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北海道大学大学院教育学研究科井出研究室(福祉臨床心理)のブログです。

『性の多様性と学校教育』研修会を終えて

2015-12-21 14:08:55 | 性的多様性



12月20日(日),静岡大学道徳教育研究会の活動として,「性の多様性と学校教育」というテーマで研修会を開きました。

講師として沖縄大学の吉川麻衣子先生に来ていただき,沖縄大学で行われた当事者の学生さんたちと一緒に作った授業のお話などをしていただきました。
学生さんにも登壇していただき,授業で当事者として自分を語ることや,学校生活を振り返って学校教育に何を求めるのかというようなことをお話してもらいました。
静大からも性の多様性を教える授業づくりに取り組んだ学生さんたちに授業の様子を報告してもらいました。

沖縄大学からの話題提供では「当事者だからできること」という視点,静大からの話題提供では「当事者でなくてもできること」という視点から話題を提供してもらったという感じです。それぞれに学生のパワーと感じ面白い発表でした。

吉川先生からは大学で当事者の学生と一緒に学びあう枠組みやそうした学生の声を大学づくりにどのように反映するのかということについてのお話も伺いました。
静大のように規模の大きなところではなかなか難しい取り組みだなぁとも感じましたが,多様な性の在り方だけではなく,学生のための大学づくり(ひいては,児童生徒のための学校づくり)という視点を持つことの大切さと,学生と一緒に学校を作っていくことの面白さを教わったような気がしました。

高校生から,学校の先生,大学でこのテーマで実践研究をされている先生,当事者の方など,いろいろな立場の方に参加していただきました。
LGBTという言葉がありますが,LGBTの方たちが「当事者」で,そうでない人たちは「非当事者」という考え方ではなく,性のあり様は本当に多様で,それぞれはその多様さのどこかに位置するものであって,「当事者」と「非当事者」の間に境界線はないのだなぁということ。また,授業づくりや学校づくりというのはそういった視点から進めていく必要があるのだなぁと思いました。

何よりもこれまで臨床心理学の視点から,「こころの問題」としてとらえたり,生徒指導・教育相談上の問題としてとらえる傾向にありましたが,授業づくりのような形で,「学ぶこと」も大切なんだなぁという体験ができたことは自分にとっての大きな学びでした。


これから少しずつこのテーマについての,小中学校等での研修の機会も増えてきそうです。


教員養成課程における『性の多様性と学校教育』の模擬授業

2015-12-11 18:23:11 | 性的多様性


静大では『生徒指導』や『教育相談』といった教員養成課程の授業も担当しています。
今日は『生徒指導』の授業の中で『性の多様性と学校教育』というテーマの授業を行いました。

授業者は静岡大学道徳教育研究会として,道徳の授業づくりに取り組んでいる学生さんたちです。
今年の4月に文部科学省が『性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について』という通知を出しました。多様な性を持つ児童生徒が身近にいることを認識し,それぞれの性のあり様に沿って学校生活を支援しよう,という趣旨の通知です。

実際に“性的マイノリティ”として生きてきた人たちの話を聞くと,学校の様々な場面で苦しい思いや悲しい思いをしてきたという話を聞きます。「男」と「女」という2つの性によって作られた学校という社会において,多様な性を持つ人たちが生活することは,いろいろな難しさに直面することなのだということを教わりました。
そんな中,教員になっていく学生たちが性の多様さについて考え,教員として何ができるのかを考えてくれることはとても大切なことだと思います。

今日の授業の中で「あなたの目の前に,多様な性を持った生徒がいて,あなたに相談してきたらどうしますか?」という問いかけをしたとき,ある学生たちはロールプレイを始めました。ゲイの子どもの役とその子の相談にのる先生の役を決めてやり取りをしています。しばらく会話が続いた後,「わぁ,難しい。無理や!」という声。周りで一緒に見ていた学生たちも,「ムズイ」と同調していました。

