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(…ところが面倒なことになった。というのも、)
皇帝が ヒマラヤへ通じる すべての街道の守備兵に 命令を出したからだ。
皇帝は守備兵たちに、
「老子が 中国の 国境を越えてゆくのを見かけたら、かならず 彼を投獄せよ。
深く敬意を表しつつも、彼と交渉し、ヒマラヤへ行くのと 引き換えに 自らの体験を綴る書物をーーー重要な鍵を 書き留めさせるのだ 」と 命じていた。
老子は 丁重に捕らえられ、用意された守備隊の小屋に 閉じ込められると、告げられた。
「本質的な体験と それに到る手順を 書き記さないかぎりーーー我々は 厳しい命令を受けているのですーーーあなたが中国を去り、ヒマラヤに向かうことは 許されません 」
このような 愛のこもった 強い勧めを受けては しかたがない。
老子は『道徳経』を書いた。
老子は その最初の一行から こう始める。
「真理は 語ることができない。
語るやいなや、それは 真理ではなくなる 」
この 小さな書を 読む者はみな、まさに その冒頭から、これは 言葉であり、言葉は 言葉なき沈黙を 伝えることができない と警告される。
彼の 書物の序には こう記されている。
「私は強いられて、この書物を書いている。
だが、これは真理 そのものではない。
書物から 真理を手に入れることは できない 」ーーー
ーーー何という誠実さだろう!
(つづく)