【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【ピーデンの恋歌】

2010年02月08日 | オムコイ便り
 
 昨日の夕刻。ガトゥーイ(おかまちゃん)のピーデンが、クッティアオを食べにやってきた。

 彼の仕事は、カノム(タイ菓子)の製造と巡回販売。

 主婦が買い物かごを右腕に引っかけるように、菓子を詰めた竹かごを右腕にかけて、「クンター、お菓子はどう?」と少し首を傾けながら問いかける姿は、なかなかに艶っぽい。

 見かけは、小太りのおっさんなのだが、心は恥ずかしがり屋の乙女なのである。

 彼は隣家のプーノイの甥にあたり、ラーとは幼馴染みだ。

 ラーは、低くしゃがれた大声。

 一方のピーデンは、波打つような鼻にかかったソプラノ。

 裏庭で彼が作った“かぼちゃの揚げ菓子”を食べながら、ふたりのにぎやかなしゃべり声を聞いていると、どっちが男だか分からない。

「俺もこんなに優しい喋り方をする女房が欲しいなあ」

 ついつい、危険(?)な思いにもとらわれてしまう。

        *

「ねえねえ、クンター。ピーデンと一緒に魚穫りに行ってもいい?」

 昨日も書いたように、ラーは風邪気味である。

 手負いの山ヤギを追いかけに行くという話を却下して店を開けさせたあとは、一日中頭痛を訴えていた。

「頭が痛かったんじゃないのか?」

「うん、まだ少し痛いけど、川に行けばよくなると思う。今日は日曜日だから、夕方は絶対にお客さんが来ないから。ね、ね、明日また頑張るからお願い!」

「・・・」

 時間的にはちょうど客足が途切れたところで、とりわけ日曜日の夕方はほとんど客が来ないのは事実である。

「風邪がひどくなって、明日店を閉めるようなことになったら、俺はもう本当に店を畳んじまうからな」

「分かってるよ。川に行って、絶対に風邪を治してみせるから」

       *

 戻ってきたのは、すっかり暗くなってからである。

 鼻をふくらませながら突き出した魚籠をのぞくと、大漁だ。

「明日、スープにしてあげるからね」

「それよか、風邪は大丈夫か?」

「うん、すっかり治った!」

 確かに、さっきまでのような鼻声ではなくなっている。

 一方、ピーデンの魚籠は空っぽだ。

「まったく男のくせに、歌ばっかり歌って魚穫りはからっきしなんだから!」

「心は男じゃないんだから仕方ないだろう。ピーデンはきれいな声をしているから、川で聞けばまた格別だろうな」

 その言葉をラーが通訳すると、寒さよけの焼酎でほろ酔いになったピーデンが、さっそく恋歌を歌い始める。

 顔をかすかに横に振りながら、私の方をじっと見つめるのでドギマギしてしまう。

「あらら、ピーデンはクンターが好きみたいだよ。2番目の奥さんにしたら?」

「バ、バカたれ!」

 そこで、ラーが大きなくしゃみをする。

「こら!風邪、治ってないじゃないか」

「うーん、明日また川に行けば、すっかりよくなると思うんだけどな」

「あのなあ・・・」

 ニコニコしながらそのやりとりを見守っていたピーデンが、ふと遠い目をして呟く。

「あたしも、素敵な旦那さんが欲しい」

「・・・」

 今日の写真は、コメントをお寄せくださった“案山子”さんのリクエストにお応えして、わが麺屋のクッティアオ特盛りである。

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1 コメント

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Unknown (案山子。)
2010-02-08 23:20:12
うわ~うまそう~。
さっそくの写真ありがとうございます。
これが噂のクッティアオですか。
スープは透明で淡白なものを想像していましたが、見た感じでは日本の醤油ラーメンのスープのようにもみえますね。コメントを書いているだけでよだれがでてきています。実は私はタイ料理には目がないのです。これからも料理の写真をちょくちょくお願いします。
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