昨年末、わが家のカレン軍鶏を壊滅させた疫病も、どうやら終息したようである。
近隣の鶏の数も次第に増え始め、以前のような早朝の賑やかな鶏鳴合戦が戻ってきた。
ラーがさっそく、「ウチでも、また鶏を飼おうよ」と言い出した。
すでに、近所で修理工場を営む売り主への根回しも済んでいる様子だ。
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さっそく見に行ってみると、ラーが目をつけているのは鮮やかな茶羽の雄と2羽の雌鶏。
雌鶏の1羽は顔が赤く、これはすでに孕んでいる証拠だ。
「黒羽はいないみたいだな」
「うん、前とおんなじ軍鶏はなかなか見つからない。でも、この雄もなかなかたくましそうでしょ」
「そうだな。また黒羽に病気で死なれるのも辛いから、とりあえずこいつらにしておくか」
すっかりなついていた20羽に近い黒羽軍団が、バタバタと倒れていった様は、今も思い出すと辛い。
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3羽をまとめて秤に載せると、3キログロム。
キロ150バーツの言い値を、400バーツに値切った。
飼料袋に詰め込んで家に戻り、寝籠に入れる。
籠にすっぽり目隠しの覆いをかけ、ひと晩を過ごさせればば、ここをわが家と認識して居着く。
筈だったが、翌朝籠から放すと、彼らは庭にばら撒いた米には目もくれず、裏庭の垣根の隙間から逃げるように隣家の敷地に入り込んだ。
そして、夕方になっても戻ってこない。
夜になって探しに出ると、彼らはなんと隣家の高床式台所下の横板の上で揃って眠っている。
「なんて、悪い鶏たちなんだ。これは、絞めるしかないね」
もしも、ここで卵を産んでいれば、村のしきたりに従って即処刑のところだったのだが、大枚400バーツを盾に、ラーの激しい殺意をなんとか押し留めた。
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翌朝、雄はしっかり反省したのか、庭の餌を喰らい、2羽の雌に交互に襲いかかった。
騒ぎのあとも、3羽固まって庭をうろついている。
やれやれ、やっとこれで落ち着いたか。
だが、夕方家に戻ると、従順な雄はすでに寝籠に入っているものの、雌の姿が見えない。
どうやら、こいつ、雌どもにすっかり見放されたようである。
ヘッドランプを灯して、再び捜索に出ると、また同じ場所だ。
ラーに言わせると、「産まれたはずの卵は、太っちょ氏に喰われてしまったに違いない」ということになる。
このままだと、鶏の身も危ないそうだ。
「もう、絞めるしかないよ」
「待て待て、とりあえず卵を産んでる方を絞めよう。そうすれば、残った雌も反省するかも知れない」
寝籠に戻してから、1羽の雌には死刑を、残る1羽にはお慈悲による延命を宣告した。
「生き残った者は、先に逝った者のためにも正しき雌鶏の使命をまっとうし、子孫繁栄に励むように」
ついでに、雄鶏にも言い含める。
「お前には一夫多妻は無理みたいだから、二人きりにしてあげよう。その命を賭けて、残った一羽を引き留めるんだぞ。さもなくば、お前も死刑だからな」
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しかし、今朝の雄鶏の態度を見ると、どうも心もとない。
以前買っていた黒羽たちは、朝になると、自ら餌をねだって庭におりた私の足元に寄ってきたり、中には家に上がり込んだりする奴もいたのだが、こいつときたら、足音を立てただけで怯え、逃げてしまうのである。
だから、写真もうまく撮れやしない。
しかも、相変わらず気ままな雌鶏からは置き去りにされる始末。
死んだ2代目ジャラケーなんぞは、20羽近くの大家族を統率していたというのに。
あーあ、なんだか、こちらも飼う気が失せてきた。
仕方がない。
3羽まとめて、喰っちまうか。
このところ、鶏鍋ともご無沙汰していることだし。
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まあ、売り手がいるかどうかが一番の問題でしょうが、手っ取り早く卵を産ませて雛を育てる、というのが村のやり方のようです。すでに、2羽はわが腰痛祈祷の供物になってしまいましたが、肉は堅くてまずかったです。誰かさんは、残り一羽も絞めたがっています。
いつも思うのですが,中ビナを買ってくるわけにはいかないのでしょうか?
もしくは,ヒナの内にたくさん買って,半分は雄でしょうから,雄は食べてしまうとか?若雄の方が美味しいですし.
もう少し,簡単に馴れる気がします.まぁ,あまり馴れると食べるのが切なくなりますが....