【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【ファーストクラスの旅】

2010年06月05日 | オムコイ便り
 
 明け方の5時、やっとチェンマイにたどり着いた。

 ひと眠りして市場に行くと、ビエンチャンほど暑くはない。

 ホッとして、なじみの店で生絞りオレンジジュースを飲み干した。

      *

 昨日のノーンカーイも、雨模様だった。

 6時に起きだしてメコン川沿いのテラスに立つと、昨日渡ってきた友好橋がかなたに霞んで見える。



 対岸のラオスからやってきた漁師が、ひとりでエンジンを操作しながら網を巧みに操っている。

「あ、あの舟に乗って一緒に漁をしたい」

 ラーが、さっそく大声で漁師を呼び寄せて何やら話し込んでいる。

「まずは、あの友好橋の近くまで川をさかのぼる。次にラオス寄りの岸沿いを下って向こうの中州まで行けば大きなナーガ(守護蛇)の像が見られるんだって。ふたり700バーツでいいって言ってるけど、どうする?」

「なんだ。それじゃあ、ただの観光じゃないか。それに、宿のリバークルーズなら100バーツだ。そんな法外な値段があるものか」

 ただちに、却下した。

 しかし、「大きなナーガ像」というのは、ちょっと気になる。

 宿で尋ねてみると、「それは巨大な仏像が林立するワット・ケーク(サーラー・ケーオーク)ではないか」という。

 そこで、宿そばの麺屋で朝食をとると、さっそくトゥクトゥクを探した。

 宿裏にたむろしているトゥクトゥクも、表通りに整然と並んでいるピカピカのトゥクトゥクも、声を揃えて「ひとり往復150バーツ」だという。

 そこで、群れから離れてぽつんと停まっている老人ドライバーに声をかけてみると、ひとり往復100バーツ。

 車体もシートもぼろぼろだが、安いに越したことはない。

 走り出すと、ラーがケラケラと笑い出した。

 スピードが、あまりにものろいのである。

 まるで、歩いているみたいだ。

「これじゃあ、着く前に大雨が降り出すんじゃないか」

 再び空を覆い始めた黒雲が気になって仕方がないが、爺さんは悠々たるものだ。

 ふと見ると、通常装備のはずの雨よけシートも付いていない。

 雨が降らなければ、大吉。

 降り出したら、大凶である。

     *

 巨大な仏像やナーガ像はそれなりに迫力があったが、あまりにもでかすぎて、なんだかテーマパークに迷い込んだような気分だ。



 だが、信心深いラーはいちいち立ち止まってタイ語の解説文を読み、なにやら感慨深げな顔をしている。


 最後に、龍と鶏、それぞれの干支を司る仏様にろうそくと線香を供え、家庭平安と商売繁盛を祈願した。

 本堂でも仏像へのお参りを済ませると、ラーが記念品売り場に突進した。

「あ、これは家の平安用。あ、これは店の繁盛用。あ、これはクンターの仕事繁栄用。あ、これはあたしの人生向上用・・・」

 いくつあっても、足りやしない。 

「クンター、連れてきてくれて本当にありがとう。オムコイからビエンチャンに団体旅行で行ったことのある人はいっぱいいるけど、このお寺に来たのはあたしが初めてだと思う(どこに根拠があるんだろう)。運転手のお爺さんが教えてくれたんだけど、このお寺には幸運を背負っている人だけがお参りできるんだって。胸の中が、幸せでいっぱいだよ」

    *

 11時に宿を出て、再び爺さんのスロー・トゥクトゥクでバス停に向かった。

 およそ、1時間でウドンターニーのバス停に着いた。



 予約しておいた午後8時発の「VIP夜行バス」のチケット売り場に行くと、午後2時発の「ファーストクラス夜行バス」の座席もあるという。

 急遽、これに切り替えてバスを待つことにした。

 ウドンターニー午後2時半発予定の「ファーストクラス夜行バス(526バーツ)」は、激しい雨の中、30分遅れで発車。

 シートは中途半端にしか倒れないわ、足は伸ばせないわ、トイレは臭いわ、途中で乗り合いバス化して重いザックを膝の上に抱える羽目になるわ、晩飯を夜の10時半まで食わせてくれないわ、チェンマイ駅手前で給油後にバッテリーがあがってソンテオを拾う羽目になるわ・・・。



 素晴らしく、快適な“ファーストクラス”の旅を満喫させてくれた。

 やれやれ。

 それでも、終わってみれば実に愉快な旅であった。

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