【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【村の正しいソンクラーン】

2014年04月04日 | オムコイ便り

 4月に入って、山奥のわが村もかなり暑くなってきた。

 気温は明け方でも20℃に近く、日中には35℃前後になる。

 冬季の異様な冷え込みが、まるで嘘のようだ。

 その反動なのか、今年は例年になく暑く感じられる。

     *

 さて、4月といえば間もなくソンクラーン(タイ伝統正月)だ。

 わが宿にも、中旬の水掛け祭りを目当てにチェンマイにやってきて、その前後にオムコイを訪ねたいという人があり、気楽に外出もできない水掛け合戦を嫌ってオムコイでソンクラーンを過ごしたいという人もある。

「オムコイのソンクラーンはどんな様子か?」という問い合わせも多い。

 そこで今日は、去年のソンクラーンの様子を書いた1年前の記事や、チェンマイ発の北タイ情報紙『CHAO(ちゃ~お)』(先月25日号)に掲載したコラムをベースに、わが村におけるソンクラーンの模様を紹介しよう。

 長年のブログ読者や『CHAO』読者にとっては同様な内容になってしまうが、最近は「チェンマイの宿」といったキーワードで当ブログに触れる新たな読者も増えてきたので、どうか大目に見ていただきたい。
 
     *

 チェンマイを訪れる観光客の多くは、テレビなどで見る水掛祭り、というよりも無茶苦茶な「水ぶっかけ合戦」をソンクラーンと思い込んでいるようだ。

 しかし、元々は仏教に根ざした仏像洗いに起源を発しており、それが正月の挨拶行事として人々の間にも定着したのだという。

 むろん、村でも水掛けをやらないわけではない。

 ソンクラーン1週間前ともなると、道沿いでバケツやホース、最近では水鉄砲などを持った子供たちが、クルマやバイクを待ち構えている。

 だが、それはあくまで遠慮勝ちで、バイクの速度を緩めてやると肩や胸や背中に水をかける程度だ。駄目と言えば、素直に従う。

 いきなり顔面にぶっかけるなんぞ絶対にしないし、そんなことをしたらわが嫁ラーのごとき怖いおばさんにバイクで突っ込まれる羽目になる。

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 年が明けると、わが家では、まず家族で「髪洗い」の儀式を行う。

 使うのは、沸騰させたお湯にウコンと豆状の木の実を入れた聖水だ(寺の仏像を洗った水を回収して使うこともある)。

 一番手は私で、上半身裸になって首を突き出すと、嫁が奇妙な節をつけたカレン語で何やら祈祷の言葉を唱えつつ減衰する一方の私の白髪頭を洗う。

 次に、自分自身で少し白髪が混じってきた長い黒髪を。

 最後は、息子たち。こうして過去一年間の苦難、不幸、争いごとなどをすべて洗い流し、心身を浄めて新たな年を迎えるのである。

 次に、竹籠に贈り物を詰めて母親や叔父、叔母、近隣の古老などを訪問する。

 聖水で彼らの髪や手を洗い、そのあとで糸巻きの儀式を行ってもらうのだ。

 去年は折りよく日本からのゲスト夫妻が滞在しており、この髪洗いと古老訪問を体験してもらった。

 彼らは、すでに何度もチェンマイを訪れているのだが、こうした伝統に根ざしたソンクラーン行事を体験するのは初めてのことだととても喜んでくれた。

 そして、嬉しいことに今年も友人連れでの再訪を約束してくれている。

      *
  
 だが、こうした昔ながらの風習も最近では年々薄れているらしい。

 そこで、去年からオボートー(地区行政執行事務所)が音頭をとってこの古老表敬儀式を村全体で行うようになった。

 テント張りの下の椅子にずらりと並んだ古老たちに、聖水を手にした村人たちが右回りで順繰りに挨拶を行ってゆく。

 水掛けは、手の平だけである。





 これが終わると、村の衆が手に手に白い木綿糸を持ち、目当ての古老に糸巻きをしてもらう。



 私もすでに「古老」の部類に入ってもおかしくないのだが、誰も椅子に座れと言わないので、若い衆に混じって水掛け巡りを行い、少しばかり年上の元村長と統括村長に糸巻きをしてもらった。

 あとは、村人同士での水掛けになるのだが、これも事前に「新年おめでとう」と声をかけ合い、肩口に少しだけ水を垂らすという上品なものである。

      *

 昼飯どきになると、ビールや焼酎がふるまわれる。

 料理は、村の衆の手作りだ。

 酔いが回ると、若い男衆が太鼓や銅鑼や鉦を鳴らし始めた。

 すると、そのリズムに乗って古老たちが伝統の踊りを舞い始める。

 両手に竹の棒を持てば、それは剣の舞いだ(昔は真剣を使っていたという)。



 80歳に近い古老たちの動きは、驚くほどに激しい。

 角笛とみまがうほどに立派な竹笛の音が、ビョウビョウと響き渡る。

 吹いているのも、70代の古老。



 私も試してみたが、スースーという情けない音しか出ない。

 踊りを真似ると、数秒で息があがった。

 終わってみれば、またまた飲み過ぎである。

 だが、これがわが村における本来のソンクラーンの姿だと学ぶことのできる、とてもいい伝統行事だった。

       *

 さて、今年はどんなソンクラーンになるのだろうか。

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4 コメント

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始めまして! (武蔵)
2014-04-07 20:25:18
ゲスト夫妻と一緒にお邪魔する65歳の友人(老人?)です。
勿論始めてのソボムヘッド村です。
不安と期待が交錯してますが、よろしくです。

返信する
お待ちしています! (クンター)
2014-04-08 10:01:15
武蔵さん

 コメント、ありがとうございます。「不安」については、ぷよよさんからあれこれ聞かれているのだろうと思いますが、私も無事にソンクラーンが乗り切れるのかどうか、実に不安です(笑)。では、お会いできることを楽しみに!
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Unknown (ふよよ)
2014-04-11 18:48:12
クンター・ラー
こんにちは。

先程、武蔵さんが無事にチェックインされました。

私共とは、ちょっと違い渋い紳士です。
俄には、同行者とは思えないでしょう(笑)

明後日と迫った再会。
とても楽しみにしております。
返信する
サバイバル体験? (クンター)
2014-04-12 15:18:28
ぷよよさん

 こんにちは。お二人は先にチェンマイに入られたようですね。ここ数日来、わが村は水枯れでゲストの水浴びは川や滝で。おまけに市場への食糧入荷日とソンクラーン休みが重なったため、ゲスト自ら川魚やカエルを獲って生き延びてもらっていま(半分本当です)。
 今年も、紳士、淑女ご一行にふさわしい過酷で愉快なサバイバル体験が楽しんでいただけることでしょう。では、楽しみにお待ちしています。
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