【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【狩猟採取民族の本能】

2011年09月25日 | オムコイ便り

 4~5月に続いて、チュイ(カブトムシ)の季節がやってきたようだ。

 子供たちは、日本と同様の色形をしたそれを獲ってきて、軒先に吊るしたサトウキビを餌場にする。

 そして、細い棒で首の付け根のあたりをこすって「闘虫」に向けた調教に臨むのである。

     *

 だが、ラーにとってのチュイは貴重な食糧である。

 以前にも紹介したことがあるが、主に食すのは写真の5本角だ。

 見た目はいかめしいが、角の形状があまりにも複雑なために、闘いにはあまり向いていないらしい。

 調理法は、いたって簡単。

 兜と羽と足をむしって、小判饅頭のようになった哀れなそれを醤油と調味料に浸して、こんがりと揚げる。

 初めて試したときは、腹からぶちゅつと内臓が出てきそうで警戒したが、それはない。

 しかし、お世辞にもうまいとは思えない。

 だが、ラーや息子たちは、おやつにおかずにとバリバリと平らげてしまう。

      *

 一昨夜も、晩飯をそそくさと済ませると、子供や甥っ子を引き連れて、外に飛び出した。

 穴場は、山奥にある電力会社の裏山である。

 部外者は入れないのだが、知り合いの所長に電話してゲートの鍵を開けておいてもらうように「予約」までしてあるのだという。

 むろん、私は行かない。

 カブトムシの住処は、蛇、ムカデ、毒蛾、毒虫、蜂などの巣窟でもある。

 3時間後。

 興奮して戻ってきた一行が突き出す容器をのぞいて、のけぞった。

 写真の5本角が、100匹ほどもつれ合い、絡み合いながらワサワサとうごめいている。

 大猟である。

      *

 昨日の食卓には、その唐揚げを筆頭に、唐辛子と一緒に搗きつぶしたナームプリック、近所からのお裾分けである蛙の和え物、マカーム(タマリンド)味の酸っぱい野菜スープなど、伝統的なカレン族料理がずらりと並んだ。

 私が安心して食べられるのは、野菜スープだけである。

 そして、今朝になってラーが激しい腰の痛みを訴える。

 時間をおいて現れる筋肉痛は、高齢化の兆しだというが、彼女もそんな年代に差しかかりつつあるのだろうか。

「まったく、ヤーイ(婆さん)になったもんだ」

 そうからかうと、

「そうじゃないよ。毎日クッティアオばかり売ってるから、すっかり体がなまったんだよ。以前のあたしは、こうじゃなかった。ああ、痛い、痛い、痛い」

 やむなく、本日の臨時休業を許可すると、ゴソゴソと丸網を引っ張り出して手入れを始めた。

「腰が痛いというのに、何やってるんだ?」

「今日は店が休みだから、エビ獲りに行ってくるね」

 こ、こらあ!

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3 コメント

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うヒャヒャ (しんちゃん)
2011-09-25 23:29:33
オラはカブトムシ好きだぞ。デブでブスなオネちゃんより好きかも。バンコクではさすがに見ないな。調理後の写真が見たい。あーっ、ヨダレが、ビールに好いかも。
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Unknown (ishi)
2011-09-27 11:47:52
カブトムシ100匹…少し引きますね.口直しのつもりがやや食傷気味です.

先日,植木屋の友人の家でスズメバチの巣がとれたので(家の回りはまだまだのどかです),幼虫と蛹を醤油で炒めていただきました.蛹はぱりっとして美味しかったです.幼虫は少し生臭いですね.「牛飼い小僧」も巣から幼虫を引っ張り出していましたよ.都下ではたまにこんな事もあります.
今度お邪魔するときは,伝統的カレン料理もチャレンジしたいところです.
返信する
カブトムシ&蜂の巣 (クンター)
2011-09-28 09:21:37
しんちゃん

 調理後の写真を撮る暇もなく、誰かさんの餌食になってしまいました。

    *

ishiさん


 牛飼い小僧くん、相変わらずたくましいですね。わが村では、炙った蜂の巣ごと食べてしまいます。次回は、食材の狩猟採取活動から始めていただきましょうか。
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