「人間って、死ぬもんなんだよね……」

私が明日、死ぬとわかったら「自分にも相手にも優しくなる」
人間は、いつ死ぬかわからないんだ…みんなに優しくしよう。

臨済録 by OSHO「第七話 不動の 全一さ」13

2013-06-03 23:29:01 | OSHOの講話



古い諺に
「音楽家が完璧になると 楽器を捨てる」とあるのはそのためだ。
今や、彼の声そのもの、存在そのものが 音楽を奏でる。
今や、彼を取り巻く 空気そのものが音楽だ。

そして射手が 完璧になると、彼の 不動の全一さは、鳥の群れや 動物の群れを見つめるとき、ほとんど殺人光線のようなものになる。



師は 言った。
「戻って、このポイントから 学び直すがいい。
的は的ではない。
おまえ自身が 的なのだ。
全一に なるがいいーーーもし わしが生きていたら、五年後に おまえを訪ね、印可を与えてもよいか どうか確かめよう。

あるいは、わしが死んでいたら、わしの息子が 行くだろう。
あいつも わしと同じくらい 腕の立つ達人じゃ。

おまえは あいつを見分けられるだろう。
わしが 眼を使ってやれることは、すべて あいつにもできるからな」


五年後に 老人はやって来た。

若者は五年間、全一で あろうと必死に努力して、それを成し遂げていた。
老人は尋ねた。
「おまえの弓矢は どこにある?」

若者は言った。
「たしか、今から二年前のことだった と思いますが、何世紀も 過ぎたように思えます。
そのとき以来、私は 弓も矢も 目にしたことがありません。

今、私はあなたと 同じことがやれます」


老人は吟味もせずに、その場で 彼を認めて こう言った。
「おまえの眼に、不動の全一性を 見て取れる。
おまえの身体に、内から生まれた くつろぎを 見て取れる。
王の もとへ行き、老人が認めてくれた と告げるがいい。
ただおまえに 印可を与えるために、わしは山から 下りてきたのじゃ」



禅は、あらゆるものに 新しい価値をもたらす。

それは 生を放棄する宗教ではない。

それは生を 変容させる宗教だ。

禅は あらゆるものを 変容させ、何ものも 否定しない。
だが、
ひとつのことを 覚えておかねばならない。

無心で あること、全一性、作為の ないことだーーーそれは 奇妙な価値観だ。

というのも、どんな宗教も それについては語らないからだ。

だが、それらは 自らの 実存を変容させる錬金術を あなたに授ける 真正な価値だ。


(つづく)

臨済録 by OSHO「第七話 不動の 全一さ」12

2013-06-03 19:26:26 | OSHOの講話



(…せっかく完璧な射手に なったのに、今度は弓を捨て去るとはどういうことなのか?)

ある男が 中国の皇帝に宣言した。
「さあ、私を中国一の 弓の使い手だと認め、それを天下に公表しなければなりません。
私は どんな挑戦にも 応じる用意があります」

彼はまさに完璧だった。
ちょうど ヘリゲル教授のようにーーー 命中率100パーセントだった。

だが、王は言った。
「山奥に住んでいる 老齢の射手のことを、おまえは 聞いたことがあるか?」

彼は言った。
「その人の うわさは聞いていますが、腕を競う用意は できています」

王は笑って 言った。
「おまえは その老人に 会いに行かねばならん。
老人が おまえを認めたら、わしも おまえを認めよう。
わしには 弓のことは わからんからな……。

だが、彼は 腕の立つ射手だ。
おそらく一番の 使い手だろう。
だから おまえは 行かねばならん。

老人の印可を 持ってくるがいい。
そうすれば、わしの印可も 手に入る。
老人に 訊かないかぎり、わしが 与えることはできぬ。
挑戦など 論外だ」


そこで、男は 高い山まで 旅をしなければならなかった。

その山で彼は、腰が曲がり、まっすぐに 立つことすらできない、ひじょうに高齢の老人を 見つけた。
男は尋ねた。
「あなたは 射手ですか?」

「かつては な。だが、もう半世紀も 昔のことじゃ。
完璧な射手に なったとき、師匠の教えに従って、わしは弓を 捨てねばならなかった。
おまえは
自分が完璧な達人だ と思っておろう。
印可を もらいにきたのか?」

王は ある人物を送ったと老人に知らせていた。

男は言った。
「その通りです」

老人は言った。
「では、なぜおまえは 弓を持ち歩いておるのじゃ?」

男は言った。
「奇妙なことを……。
私が熟達しているのは まさに この弓なのですよ」

老人は 笑った。

彼は男を 小屋から連れ出すと 山の断崖へ連れていった。

老人は見るからに高齢で 百四十歳かそこらの歳だった。

崖は 深く切り立ち、谷まで 何百メートルも あった。
一歩でも 足を踏みはずしたり、震えたり、ためらったりしたら 一巻の終わりだ。

老人は 崖っぷちまで 歩いてゆくと、片足で 崖の上に立ち、片足を 宙に垂らした。


若者は 眼を疑った。

老人は言った。
「さあ、おまえも おいで、あとひとりは 充分ここに立てる!」

若者は 二歩 踏み出しただけで、その光景に すくみあがり、震えながら坐り込んだ。

老人は 笑って言った。
「おまえは大した射手だ。
ところで 一本の矢で 鳥を何羽殺せるかね?」

若者は言った。
「もちろん 一羽です」

老人は言った。
「おまえは 禅師のもとで 学ばねばならん。
一本の矢で 一羽の鳥とはな。
それでは まったくの無駄使いだ。

わしの師匠は、一本の矢で 鳥の群れを射落とさないかぎり、誰にも けっして印可を与えなかった」


若者は言った。
「あなたは 何羽 射落とすことが できるのですか?」

老人は言った。
「おまえは 数のことを 言ってるな」

ちょうど そのとき、上空を 鳥の群れが飛んだ。

老人が 見ただけで、七羽の鳥が 落ちてきた。

若者は 言った。「なんて ことだ!」

老人は言った。
「全一(トータル) に見ることが できたら、眼 そのものが矢になる。
おまえは初心者だ。
崖っぷちまで 来れなかったからな。
内側で 震えているようでは、おまえの弓は 完璧ではありえない。

何とか 的を射ることはできるだろうが、それは 肝心なことではない。

大切なのは、不動の全一さ を得ることだ。

そうなったら、おまえの 全一な実存は 矢と同じくらい 鋭くなる」


(つづく)