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北海道大学大学院教育学研究科井出研究室(福祉臨床心理)のブログです。

【書籍・翻訳本】『子どもの性的問題行動に対する治療介入──保護者と取り組むバウンダリー・プロジェクトによる支援の実際』

2019-10-30 18:05:05 | 書籍・論文
エリアナ・ギルさんたちによる『Working with Children with Sexual Behavior Problems』を翻訳した『子どもの性的問題行動に対する治療介入──保護者と取り組むバウンダリー・プロジェクトによる支援の実際』が出版されました。


子どもの性的問題行動に対する治療介入──保護者と取り組むバウンダリー・プロジェクトによる支援の実際
(エリアナ・ギル/ジェニファー・ショウ著 高岸幸弘監訳 井出智博/上村宏樹訳)

エリアナ・ギルさんは,アメリカの心理臨床家で,彼女が書いた『虐待を受けた子どものプレイセラピー』は日本での児童虐待の取り組みが本格的に行われるようになり,児童養護施設に心理職が配置され始めた頃に日本に紹介されたこともあって,施設で臨床をする者には非常に大きな影響を及ぼした一冊だったと思います。
その内容をそのまま施設で行うことは困難でしたが,基本的な考え方を学ぶという意味では本当に勉強になる本でした。





『子どもの性的問題行動に対する治療介入』では,その題名の通り,性的な問題行動を示す子どもに対する治療的な介入が中心に書かれています。子どもだけに介入するわけではなく,子どもの生活環境に働きかけたり,養育者-子どもの関係を改善したりする具体的な方法についても述べられています。
日本でそのまま導入するということについては課題もありますが,基本的な考え方,特に中心になっている「バウンダリー・プロジェクト」という考え方は非常に参考になると思います。

「バウンダリー・プロジェクト」とは,TF-CBTや心理教育,箱庭療法,アタッチメント理論などを統合したアプローチで,家族に焦点を挙げた統合的なモデルです。「バウンダリー」という言葉が使われているように時には大人による管理を含めて,様々な意味での境界線(バウンダリー)を引けるようになっていくことを支援するものです。

監訳者である高岸さんはカナダの性被害,性加害の治療施設での研修もされた性的虐待や性被害の心理的ケアの専門家です。
この翻訳本の出版は実践を進めるためのスタートだともおっしゃっていましたので,「バウンダリー・プロジェクト」に基づく実践を日本で具体的に適応できるような形に修正していって下さるものだと思います。

翻訳本ということで,訳者としては読みやすいように翻訳することを目指しましたが,わかりにくいところもあるかもしれません。
本をお手に取られて,もしわかりにくいところがありましたらご指摘ください。
また,この本をもとに実践をしてみたいよという方がいらっしゃったら,ぜひ,お声かけください。