町の焼酎屋の爺さんが亡くなった。
時ならぬ冷雨が降った数日前のことらしい。
以前、わが家でもここから焼酎を卸して小売りをしていたこともあり、村のものよりも純度が高いということで、しばしば訪れていた。
焼酎をお土産にしたいというゲストを数人案内したこともあるし、昨年ロイクラトン(灯籠流し)の折りに訪れたガリアンさんを雨宿りに同行して、タダ酒を振る舞われたこともある。
買い物をしてもニコリともしない愛想のなさだったが、少女の頃から女将のラーを可愛がってくれたのだという。
また、近隣で病人などが出ると夫婦して見舞ってはあれこれと援助もしていたのだそうな。
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ここ数年はすっかり痩せ衰えて、入退院を繰り返していた様子だったが、1週間ほど前に顔を合わせたときには、店の前の日だまりの安楽椅子に横たわって、それでもしっかりと店番とお金の管理をしていたものだ。
その時に買ったのは煙草だったのだが、彼からの最後の買い物が焼酎でなかったことにはやや心が残る。
だって、一代で町唯一の焼酎屋を築き上げた人だったのだからなあ。
野辺送りの日は、あいにくの曇天。
肌寒い日だったのだが、爺さん、あの無愛想な顔で下界を見下ろしつつクイッと焼酎をひっかけては温もっていたのではあるまいか。
なんか、寂しくなるなあ。
合掌。
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