今日の一貫

農地、農協の抜本改革が必要だが、農水省が抵抗、が日経、朝日に出ている

産業政策というと、何か補助金を出して振興すると言ったものがオーソドックス。だが、成功の確率はあまり高くはない。
規制をはずして、民間に自由に判断してもらう手法の方が、成功の確率が高い、とされている。

この分野の研究の蓄積が特殊な事例に偏るせいか、普遍的な真理か否かはわからないが、わが国のこれまでの産業政策の結果を見ると納得できるもの。
農業の場合は、参入自由にして、結果責任を問う方式の方が良い結果が出ると、私は考えている。

だが、入り口のところでの議論が消耗戦になっている。
農水省、農協と言った存在が、抵抗勢力になって、消耗戦を誘導しているのが実態だ。

それがTPPでは如実に現れている。
農水省試算では「TPP参加で農業が壊滅的になる」と言っていることがそれ。
この文言には「直ちに関税を撤廃し、何らの対策を講じない場合」と言う現実離れした前提がついているのを多くの人は気がついていない。

これ現実にはありえない前提だ。
だから、なぜ、このような前提であえて試算するのか、にもう少し関心を持ってみるのもおもしろい。
結論は、「農水省は必要でしょ」、、といいたいから

だいたい、TPPで「直ちに関税廃止」はありえない
また「何らの対策を講じない」という無政府状態もありえない。
したがって、「農業が壊滅的になる」こともない。
なぜなら、農水省が何らかの対策を講じるし、関税は10年から15年かけて、しかも交渉の上でなくすかどうか決めていくから。

農水省の保身のための根も葉もない、浮世離れした前提に基づいた試算によって、善良な人々が踊らされているのだから気の毒といえば気の毒だが、、。
まー踊らされる方もそれなりの意図を持って踊ってるのだろうから、同じ穴の狢かもしれないけれど、、.

こうしたやり方で国家のあるべき方向をゆがめられ、日本が消えていこうとしているのが残念と言えば残念だ。
農業への補助金も大切には違いないが、その胴元への規制緩和が優先する課題となっているように思われる。

壊滅的にしないために農水省必要でしょう、という前に、農水省は、これまで様々な対策を講じてきたのに、15年間で3兆円減少(農水省に言わせれば壊滅的な減少額)したのはなぜか?を問われなければならないのではないでしょうかね?

この農業振興には後ろ向きの農協、農水省(農地)の抜本改革が必要、との記事が期せずして、日経朝日に載っている。
引用しておこう。


「農協改革」削除に 菅首相肝いり会議、農水省抵抗
2010/12/02 朝日新聞 朝刊 6ページ

 菅直人首相の肝いりで発足した「食と農林漁業の再生実現会議」(議長=菅首相)の検討課題から、「農協組織のあり方」という項目が削除されていたことがわかった。関係者によると、農林水産省が強く抵抗したのが理由。「脱農協」は民主党の主要な訴えだけに、軌道修正と受けとられかねない。
 課題の原案は農水省が作り、平野達男内閣府副大臣が関係省庁と調整した。平野氏は農産物の流通システムの議論に欠かせないと「農協組織のあり方」を追加、経済産業省も同調した。農水省は「会議には全国農業協同組合中央会(全中)会長も参加している」として農協自体を検討対象にしないよう求めた。
 その結果、11月30日の初会合では農水省案をほぼ追認する形で(1)持続可能な経営実現のための農業改革(2)戸別所得補償(3)農林水産業の成長産業化(4)消費者ニーズに対応した食品供給システム(5)経済連携協定(EPA)推進への対応――を検討項目とする方向になった。会議関係者は「農水省が改革に消極的な証拠だ」と、指摘した。


米韓FTAが迫る農地・農協の抜本改革(社説)
2010/12/05 日本経済新聞 朝刊 2ページ

 韓国と米国の自由貿易協定(FTA)交渉が最終決着し、日本にとって米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加は待ったなしの状況となった。米国を含むTPPの自由貿易の仲間に早く入らなければ、米市場で日本企業の製品は韓国に比べ不利になってしまう。世界各国は刻々と動いており、日本に残された時間は多くない。
 そこで大きな課題になるのが農産物市場の開放を可能にする農業改革だ。小手先で今の制度を直すだけでは十分な改革は実現できない。
 だが、菅直人政権の腰は定まらない。首相は自ら議長となり、有識者による「食と農林漁業の再生実現会議」を新設した。全閣僚による政策決定機関の「食と農林漁業の再生推進本部」も立ち上げた。入れ物はできたが、問題は議論の中身だ。
 現時点では、農家への戸別所得補償制度を2011年度から修正し、作付面積に応じて補償金額を上積みする方針が示されている。一戸当たりの農地の規模拡大を促す措置だが、これだけでは細分化した農地を集約する効果は期待できない。
 農地の規模拡大に必要な政策は、自分の農地を手放し、大規模な農家や営農団体に貸し出す方向に、零細農家や高齢の農家を導く制度の導入だ。農地を使う側だけでなく、農地を提供する側を後押ししない限り、実際には農地は動かないからだ。
 現行の所得補償制度は、耕作規模にかかわらず、減反に参加するすべての農家を支援対象とする。この制度のあり方を、財源を含めて根本から見直し、農地の集約を加速する方法を考えるべきである。
 そのためには、小規模の農家が自ら耕作するより、大規模農家や営農法人に土地を貸して賃貸収入を得るほうが有利になるような仕組みが必要だ。企業などが農業に参入するうえでまだ制約がある農地法の改正にも踏み込まなくてはならない。
 生産コストの引き下げを進めると同時に、農産物の流通コストを減らす視点も欠かせない。流通の支配力が大きい農業協同組合のあり方も議論し、独占禁止法の運用の見直しを含めて、日本の農業のコストを押し上げている構造的な問題を解消していく必要がある。
 TPPに参加するには本格的な農業改革を先送りできない。自由化に農業再生の活路を見いだす生産者も少なくない。産業界はTPP推進を主張し、農協は反発するが、農業再生の実現会議を、互いの意見をぶつけあうだけの場にしてはならない。首相の決断と指導力が問われる。

コメント一覧

百姓
数字が議論されてないのは何故?
TPP市場の市場規模、その市場での日本の工業製品のシェア等、数字が議論されていないのは何故?天秤にかけるにも、数字が把握されていないのでは?財界も学会も議論のもととなる「数字」を知らずに騒いでいるだけに見える。
百姓
決断の条件
その戦略の採択には「小泉さんとは違う」の十分な説明が必要です。そしてそれは「まず自分をリストラしてかかる」しかない。が、わかっているので決断に時間がかかるのかもしれません。
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