goo blog サービス終了のお知らせ 

IDE Lab.

北海道大学大学院教育学研究科井出研究室(福祉臨床心理)のブログです。

ふじのくに地域・大学コンソーシアムからの研究助成

2017-08-01 08:23:11 | 性的多様性
学校における性の多様性の実態に関する調査を進めています。
この調査は,“男女”といういわゆる性的マジョリティだけではなく,多様な性を持つすべての児童生徒にとって過ごしやすい学校を作るために,まずは実態を調査し,その内容をもとに実践的な学校づくり,授業づくりを進めていく研究の一環として行われています。

このテーマを多面的に理解するために,教育学(静岡大学教職センター准教授 松尾由希子先生),学校保健学(静岡大学教育学部教授 鎌塚優子先生),特別支援教育学(静岡大学教育学部准教授 山本薫先生),臨床心理学(静岡英和大学准教授 玉井紀子先生),当事者支援団体(LGBTしずおか代表 細川知子さん)と一緒に研究チームを組んで進めています。

調査は県下の小中高等学校,特別支援学校のすべてを対象とする予定ですので,1,100校ほどが対象になります。
それなりに予算を組むことが必要なので,研究助成金を頂くべく,申請をしていましたが,この度,「公益社団法人 ふじのくに地域・大学コンソーシアム」から助成金を頂くことになりました。



テーマは「静岡県内の学校教育における性的マイノリティ児童生徒への教育相談体制整備についての研究」です。

すでに高校,特別支援学校については調査を実施し,データ分析を始めたところですので,また近いうちにご報告できると思います。

『学校における性の多様性 ~授業実践と教育相談~』開催のご報告

2017-01-23 11:05:19 | 性的多様性
昨日,静岡大学道徳教育研究会が主催する『学校における性の多様性 ~授業実践と教育相談~』という研修が開催されました。
一橋大学の柘植先生(臨床心理学)と埼玉大学の渡辺先生(教育学)をゲストにお招きして,授業実践と教育相談という2つの視点から学校における性の多様性について考えました。



柘植先生からはセクシャリティーの揺れについてお話をして頂きました。
特に児童期~思春期~青年期というただでさえ揺れやすい発達段階にある児童生徒ですから,自分の性をめぐってもいろいろな揺れを経験することをお話しいただきました。

渡辺先生からは小中学校において性の多様性を児童生徒と共に学ぶ授業についてお話をして頂きました。
渡辺先生の実践からは「当事者と非当事者」「マイノリティとマジョリティ」という二分した思考ではなく,それぞれが多様な性の中にいる”当事者”であるということにどのように気付いていくのかということを学びました。

最後に,静岡大学道徳教育研究会からは教員養成課程で(将来教員を目指している学生に対して)性の多様性について学ぶ機会を提供する取り組みについて報告させて頂きました。この取り組みも2年目を迎えますが,報告してくれる学生たちの姿も随分と頼もしく感じました。講師のお二人からは今後に向けての視点もご示唆頂きました。単に知識を教えるだけではなく,自身の中にある感覚に気づくことができるような授業づくりを進めていかなければならないなと思いました。

昨年度に比べると多くの学校の先生方にもご参加頂き,関心を持っていただいていると感じました。



性の多様性を教える@教員養成課程

2016-12-02 20:03:30 | 性的多様性
今年度も生徒指導の授業の一部として,学校における性の多様性について学ぶ回を設けました。
今回は講義を2回使い,権利の側面から考え,そのあとで性の多様さについての基本的な知識を学び,事例について考えるという授業実践でした。
この授業実践は静岡大学道徳教育研究会の学生が中心になり,指導案を作り,取り組んでくれました。
いろいろな迷いもありながら2回分の授業をやってくれる彼らをとても頼もしく感じてみていました。

それと昨年度やった時よりも,受講している学生の性の多様性に関する知識が格段に増えていることにびっくりしました。
1年の間にいろいろなところで性の多様性に関する情報に触れる機会が増えているようです。

今回は研究会の学生が授業を進めてくれるので,私も学生たちの中に入って授業に参加していましたが,受講する学生たちの声を拾っていくのも面白かった。授業中,学生たちはいろいろなつぶやきをしているんですね。そんなつぶやきが授業を作る。
前に立って授業していると何をしゃべっているんだろう?と時にはむっとした気持ちになりますが,もう少し彼らのつぶやきを拾ってみたいなと思いました。


グループワークで出てきたアイデアを黒板に整理




ディスカッションしたことをグループごとにまとめる


筆ペンで書いてくれるグループも…

性の多様性は理解するけど,自分の職場にいると嫌だ…?

2016-09-01 09:17:05 | 性的多様性
先日,朝日新聞などで労働組合が行った職場でのLGBTに対する意識調査の結果が報道されていました。


http://www.asahi.com/articles/ASJ8T5G48J8TULFA014.html

LGBTに対する社会的な理解は少しずつ広がってきているけれど,まだまだこれが現実なのですね。

私たちは主に学校における性の多様性について取り組んでいます。LGBTなど多様な性を持つ子どもたちが自然に学校生活を送れるようにするにはどうしたらいいだろう?ということなのですが,ディスカッションをしているとよく話が及ぶのは,多様な性を持つ先生たちってどうしているんだろうね?ということです。そもそも多様な性を持つ子どもたちが学校でそれを自然に表現できるようになるためには,多様な性を持つ先生が学校の中でそれを自然に表現できるようになっていなければ難しいんじゃない?と。 でもそんな時,「別に学校にセクマイの先生がいてもいいと思う」「けど,もしその人が自分の子どもの担任になったら,急に親の態度や評価って変わるんじゃない?」という話になったことがありました。 社会的な価値(ある程度他人事)としては認める
けれど,自分のこととなると嫌悪感が出てくる。

正直,私自身の中にもそうした感情が全くないわけではありません。「ないよ~」と思っていても時々,気づかないうちに自分の中にそうした嫌悪感がいろんな形で起きてきていることに気づいて自分で驚いたりもします。なので,そうした嫌悪感自体を責めたり,非難したりするというのもまた多様性の否定のような気がするのです。

で,この労働組合の調査。
実は報道されているのはごく一部の情報なのです。
日本労働組合総連合会のwebページからは調査の詳細を見ることができます。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/chousa/index.html

報道されている以外にもいろいろな”非当事者”の意識調査が行われていて興味深いです。