【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【泰山鳴動】

2009年11月10日 | オムコイ便り
 26日、月曜日。

 朝飯用に豚のバラとレバーを網焼きしていると、近所の家にレモンをもぎに行っていたラーがドタドタと駈け戻ってきた。

「クンター、大変だよ!今日、従兄弟が稲刈りをするんだって」

「今日?だって、稲刈りは来月から始まるって言ってたじゃないか」

「そうなんだけど、とにかく今日なんだって。ああ、大変だ、忙しい、忙しい。クンターも、一緒に行く?あ、駄目だ。クンターは腰が悪いくせに、働き始めると止まらなくなるから、ますます腰が悪くなる。だから、家にいてね。ああ、大変だ」

「落ち着けよ。いったい、何が大変なんだ?」

「ええとね、焼酎を買って稲刈りの手伝いに行くって約束したんだよ。そうすると、あとで彼が収穫した米をくれるんだ。今年は何度も洪水があって米の収穫量が少ないから、早めに手を打たないと」

「ああ、そういうことか。でも、手伝ってほしいんなら、なんで彼は昨日のうちに話をしないんだ?」

「昨日、DVDを観ているときに彼の奥さんが家に来たでしょ?あたし、それをすっかり忘れてたの」

「・・・」

       *

 すぐに飛び出して行くのかと思いきや、台所に座り込んで野菜を切り始めた。

「おいおい、朝飯はこのバラ肉で充分じゃないか」

「ううん、あたし、野菜を食べたいの。あ!もうみんな、田んぼに出かけちゃったよ。ああ、大変だ、大変だ」

 わが村では、誰かが稲刈りをするとき、近所の人たちが順繰りにこれを手伝うのが習わしだ。

 まだ7時半だが、バイクやクルマが次々に発進していくのである。

 その音をいちいち気にしながら朝飯の準備をしているのだから、落ち着かないこと、はなはだしい。

 「飯をあきらめて今すぐ田んぼに行くか、黙って飯を食うか、どっちかにしろ!」

 「あ、タバコ売りが来た!みんなの分も買って行こう。そうすれば、米がもっとたくさんもらえるよ。そうだ、焼酎、焼酎と。ああ、忙しい、忙しい」

 結局、タバコも焼酎も買って、飯もしっかり平らげた。

 こちらは、火を熾して1時間もかけて網焼きをしたというのに、ちっとも食った気がしない。

        *

 日焼け止めの化粧をして、やっと準備が整った。

「じゃあ、行ってきます。あ!鎌がない!」

「鎌?鎌は、バナナ園の作業小屋だ」

「町に出てたら、時間がない」

「待て待て。貯水タンクの下に水が溜まっているし、庭の草も伸びているから、今日は俺もクワと鎌がいる。ちょっと、バナナ園に行ってくるから待ってろ!」

 後ろに息子のポーを乗せて、バイクをすっ飛ばす。

 確か、1ヵ月ほど前に人を雇って草刈りをしたというのに、また雑草が腰の高さまで伸びている。

 そのまま草刈りを始めたい誘惑を振り切って、家に取って返す。

 「ほれ、鎌だ。じゃあ、行ってこい!」

 そこへ、魚売りがやってきた。

「あ、魚だ。クンター、晩ご飯、魚にする?」

「晩飯なんかどうでもいいから、とにかく行ってこい!もう、10時だから、みんなタバコと焼酎を待ってるぞ」

「わかった。じゃあ、行ってきます。あ、サングラスを忘れた!」

「ば、馬鹿たれ!」

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