【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【まいったなあ】

2011年04月06日 | オムコイ便り


 隣家の家に、ようやく屋根が葺かれた。

 経費削減のため自力でやっているので、実にのんびりしたペースである。

 ベランダの腰掛けに座って、屋根の仕上がり具合を確かめていると、大変なことに気がついた。

 朝に夕に眺めて来たなだらかな山並みが、屋根に隠れて見えなくなってしまったのである。

 アチャーッ。

 おまけに、目の前に迫り出してきた台所棟の壁は、屋根と同様の灰色のスレート板である。

 以前は、葉っぱの屋根に割竹壁という伝統的なカレン様式の家で、その屋根から立ち上る夕餉の煙などを眺めていると、実に心がなごんだものだ。

 これから、毎日この無粋な壁を眺めて暮らすのかと思うと、頭が痛くなってくる。

     *

 無粋な光景に背を向けて、ベランダで朝飯を喰った。

 客人のWさんからいただいたとろろ昆布の甘みに、ラーとふたりうっとりとしていると、「ギャーン!」という断末魔のような金属音が耳をつんざく。

 隣家の旦那が、床材に電気鉋をかけ始めたのである。

 まあ、これはお互い様で普請が始まる前の2~3日は我慢しなければならないのだが、隣家の場合は一気にやってくれないから、作業が進む数日ごとにこの騒音に見舞われることになる。

 思わず、星一徹に変じて卓袱台をひっくり返しそうになったが、とろろ汁への欲望がこれを辛うじて押しとどめた。

      *

 それにしても、寝不足の頭にとっては、この甲高い騒音は拷問に近い。

 実は、夕べ、ラーの母親が次姉の家からわが家に移ってきたのである。

 なんでも、学期休みで帰省している姪(ラーの兄夫婦が亡くなったので次姉の家に身を寄せている)がしょっちゅう携帯電話でおしゃべりしているので、母親にとってはその“奇妙なひとり語り”が耳障りで仕方がないのだという。

 なるほど、携帯電話など使ったことのない母親にとっては、それも一種の拷問のようなものだろう。

 その母親は、視力が衰えた不安もあってか、しきりに独り言を呟いたり、夜中に突然喚き出したりする。

 幸い、昨夜は落ち着いた様子で喚き声は出なかったのだが、夜明け頃からしきりに独り言を言い出した。

 わが家には、回り持ちで面倒を見ている長姉や次姉の家のような別棟がないから、その声は隣室からもろに響いてくるのである。

 それをまた、隣りにいるラーが制するものだから、とても眠れたものではない。

「クンターが眠れないから、静かにしてちょうだい!」

 おいおい、気持ちはありがたいが、お前さんの声の方がよっぽどうるさいぞお。

      *

 というわけで、今朝は朝飯も早々に切り上げて仕事場に逃げ出したのだが、なんと、その裏手の道の向こうからからも耳をつんざく電気鉋の金属音が聞こえてくるではないか。

 なんでも、今年は家を建てるのに縁起のいい年だそうで、雨が振らないこの4月は建設ラッシュなのだそうな。

 わが家が以前から総合見積もりを依頼している棟梁も、今は2軒掛け持ちで走り回っており、待てども待てどもやってこない。

 くそーっ。

 ストレス解消に、とりあえず電気鉋でもかけるかなあ。



*最後の写真は、騒音に悩むわが心の願望であろうか。


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2 コメント

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Unknown (ノィーイ)
2011-04-06 21:54:44
オムコイの自然の眺めが・・・。
他人ごとですがですがとても残念ですね。
返信する
山並み (クンター)
2011-04-07 12:30:25
ノィーイさん

 わが家も裏庭に建替えれば、また山並みが見えるようになるのですが、話がなかなか・・・。
返信する

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