衆の批判が高まる等、民衆が相対的に強くなってきており、中国当局の情報管理や取り締まりも最早限界に近づいていると推察する。

 もう一つは、産業の発展と安全性とのバランスに対する考え方の違いである。
 ソフトウェア開発に代表される、完成度が低くても早期にリリースすることで問題点(バグ)を広く吸い上げ、運用しながら改善して完成度を高めていく「ベータ版文化」は、ソフトウェアのみならず多方面において、効率的に完成度を高める手法として活用されている。しかしながら、安全性に関わるもの、こと人命に関係する場合にはベータ版文化を適用する事は通常では考えられない。少なくとも日本的な発想であれば、安全性に関するところは試験に試験を重ね、幾重にもフェイルセーフを設け、それこそ重箱の隅をつつくような取り組みをするであろう。
 それに対して今回の中国新幹線の事故は、産業や経済が急速に発展するあまり、鉄道という安全が最も尊重されるべき場面においても、利用者の安全性を軽んじベータ版文化が適用された上での当然の帰結と思える。
 しかしながら、政府や鉄道局の考えには、産業発展のスピードを尊重するが故に、安全性の担保に時間と労力を「必要以上に」つぎ込みすぎないように、という意識があったのかもしれない。事故の犠牲者の事は時間の経過とともに薄れ、長い歴史の中にうずもれてしまうであろう中、運用しながら安全性を改善していく手法をとることは、日本とはケタ違いのスピードで高速鉄道事業を実現するには必要だったのかもしれない。無論、日本では考えられないことであるが。

 最後に3つめとして、中国国内における原子力発電所の安全に対するリスクである。
 中国国内には稼働している原子力発電所が11基存在する(2010年)。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=14-02-03-03

 福島原子力発電所の大事故は地震及びそれによる津波がきっかけとなった。地震大国である日本に限らず大陸である中国においても四川大地震等、大地震は不定期に発生している。
 上海や広東の沿岸部において原子力発電所が存在するが、ひとたび大地震や津波が発生した場合どうなるだろうか。証拠隠滅を図るため事故車両を埋めてしまうお国柄である。原子力発電所の事故の混乱の中、不都合な情報は管理されるであろうことは容易に推察される。放射能物質が海に放出されたり、黄砂に乗って日本に飛来するという最悪のシナリオはあまり想像したくないものの、対岸の火事ではすまされない、現実に存在する危険である。

 福島原発の教訓は国内のみならず、全世界的に活かされることを切に願うばかりである。

医療、ヘルスケア分野における大手電機メーカの動向加速

2011-12-26 00:00:04 | 医療
大手電機メーカの医療機器市場への新規参入や買収が相次いでいる。

富士フイルムホールディングスは、携帯型超音波診断装置の大手企業である米SonoSite社を買収した。富士フィルムは社名から「写真」を取り去り、完全に祖業から脱して、医療やコスメといった新規事業への投資を積極的に進めている。学生時代アメフトでならした社長の古森氏が新規参入事業では勝つまでやり続けるらしい。またフィルム事業出身ではないことも奏功し事業転換が上手く図られつつあるようである。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/dho/20111215/293874/

携帯型超音波診断装置といえば、王者のGEヘルスケアが昨年最小、最軽量と銘打ったモノをリリースしている。
http://japan.gehealthcare.com/cwcjapan/static/company/press/2010/13.html

こういったものが進化し、やがてパーソナルユースなものが大手電機メーカから発売されると予測する。

パイオニアもの医療分野への参入を表明している。
2014年度にも事業化するようであり、ピックアップ技術を応用し、国内ではシスメックスの市場占有率が高い血液分析機器の低コスト化を目指すようである。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/111130/bsc1111300506010-n1.htm

その一方で、独総合電機大手シーメンスが、ヘルスケア部門で最大1,200人の人員整理を計画している。断機器市場での供給過剰や各国の病院のコスト削減策などが逆風となっているらしいが、大手電機メーカがこぞって医療機器市場や健康関連市場に参入すれば、供給過多や競争激化といった状況になると考えていたが、意外にも早くその兆候が現れたか。
http://nna.jp/free_eu/news/20111222dem201A.html

経産省は日本再生計画の柱として、ヘルスケア、新エネルギー産業、クリエイティブ産業の3分野を軸とした内需の掘り起こしを提言している。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/111129/mca1111292222026-n1.htm

いずれにしても、医療、ヘルスケア領域は今後さらにホットな市場となりつつあり、巨額の粉飾に揺れるオリンパスを含め、業界再編が加速していくものと思われる。