福島第一原発事故(620)-原子力発電の単価は平均8.3円/kwh-
円居総一・日大教授の考察
政府のベストミックス論を円居教授は一笑に付した。「この言葉を持ち出したのは、何としても原発を維持したいからだろう。原子力が前提で、それ以外はどうするという順で考えたのでは」という。「安全」「安価」「クリーン」なエネルギー。原子力発電はこれまで美辞麗句をまとってきた。「安全」は・・・今回の福島原発事故で明らかになった。「安価」とされる点はどうか。電気事業連合会は2004年1月、原子力火力の発電コストの比較について、資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査委員会小委員会に資料提出している。それによると、有価証券報告書を基にした00年度から02年度の平均単価は原子力の8.3円/キロワット時に対し、火力は10.0円/キロワット時。火力が割高になっている。「クリーン」はどうか。「この点は水力や再生可能エネルギー同様、原子力は優れている」認める。しかし、「原子力は管理が困難で、事故がいったん起きれば甚大な被害を環境に与える。温室効果ガスというメリットは、その危険性に見合うほどのものではない」と述べる。(東京新聞29日「こちら特報部」より)
原子力と火力の発電単価(2000~2002年度平均)
発電の種類 稼働率〔%〕 単価〔円/キロワット時〕 備 考
①原子力 78 8.3 ②火 力 41 10.0 ③火 力 80 7.3 (稼働率を同程度にした場合)
電気事業連合会「モデル試算による各電源の発電コスト比較」(2004年1月)
原子力発電のコストは本当に安いのか。単純比較では原子力と火力ではそれ程変わらない。しかし、実際にはこれに交付金などを加え、また、日常的に良く起きている事故の補修費を加えればその単価は大きくなる。15円から20円にはなるだろう。さらに、今回の大事故になれば、その賠償金などを考えれば、予想もつかない程の莫大な金額になることは確実である。それでも、原発がなくなれば電気料金は高くなると国民を脅し、上関原発のある町長選でも、推進派の前町長が圧倒的多数で再選された。この町の人たちにとって、福島の第一原発事故は他人事なのだろうか。原発は炭酸ガスを出さず、クリーンエネルギーだと説明してきた。これも嘘で、運転時には出さないかもしれないが、出るものである。原発事故では炭酸ガスどころではなく、北海道から中国地方当たりまで放射能の影響を受けているし、人間に深刻な影響をもたらしている放射能汚染も岩手県から静岡県付近まで拡大している。200km以上離れているここ埼玉県でも、放射能量が異常に高いホットスポットがあり、有名なお茶も一部汚染されている。原発は日本全体として考えて欲しいし、そう考えれば、必要ないという結論に達するはずだと思う。(中ノ島賢)