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いやあ、昨日は忙しかった。
イミグレや銀行での手続きを初め、パソコンの修理、通信モデムの点検と使用期間延長、デジカメのバッテリー探し、ラーの鼻アレルギー治療と、コマネズミのようにチェンマイ市内を駆け巡った。
すべての用事が済んだのは、午後8時過ぎである。
ひと息ついて、ネットでNHKの報道番組を眺めていると、8時半前に東京のスタジオが揺れ始め「静岡で震度6強」という速報が流れた。
いやはや、まったくとんでもない事態である。
酒を飲む気にもなれない。
雨音を聞きながら早々と薄い毛布にくるまったが、なかなか寝つけるものではない。
*
さ、寒い。
震えながら目覚めると、壊れて閉まらない宿の窓から冷たい風がビュービュー吹き込んでいる。
明け方4時。
外は、激しい雨だ。
冬季のオムコイならまだしも、ここは乾暑季のチェンマイである。
有り合わせのTシャツや薄い長袖を4枚重ね、毛布を2枚重ねてラーを湯たんぽ代わりにしたが、それでも鼻水がとまらない。
6時まで我慢して、熱い豆乳を買いに走った。
やい、ノッケウ!
おかげで、完全な寝不足だぞお。
*
市場で買い物を済ませ、8時前に出発準備が整った。
ところが、オムコイへの同行を強く望んでいたWさんが、「急な都合で後日に変更したい」と言い出した。
そのままクルマを出そうとすると、彼にオムコイ行きの話を聞いて興味を持ったというMさんが大荷物を抱えて乗り込んで来た。
むろん、事前に「一緒に行ってもいいか」という打診は受けていたのだが、それはすでに氏素性を語り合ったWさんと込みの話であって、私はまだ彼女の名前すら知らないし、話もほとんど交わしていないのである。
訊けば、このブログも読んでいないという。
そんな免疫ゼロの人を、あんな山の中の、まわりにはなんにもないあんな寂しい宿なんぞに、ひとり放り込んでいいものかどうか。
私がオムコイで人身売買ビジネスでも手がけていたら、一体どうするというのだろう。
“マイペンライ”を旨とする繊細なオムコイ人にとっては、まったく理解を超えた日本人の奇妙な生態なのだが、すでに荷物を抱えて乗り込んだ人を蹴り出すわけにもいかない。
仕方がないから、「看護婦の腕を生かして、人手不足のオムコイ病院に骨を埋める」という血判状をもらい受けることに決めた。
*
ホートを過ぎても、オムコイに近づいても、雨は降り止まない。
気温が、ぐんぐん冷え込んでくる。
フロントガラスが曇るので窓をあけると、震えがくるほどに寒い。
「まるで、日本の冬みたいですね。東北の被災地もこんなに寒いんでしょうか」
Mさんが呟いた。
宿に着いて、オーナーのゴンから振る舞われた“ウエルカム焼酎”を飲み干すと、彼女はさっそく靴下を履くために部屋に駆け込んだ。
家に戻ると、気温は15℃。
村では、すでに5日間も冷たい雨が降り続いているのだという。
それでも、蘭の花々は健気にも咲き誇って、われわれを優しく出迎えてくれた。
それにしても、さ、寒い。
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まずいことに、今日も蘭の写真を載せてしまいました(笑)。