「そうだよね。難しいよね」「でも,あり得るよね」

答えが出るようなことではないけれど,自分たちが教員になった時に直面するかもしれないこと,と身近に思ってくれるようになったことは大きなことだと思いました。

性の多様さについて授業者が説明してくれているとき,「からだの性」「こころの性」「好きになる性」と多様さが広がっていくのを知ったとき,「訳わからん」とつぶやいていた学生もいました。素直な気持ちだと思います。1つ1つの性を区別して考えることがいかに意味がないことかを感じたようでした。



今回の取り組みでは性の多様さを知ってもらうということも大切ですが,そもそも人って多様だよねということを知ってもらうきっかけを作るということも大切だと思います。
授業づくりに取り組んでくれた学生たちはここ数日大変だったと思います。お疲れさまでした。
また,彼らの授業を興味を持って聞いてくれた学生の皆さんにも感謝です。ゆっくり感想を読ませてもらおうと思います。

静岡大学道徳教育研究会

「性の多様性と学校教育」講演会のお知らせ

2015-12-04 09:03:28 | 性的多様性
12月20日に「性の多様性と学校教育」というテーマで研修会を開催します。

静岡大学道徳教育研究会の活動の一環としての研修会です。
講師として沖縄大学の吉川麻衣子先生をお招きします。吉川先生は沖縄で学生たちと性の多様性について取り組んでおられます。その学生さんたちも一緒に登壇してもらい,大学での取り組みなどをお話してもらう予定です。

静大からも教員養成課程で学生たちに性の多様性を教える授業づくりに取り組む学生さんたちにも登壇してもらいます。


お申し込みはこちらからどうぞ。
静岡大学道徳教育研究会


「学校でのLGBTへの新たなとりくみ?~文部科学省通達をうけて当事者と考える」に参加して

2015-11-03 22:38:44 | 性的多様性
今日はNPO法人ぷれいす東京が主催する「学校でのLGBTへの新たなとりくみ?~文部科学省通達をうけて当事者と考える」という研修会に参加してきました。性的マイノリティに関心を持つきっかけを下さった高校の先生が教えてくださった埼玉大学の渡辺大輔先生が講師として来られるのと,「文部科学省通達をうけて当事者と考える」というテーマに惹かれました。

ここでいう“文部科学省通達”というのは今年の4月30日に文科省が全国の学校(小中高)に出した「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という通知です。

LGBTを始め,性的マイノリティに関してはいろいろな調査が行われるようになってきました。
例えば,電通がLGBTを対象とした市場の大きさを知るために調査をしていたりしていますし,文科省も全国の小中学校に性的マイノリティの児童生徒がどれくらいいて,どのような配慮が必要かという事例を吸い上げるような調査をしています。
ある調査では何らかの性的マイノリティに該当する人は13人に1人くらいいるという結果も示されています。
渋谷区では同性婚が認められるようになりましたし,世の中の動きに合わせて,学校でも性的マイノリティの児童生徒への対応の必要性が高まってきているというわけです。

ところが,学校の先生たちの研修で「『性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について』という通達が出ましたけど,知ってますか?」と尋ねても,100人に5人も知っていると手をあげる人はいません。
通知は出ても,実際には学校現場には届いていないんだなぁということを実感しました。


今日の研修は,東京ドームの近くにある日本性教育協会という場所で行われました。そもそも,こういう場所があることを初めて知りました。
国立国会図書館にもないような性教育に関する書籍が資料としてたくさんあるそうです。



研修は渡辺さんから若者の性的マイノリティの現状についての報告があった後,当事者の子どもさんをもつ方からの子育てについてのお話がありました。
その後,参加者同士でどんなことが問題で,どんな改善策があるのかについて話し合いました。
何より面白かったのは参加されている方のバックグラウンドでした。
学生,教員,ジャーナリスト,性産業,当事者など。いろいろな視点から現状について,と改善案がいろいろと出てきました。

「解決策」は出てきませんが,少しでも良い状態になるためには,まずはいろいろな人がつながることなんだなと思いまいた。
国籍が違う人も,性別が違う人も,性的嗜好が違う人も,身近にいて友達や知り合いになれば,実はそんなに変な人ではないということがわかってきます。「子どもたちに」「学校で」と言う前に,「大人が」「教師が」「社会が」オープンになっていけばいいなと思いました。