医療革命が起こると題して、NHKスペシャルでiPS細胞を取り上げていた。
長い間科学の世界で生物学は物理学や化学と比べてわき役的存在であり、近代社会の発展は物理や化学に負ったところが多いが、エレクトロニクスが成熟を迎えている今日、生命科学はサイエンスの花形となっており、バイオメディカルや遺伝子工学は一大産業となりつつある。
ノーベル賞最有力候補と目される山中氏は、正にエポックメイキングな発見をし、今や世界が注目する日本の科学界のエースである。ところがテレビでみる氏は、目をつぶり慎重に言葉を選びながら驚くほど柔らかい物腰で話す。その姿勢は、飛ぶ鳥を落とす輝かしい経歴にも決して足元を見失わない、氏の真摯な人柄をよくあらわしているように思う。
iPS細胞は、様々なポテンシャルをもつ正に医療に革命を起こす発明であり、SF小説で語られてた夢を現実のものとする力を秘めている。再生医療やオーダーメイド治療などの道を創り、医療業界にインパクトを与えると同時に、副作用と薬効を検証するのにも有用であり製薬業界への影響も絶大である。
それと同時に生命の神秘という神の領域に足を踏み出したことを意味する。
クローンをはじめとする倫理的問題だけでなく、再生医療が進めば自分の皮膚細胞から臓器を作り出し、悪くなった臓器を取り換えるといった夢のようなことが現実味を帯び、寿命にあらがうことが可能となる。
実際、研究の中で生み出された成果である臓器を見て「すごい、と思うと同時に怖くなった」と吐露している。もはや社会に与える影響を考えれば研究の域を超えているが、氏は「研究者は知らないではすませられない。研究が与える影響までも意識してあらゆることを考えていかなければならない」とその決意を語っている。
研究成果が画期的であればこそ、研究を社会のために役立てようとする一方で、悪用する企業や輩も出てくるだろう。
だからといって歩みを止めるわけにはいかない。日本の頭脳が世界に流出する中、山中氏は日本に残った。資金が日本に比し1~2ケタ多いとされる米国はその潤沢な資金を背に開発競争にしのぎを削る中、日本は完全にワンノブゼムである。ただiPS細胞の生みの親である山中氏は、開発競争だけに目を奪われることなく、両刃の剣を如何にいい方に導いていくかも考えている。
iPS細胞の発見は間違えなく、人類の歴史上すごい発見である。と同時にいまだかつてない状況を創りだしたことも事実である。パンドラの箱は開けられてしまった。
原子爆弾を創りだしたオッペンハイマーをはじめとする当時の最高の物理学者たちと同じ苦悩を当世最高の生物学者の山中氏たちを取り巻いているに違いない。
社会全体でその開発動向に目を光らせて、その先に想像力を働かせて、そうなる前に適用のガイドラインやルール作りなどまでを考えていかなければならないと考える。
そういえば、iPS細胞は、induced pluripotent stem cellを略した用語だが、最初のiが小文字なのは、発見された2006年当時ヒット商品だったiPodにあやかったというのは興味深い。
長い間科学の世界で生物学は物理学や化学と比べてわき役的存在であり、近代社会の発展は物理や化学に負ったところが多いが、エレクトロニクスが成熟を迎えている今日、生命科学はサイエンスの花形となっており、バイオメディカルや遺伝子工学は一大産業となりつつある。
ノーベル賞最有力候補と目される山中氏は、正にエポックメイキングな発見をし、今や世界が注目する日本の科学界のエースである。ところがテレビでみる氏は、目をつぶり慎重に言葉を選びながら驚くほど柔らかい物腰で話す。その姿勢は、飛ぶ鳥を落とす輝かしい経歴にも決して足元を見失わない、氏の真摯な人柄をよくあらわしているように思う。
iPS細胞は、様々なポテンシャルをもつ正に医療に革命を起こす発明であり、SF小説で語られてた夢を現実のものとする力を秘めている。再生医療やオーダーメイド治療などの道を創り、医療業界にインパクトを与えると同時に、副作用と薬効を検証するのにも有用であり製薬業界への影響も絶大である。
それと同時に生命の神秘という神の領域に足を踏み出したことを意味する。
クローンをはじめとする倫理的問題だけでなく、再生医療が進めば自分の皮膚細胞から臓器を作り出し、悪くなった臓器を取り換えるといった夢のようなことが現実味を帯び、寿命にあらがうことが可能となる。
実際、研究の中で生み出された成果である臓器を見て「すごい、と思うと同時に怖くなった」と吐露している。もはや社会に与える影響を考えれば研究の域を超えているが、氏は「研究者は知らないではすませられない。研究が与える影響までも意識してあらゆることを考えていかなければならない」とその決意を語っている。
研究成果が画期的であればこそ、研究を社会のために役立てようとする一方で、悪用する企業や輩も出てくるだろう。
だからといって歩みを止めるわけにはいかない。日本の頭脳が世界に流出する中、山中氏は日本に残った。資金が日本に比し1~2ケタ多いとされる米国はその潤沢な資金を背に開発競争にしのぎを削る中、日本は完全にワンノブゼムである。ただiPS細胞の生みの親である山中氏は、開発競争だけに目を奪われることなく、両刃の剣を如何にいい方に導いていくかも考えている。
iPS細胞の発見は間違えなく、人類の歴史上すごい発見である。と同時にいまだかつてない状況を創りだしたことも事実である。パンドラの箱は開けられてしまった。
原子爆弾を創りだしたオッペンハイマーをはじめとする当時の最高の物理学者たちと同じ苦悩を当世最高の生物学者の山中氏たちを取り巻いているに違いない。
社会全体でその開発動向に目を光らせて、その先に想像力を働かせて、そうなる前に適用のガイドラインやルール作りなどまでを考えていかなければならないと考える。
そういえば、iPS細胞は、induced pluripotent stem cellを略した用語だが、最初のiが小文字なのは、発見された2006年当時ヒット商品だったiPodにあやかったというのは興味深い。