【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【“犬殺し”摘発犬】

2011年01月06日 | オムコイ便り

 無駄吠えをしないはずのわが家の飼い犬が、このところどうもうるさい。

 とりわけ、雄の雄太が隣家に出入りする人にやたらと吠えかかるようになった。

 これに、雌の元気や甥っ子ジョーの飼い犬ワイとベッが同調するから、やかましくて仕方がない。

 一番の標的は隣家の次男チョッピーで、彼が家を出入りするたびに猛然と吠えかかるのである。

     *

 原因は、犬殺しであるらしい。

 ラーの話によれば、私がビエンチャンに行っている間に、チョッピーが野良犬を殺して犬鍋を作ったのだという。

 その様子を雄太が目にして、それ以来チョッピーを敵視するようになった。

 いや、その吠え方を見ていると、むしろ怖れるようになったと言うべきか。

 私自身はまだ相伴に預かったことはないが、村の衆は時おり犬を食べる。

 とりわけ、肝臓は薬効が高いと珍重されているようだ。

 だから、チョッピーには罪はないのだが、その現場を目撃した雄太にとっては、恐慌をきたすような大事件だったのだろう。

     *

 しかし、チョッピーだけならまだしも、隣家に出入りする人にまで吠えかかるようになったのは一体どういうわけだろう。

「それはね、チョッピーと同じ匂いがするからだよ」

「ん、どういうことだ?」

「彼らはチョッピーと一緒に犬を食べた人たちで、たぶん阿片もやっているんだと思う。だから、雄太は彼らをチョッピーと同じように怖れて警戒しているんじゃないかな」

「ふーん、そういうことか」

 今朝、朝飯を喰いながらそんな話をしていると、雄太が囲炉裏の外に向かって猛然と吠え出した。

 案の定、チョッピーが顔を出したのである。

 ちょうどいい機会なので、両者の「手打ち式」を行うことにした。

 雄太をチョッピーのそばに座らせ、彼の匂いを存分に嗅がせる。

 そして、「こいつは他の犬は喰うけど、お前さんのことは絶対に喰わないから安心しなさい」と言い聞かせた。

 しばらくはおとなしく匂いを嗅いでいた雄太が、プイと顔を背けるようにして後すざりし、また怯えたような吠え声をあげはじめた。

 手打ち、ならず。

 かくなる上は、「犬殺しおよび阿片摘発犬」としての道を歩ませるべきなのだろうか。

    *

 もうひとつ、頭の痛い問題がある。

 このところ寝入りばなになると、わが家の飼い犬はもとより村中の犬たちが、ある方向に向かって一斉に吠え立てるのである。

 その吠え方が尋常ではなく、まるで何かに怯え、狂ったように。

 ある方向とは、何を隠そう、先日自殺を遂げたニコダンの家の方なのである。

 家の前をチョッピーやその連れが歩いているのかと思いきや、誰の姿も見えない。

 これは、一体どうしたことなのだろう。

「それはね、彼のピー(霊)が成仏しきれずに家に戻ってきているからなんだよ。ああ、恐いなあ」

 ラーは、真顔で両腕をかかえる。

 村の人たちも、そう信じているらしい。

 まあ、日本人の感覚からすれば、午後10時というのは少し早過ぎる時間帯のような気もするが、犬たちの様子からすれば、それもあり得ないことではなさそうだ。

 チョッピーに対する雄太の反応からも分かるように、犬も決して莫迦にできないのである。

 ニコダンよ、未練な気持ちはよく分かるが、そろそろ彼岸に腰を据えてくれんかなあ。

*写真は、犬殺しの現場となった隣家である。朝餉の炊煙までが怪しい、わきゃないか。

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8 コメント

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Unknown (とらねこ)
2011-01-06 14:39:55
明けましておめでとうございます。この話には、私は敏感に反応しました。今は、東京の高層マンションに住む都会人ですが、子供の頃(50年前)は田舎の山の中で育ち、犬を野生動物のごとく訓練、飼育していたので、都会の犬と違って狼のような強い本能を持っていた事を思い出しました。この位の能力は当たり前に持っていると思います。懐かしいです。自然を感じさせて頂いて有難うございました。(ちなみに紀州犬という猟犬です)
