元気、雄太に続く3番目の飼い犬「一応、純」が忽然と姿を消した。
3日前のことだ。
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10日ほど前から、なんとなく具合が悪い様子だった。
皮膚に炎症が出て、町の獣医からもらった薬を注射した。
薬が合わなかったのか、注射の仕方が悪かったのか、さらに元気がなくなった。
4日前にキノコ採りに出かけたとき、途中までは着いてきたのだが、川沿いの道端でしゃがみこんでしまった。
やむなく、そのままにして山に入ったのだが、家に戻るとちゃんと待っていた。
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次の朝は着いてくる様子もなく、これは獣医に診せるしかないなと思いつつ家に戻ってみると、どこにも姿が見えないのだった。
川沿いの道や近所を探しまわってみたが、見つからない。
姿を見かけた人もいない。
それから、丸々3日になる。
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考えられるのは、我々の後追いをして山に入り込んだかもしれないということなのだが、4日前の姿を思い出すと、とてもその元気はなかったろう。
途中で力尽きたとしても、連日山に入っている我々の目に留まったはずだ。
女将のラーによれば、3日前の山道で哀しそうな犬の鳴き声を聞いたというのだが、私には聞こえなかった。
そうであるなら、すぐに私に話したはずだし、大騒ぎになってなんとか見つけることができたに違いない。
おそらく、「山に入り込んで迷った」という思い込みが空耳につながったのではあるまいか。
うーん、一体どこへ行ってしまったのだろう。
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まだ完全に諦め切っていないラーは、外に出るたびに純の名前を呼んでおり、しばしば涙を流す。
特に、増水の川で魚獲りをしたとき、泳ぎ寄ってきた純がカレンバッグの口に両手を突っ込んで休んでいた姿が忘れられないという。
かつて、失踪した犬が時間をおいてひょっこり戻ってきたという話を何度か聞いたことがある。
そんな話をして慰めてはみるものの、あの道端でしゃがみ込んだ姿からすると、それも期待できそうにない。
今の番頭さんにできることは、名前から「一応」を削除してやることぐらいだろうか。
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残念ながら、まだ戻ってきません。