【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【タイ猛女の遺伝子】

2011年01月24日 | オムコイ便り

 “牛飼い小僧”ご一行と入れ替わるように、ハンドーンの家具製作所で働く甥っ子(義兄の長男)家族が久しぶりに里帰りしてきた。

 彼は2年前、立て続けに父母を亡くしたので、村に戻ると真っ先にわが家にやってくる。

 今度は、1歳になる孫娘が一緒である。

 おいおい、またウチのクンヤーイ(婆様)に「赤ちゃんが欲しいなあ」と言わせるつもりかい?

     *

 さっそくラープ(豚肉血まぶし叩き)を作ると、甥っ子も女房も手をつけようとしない。

「せっかく作ったのに、どうして食べないの?」

「・・・うん、最近はどうも、生ラープはね」

 どうやら、町暮らしが長くなって、胃袋の方も軟弱化してきたらしい。

「あんたら、それでもカレン族なの?まったく、だらしがないね。それじゃあ、クンターと一緒じゃない」

 こらこら、どさくさに紛れて何を言い出すんだ。

 それでも、炒めたラープに極辛のナームピッ(唐辛子味噌)をまぶして、ワシワシと平らげた。

 辛さへの耐性だけは、衰えていないようだ。

    *

 ふと見ると、甥っ子の額の脇に大きな傷跡がある。

「それ、どうしたんだ?」

「女房に蛮刀でやられました」

 苦笑しながら語り出すには、夫婦の相乗りでバイク事故を起こし、女房の方が数日入院することになった。

 ところが、折りよく給料を手にしたこいつは、嫁の見舞いにも行かず、これ幸いと女遊びに走ってしまった。

 そこで、退院してきた嫁が怒り狂って、蛮刀の背でガツーン!

 血まみれになって、泣きながら土下座して謝ったのだという。

 まったく、浮気症タイ男と激情型タイ女の典型のような夫婦である。

      *

 彼の被害はこれだけにとどまらず、葬式の賭けゲームで大金をすって鼻にパンチを喰らう、朝帰りして寝込んだところを薪でなぐられ右目に青タンをつくる・・・散々な戦歴なのである。

「あんた、子供のころにあんだけ面倒見てやったのに、本当に情けないねえ。なんなら、ムエタイで鍛え直そうか」

 ラーが呆れて茶々を入れるが、酔って華々しき戦歴を披露する彼は、むしろ楽しそうである。

「クンター、ひどいでしょう?本当に凄い女房なんだから」

「そうだなあ、ラーよりも凄い」

 とは、言えない。
 言葉を濁していると、

「あんた、クンターにそんなこと言い付けてるけど、あんたがだらしないからこうなるんでしょ?」

 女房が、バシッと物凄い勢いで彼の肩を叩いた。

 彼は、へらへら笑っているだけだ。

 情けない。

 実に情けないが、これがタイ式の夫婦和合術なのかもしれない。

 これができるから、たとえ何度悪さをしても、彼の局所はまだ切り取られずに済んでいるのだろう(タイでは、よくこの手の事件が起きる)。

      *

 そこへ、よちよち歩きの娘が弱いポー(父ちゃん)をかばうように膝の上に乗った。

 とにもかくにも、この子が“かすがい”か。

 そう思っているところに、飼い犬の雄太が娘に尻尾を振りながら近づいていく。

 すると、この娘、すっくと立ち上がってよだれ拭きのタオルでパシッと雄太の顔を叩いた。

 おいおいおい。

 1歳にして、この勢いか。

 猛女の遺伝子は、確実に次世代に受け継がれたようである。

 わが“牛飼い小僧”よ、たとえ猛烈なタイ熱に感染したとしても、この娘にだけは近づくなあ。

*正午の気温23℃。絶好の米干し日和である。

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