今朝は朝靄もなく、雲一つない秋空が広がった。
絶好の稲刈り日和だ。
1週間ほど前から村のあちこちで稲刈りが始まり、バイクで応援を頼みに走り回る者、雑貨屋で大量の飲料水を買い込む者、ピックアップトラックで村の衆を田んぼに運ぶ者・・・と、早朝から村中が沸き立つように賑やかだ。
普段はぐうたら者の次男も、従兄に叩き起こされて飯も食べずに飛び出していった。
わが家は田んぼを持たないから、手伝いに行くと収穫後の新米がもらえるのだ。
しっかり、稼げよお!
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あいにく、女将のラーは体調不良、番頭さんもあれこれと忙しく、なかなか稲刈りの様子を写真に撮ることができない。
まあ、下手に田んぼに出かけるとついつい手伝いたくなるから、このところ調子のいい腰を痛めないためにも、ラーが元気になるまでは知らんぷりをしておくことにしよう。
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それにしても、いい天気だ。
明け方の気温は、18℃。
日陰では山風が吹いて、半袖では肌寒いくらいなのだが、日なたに出るとぽかぽかと温かい。
鶏ですら日だまりでくつろぐほどの、気持ちのいい朝である。
空を仰ぐと、マカーム(タマリンド)の大樹に茶色の実がびっしりと付いている。
この季節になると、いつもマカームの実の曲がり具合が気にかかる。
村には「マカームの実が丸まるほど冬場は寒くなる」という言い伝えがあるからだ。
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「どれどれ、今年の冬場はどうなるのだろう」
樹下に立って鈴なりになった実をしげしげと眺めてみる。
うーん、あんまり丸まっているヤツはないようだなあ。
まあ、視力と脳力がとみに衰えつつある番頭さんの見立てなどは、まったく当てにならないのだけれど、期待も込めて「今年の冬はさほど冷え込むことはないだろう」という予想を立てておくことにしよう。
おっと、こんなことをしている場合ではない。
慌てて母屋に取って返したが、あれ、一体何をしようとしていたのだろう?
私は誰?
ここはどこ?
そこへ、ラーの大声が飛んで来た。
「クンター、ご飯だよお!」
あ、そうか。
まだ、朝飯を食っていなかったんだ。
やれやれ。
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