NYフィル in 北朝鮮

僕がこのニュースを聞いて最初に出た言葉は「えっ？　信じられない！」でした。

いくら「音楽に国境は無い」とかっこいいこと言ったって、アメリカと北朝鮮の関係からこんなこと想像できましたか？

そしてさらに腰を抜かしたのは、幹部クラスを始めとするあの国の聴衆がＮＹフィルの演奏するアメリカ国家を起立して聴いたという事実。
さすがに「将軍さま」はご列席なさらなかったようですが・・・もうこれはどういう＜雪解けムード＞なのでしょうか。

（アメリカ国歌を起立して聴く聴衆）

僕は音楽を愛していますが、両国の険悪で断絶された関係をこんなにも簡単に音楽が修復できるなんて考えません。ウソです。ぜったいに。
彼ら北の人々はそんなヤワな教育（洗脳？）は受けていません。
ではなぜこのような友好コンサートがおこなわれたのでしょうか？

謎です。　不可思議です。

残念な事にこのコンサートの生中継は日本では見られませんでした。これから「録画」という形での放送は期待できますが、まずはそれを見てみないと軽軽しいコメントになってしまうので、この演奏会の感想は後日書くとしても、いったい仕掛け人は誰だったのでしょうか？

このコンサートの費用を払ったのは報道によると韓国の航空会社（ＫＡＬ？）とテレビ局だったそうですが、これほどまでに北の人間をあっさりと動かすマジックとは・・・？

演目のメインはドヴォルザークの「新世界より」でしたがこの曲のもつボヘミアンな香りとアメリカ黒人霊歌のスピリチュアルなメロディーの合体した雰囲気が北の聴衆にどんな感動を呼び起こしたのでしょうか。
しかしこの選曲は見事です。
普通は両国の全く違う文化的背景からもっと普遍的な曲を、たとえばベートーベンの５番「運命」とか、を選ぶと思います。いわいる「絶対音楽」の演目はイデオロギーの壁を越えられるはずだからです。
それがドヴォルザーク！　いいですねぇ、この中間色的で望郷の念の強い音楽。

とにかく多くのコンサートの中でもとびきりエポックメーキングなイベントでした。
このあといつだかは知らないですけど、クラプトンのコンサートもあるようですね。
まぁ、それもいいでしょう。
あの男はもうすでにロックの過激さ、メッセージ性というものを捨て去ったアーティストですから・・・これからはピンクフロイドのギルモアのようにお国から勲章をもらうため、言い換えればカネより名誉に走る生き方をすればいいのですから。

閉ざされた国、北朝鮮が西側の音楽に積極的に触れることで世界の何かが変わっていくんなら音楽家は政治家より平和のためになる存在だと全世界の人が再評価してくれるでしょうね。

それともう1つ妙な感心をしてしまったことがあります。

それはこのコンサートが韓国の新大統領就任式の翌日に行われたってことです。
このタイミングが北朝鮮のしたたかな計算あってのことだとすれば、やはり恐ろしい国ではあります。

（夕べ、急に見たくなってＤＶＤで楽しんだ映画が「エネミーライン２、北朝鮮への潜入」でした。将軍様のミサイル基地を爆破する米軍のお話）　おお、こわ～！