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Unknown (ishi)
2011-01-06 16:30:18
お隣さんに吠えるのはわかる気がしますね.たぶんイヌが吠えると人間も一緒に吠えてしまっているでしょうから(うるさい,静かにしろ,など),ますます止まらなくなるのだと思います.
さて,ピーに向かってイヌが吠えるのか?イヌにとって,人の霊魂?が恐怖の対象になるのか(映画などではよく見る光景ですね)?興味深いですねぇ.
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ピーちゃう (しんちゃん)
2011-01-06 21:01:08
ニコダンなら去年の、元気が焚き火の傍で寝ている写真の隣りに居たぞ。バイバイって言ってたぞ。でも、今日見たらもう居ないから違うぞ。何も今日の写真からは見えんな。ワッハハ
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Unknown (なかちゃん)
2011-01-07 08:06:48
クンター様

イサーンの方では犬を食す風習があるとこないだタイのテレビ(インターネット)でやってました。
タイで買えない物は無いと言われてますが同時にタイ人に食べられない物は無いと僕は思っております。(あくまで私感です)
...で、さっそくお店の女の子達(タイ人)に『犬食べるの?』と聞いたところ『他の人達は食べるけど私は絶~っ対食べれな~い』という返答。
...たぶん、食べますね。

昔付き合っていた彼女に会いにタイに行った時、空港で待っていた彼女が手にしていた物。それは日本にいた頃『信じらんな~い』と言って食べなかったビニール袋いっぱいのメンダー(タガメ)でしたからね...。

う~ん、タイ人恐るべし...。

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Unknown (monta)
2011-01-07 15:12:32
私の友人は台湾に住んでいますが時たま中国へ遊びに行きます、食堂のメニューに”香肉”と書いてあるのが犬肉だそうで、食べるととても美味しいと言っていました。
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犬! (クンター)
2011-01-08 13:09:45
とらねこさん

 新年、おめでとうございます。その「野生動物のごとく訓練・飼育」されていた紀州犬が、どのような能力を発揮したのか、非常に興味をそそられています。
  
   *

ishiさん

 そうか、あれは犬と人間の吠え合いでもあるんですね(笑)。怒ったチョッピーがパチンコで雄太を追い払ってから、ますます「犬猿の仲」になっているような。ピーについては、この村でならあり得る、ということにしておきましょうか。

     *

しんちゃん

 え、ニコダン、ウチの庭にもいたんですか?
 道理で、焼酎の減りが早いと思いました。

      *

なかちゃん

 ウチの嫁は「犬の肝臓は薬だから、体にとってもいい薬だから、体がとっても温まるんだから」と聞きもしないのに、しきりに強調しております。どうしてでしょうねえ? 


      *

montaさん

 初めまして。“香肉”というのは、素敵なネーミングですねえ。私もかつて中国には何度も行きましたが、そのメニューは見落としていたようです。

 

 


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ピー様々 (しんちゃん)
2011-01-08 22:43:10
優しいのも、恐いのも、獰猛なのも、遊び好きなのも、スケベも、いろんなのが到る所に居るな。話題にしてたり興味を持ってるとついて来るな。変なのが憑くと厄介だな。居そうな所では話さんことだな。まぁ、バンコクにはもう居ないぞ。都会は人間が怪物になるぞ。オラ、アクション仮面とお友達だから大丈夫だぞ、ワッハハ。
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スケベピー (クンター)
2011-01-09 12:30:07
しんちゃん

 犬の心理が読める上に、霊視能力もあるんですかあ?
 一度、スケベなピー様にお会いしてみたいものです。
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