【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【気分は「だらねこ」】

2011年12月09日 | オムコイ便り

 朝、店の前を掃除していると、村の衆がぞろぞろとこちらへ向かってやってくる。

「おお、今日は朝からすごい客だぞ!」

 と思いきや、みんなすげなく素通りだ。

 あらら。

「今日はメーヨムの雑貨屋が閉まっているのに、みんな、どこへ行くんだろう?」

 そこへ、オボートー(地区行政事務所)の職員がバイクを乗り付け、

「これから毛布の支給があるから、忘れないでね」

 2枚の引換券を手渡した。

 ラーの母親分も含めて、2枚ということらしい。

      *

 防寒毛布の支給については、以前にも書いた。

 今年は例年よりも寒さが厳しく、先月から山奥の村での支給が始まったのだが、予算が足りないという噂を耳にしていた。

 そこで、今年はわが村は見送りだと思っていたのだが、なんとかお鉢が回ってきたらしい。

 しばらくすると、今度はビニール袋入りの毛布を手にした人々が、またぞろぞろと店前を通り過ぎて行く。

「クッティアオ、クッティアオ、アロイ、アロイ!」

 ラーがしきりに声をかけるが、誰も立ち止まらない。

 まあ、毛布も自前ではなかなか買えないくらいなのだから、気軽に外食できないのも仕方がない。

 こんな貧村で店を出さざるを得ない自らの不運と商才の無さを、嘆くしかあるまい。

      *

 仕込みを終えたラーが、引換券を手に店を飛び出して行き、すぐに戻ってきた。

 手にしているのは、2枚の薄い掛け布団である。





「なんだ、毛布じゃないのか?」

「うん、今年は掛け布団だって。でも、いつものペラペラの毛布よりもこっちの方が暖かいよ」

 去年は確か、子供用の防寒服もあったはずだが、今年はやはり予算不足なのだろうか。

 一枚は、ピンク色の花柄。

 一枚は、子供が描いたような猫の柄入り。

 その猫柄の間に、妙な文字が入っている。





 よく見ると、「だらねこ」というバランスの悪い平仮名だ。

 はは~ん、日本製を気取るつもりが、「どらねこ」と間違えて猫脚、もとい馬脚を現したな。

 いや、待てよ。

 ひょっとしたら、今の日本では「だらけた猫=だらねこ」という新キャラクターが流行っているのかも知れないなあ。

 うーむ。

 一応腕組みはしてみたものの、これを本格的に調べるほど私も暇ではない。

      *

 昼過ぎになって、ようやく客がぽつぽつとやって来た。

 その中のひとりが言う。

「いま、オボートーで防寒服を配っているよ」

「え?朝は掛け布団だけだったよ」

「あとから、トラックが着いたらしい」

「引換券は?」

「ないから、早いもの勝ち」

 ラーが、脱兎のごとく飛び出した。

      *

 それにしても、なんといういい加減な配布の仕方なんだろう。

 そういえば、今朝は例年のような有線放送もなかったっけ。

 そして、ラーが次に持ち帰ってきたのは、なぜか朝と同じような掛け布団だった。

 なんだか、訳が分からん。

 4年経っても、相変わらずミステリアスな村ではある。

 気分は、「だらねこ」。

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2 コメント

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はじめまして (geko)
2011-12-10 07:27:28
はじめまして!!
いつも楽しく拝読しています。
一昨年からからの読者でランキングはかならずポチしてましたがなかなかコメントを残す勇気がありませんでした。

肝っ玉母さん、ラーさんの大ファンです。
一度お会いしたいな~を思っています。

書かれた本の出版も楽しみにしています。
返信する
咬みませんので (クンター)
2011-12-11 09:36:17
gekoさん

 初めまして。ご愛読、ありがとうございます。蛇料理好きのラーと違って私は咬んだりしませんので(笑)、今後もどうかお気軽にコメントをお寄せください。
返信する

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