3月に入って、日中の気温がぐんぐん上がってきた。
このところの最高気温は、32℃。
カレン織り見物のあと、ゲストのナミさんと出かけた自然散策のしょっぱなでは、水量の減った川を砂嚢で塞き止めた淀みで、村の子供たちが水遊びを楽しんでいるところだった。
村外れの滝も、きっと滝壷へのジャンプを楽しむ若い者でいっぱいだろう。
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すでに山焼きが始まっており、川向こうの高台の棚田に出ると山際や上空までがうっすらと煙っている。
抜けるような青空や綿菓子のような雲が見えないのは残念だが、フィルターを通したような淡い夕陽を浴びながら、水牛の群れがのんびりと草を食んでいる。
ガイドに立った仔犬の「龍(りゅう)」が、遠巻きにしてそのまわりを怖々とうろついている。
力関係は、まだまだ水牛たちの方が圧倒的に優位に立っている様子だ。
脇に建つ作業小屋に近寄ってみると、作業用のカレン服が高床の床下にびっしりと干してある。
すかさず目を留めたナミさん、嘆声を発しながら撮影に余念がない。
日本に戻ってから、この体験が彼女のニット織りにどんな風に取り入れられていくのか。
想像するだけでも、楽しみである。
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戻りは、別の集落を抜けて村の入り口に出るコースをたどる。
山口の田舎で生まれ育ったというナミさん、鈴なりになったグミの実を見つけると、さっそく口に放り込んだ。
子供の頃に甘いグミを食べた記憶のある番頭さん、「この村のグミはえぐいでしょ?」
そう声をかけると、「いや、実家のまわりで食べたグミはこんな味でしたよ。ああ、おいしい」
やっぱり、田舎生まれはたくましいのであった。
最近目につくのは、一見ポインセチアに似た赤い花である。
これをみると、ほとんどのゲストが足を止めて見入る。
無粋な番頭さん、名前も分からないが、日本に出荷すればたぶん、高値で’売れるのだろうなあ。
なんぞと、さらに無粋なことを考えるのであった。
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晩飯のおかずは、辛いもの大好きという彼女のためにナムプリック・ガピッ(えびペーストの唐辛子ディップ)を供した。
昨日も書いたが家族ぐるみのタイ好きで、実家ではお父さんがパクチーやマンゴーなどを植えているそうなのである。
酒も強く、相当に強い村の薬草入り焼酎を飲んでも「ああ、おいしい」
各種の野菜を浸して食すナムプリックも、覚えたてのカレン語で「オイテテ」を連発してくれたが、数分経ってから辛みがガンと来たようである。
「ああ、鼻水が出てきました」
それでも、焼酎をぐいぐいやりつつ、じっくりと腰を据えて、初めての味を楽しんでくれた様子。
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あいにく、山焼きの煙のせいで星空もうっすらと曇っている。
「冬場はびっくりするくらいに綺麗なんですけどね」
番頭さんが言い訳をすると、庭に出たナミさん、「え、これでよく見えないんですか。
わあ、きれいだあ」
言いながら、夜空を仰ぎ続けた。
日程の都合で、翌朝にはチェンマイに戻る強行スケジュールになったものの、カレン織りも含めてあれこれと村の暮らしを楽しんでもらえたことに、番頭さんも心地よい酔いに包まれたのだった。
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