今朝は、近隣で「ダイラムゥーン!」の大合唱である。
音頭をとっているのは、むろん、いたずら者のわが嫁だ。
なんでも、同級生の未亡人スージャに言い寄る男が現れて、焼酎や食べ物をさかんに貢いでいるのだという。
スージャは、大いに飲みかつ喰ってわが世の春を謳歌している様子なのだが、午後8時過ぎになると決然とカレン語で宣言する。
「ダイラムゥーン(とっとと帰れ)!」
すっかり酔いもまわり、腹もくちくなった。
あたしはこれから、夜の連続ドラマを観るんだから、邪魔をしないでくれというわけだ。
その彼女の叫び声は、すでに近隣で知らぬ者はなく、朝飯の支度をしながらラーが「ダイラムゥーン!」と叫んだところ、みんなが笑いながらそれに唱和したという次第である。
なんともたわいのない話とはいえ、ラーと仲違いしていた近所のウーポーまでがニコニコしながらわが家に顔を出したくらいだから、そのレクレーション効果は大と言わざるを得ないだろう。
*
そこへ、当のスージャが顔を出した。
「サバイ、サバーイ(ああ、気分がいい)!」
なんとも、さっぱりとした顔つきである。
言い寄る男にさんざん貢がせたあげく足蹴にしたのだから、さぞやいい気分に違いあるまい。
そこへ、ラーが突っ込みを入れる。
「あんた、昨日男を追い出すどさくさに紛れて、“お前はラーと結婚しろ、あたしはクンターと結婚するから”って叫んでたけど、覚えてる?」
「そんなの嘘だよ。あたし、そんなこと言ってないよ」
「いいや、あたしも確かに聞いたよ」
「うん、俺も聞いた」
いつの間にか台所に集まっていた親戚連中が、ニヤニヤしながら迫る。
「クンター、タマダー(冗談だよ)。酔っ払っての話だから、勘弁してよ」
記憶が少しずつよみがえってきたらしく、照れた顔で詫びを入れる。
仕方がない。
タマダーには、タマダーでお返ししよう。
「スージャ、ダイラムゥーン(とっとと出て行け)!」
そこで、大爆笑になった。
*
「ダイラムゥーン、ダイラムゥーン♪」
ラーが、おどけて踊り出す。
昨夜も不安に襲われたのだろう、絶え間ない独り言でわれわれを眠らせてくれなかった母親までが、「ダイラムゥーン♪」と節をつけて歌い出した。
*写真は、裏庭で切り落としたバナナの房。心なしか、バナナまでが浮かれて踊っているような朝であった。
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夜間見廻組長官ともあろうお方が、左様なお戯れを。むふ、むふふふ・・・。