昨年末に坂東市に行く機会があり、「坂東市の名産品」(坂東市名産品会 発行)というパンフレットを見つけました。
その中で「郷土食」の「赤もち」を最中に入れた創作和菓子がありました。
「古くから郷土食として親しまれてきたモロコシ原料の赤もち」の一文に、私はくぎづけ。
写真をみる限りでは、最中の餡の中にある四角いお餅は柔らかそうで、滑らかな感じです。
残念ながら、その日は時間が無くて、紹介されていた和菓子は購入出来なかったので、
坂東市の「赤もち」がどういうものかまだ知らないのですが、
「赤もち」という初めて知るお餅の名に惹かれて、調べてみました。
★もろこしとは?★
まず、「もろこし」とは、別名、「たかきび」「コーリャン」「ソルガム」とも呼ばれるとのこと。
・・・「コーリャン」という名は、中学・高校の頃の地理で、中国の農産物として習った記憶があります。
そして、中国のお酒「白酒(パイチュウ)」の原料・・・酒好きなので、ついそんな連想が(笑)。
余談は置いといて、大事なポイント。
「もろこし」という名前から、「とうころこし」や「きび」とも混同されやすく、
・もろこし/たかきび/コーリャン:イネ科モロコシ属
・とうもろこし:イネ科トウモロコシ属
・きび:イネ科キビ属
で、それぞれ違う植物です(Wikipedia「モロコシ」より)。
・・・勉強になります。
★「あか餅」について文献で調査★
さて、「もろこし」=「たかきび」を使ったお餅「赤もち」「もろこし餅」について手元の文献等で調べました。
すると以下のようにいろいろあるようです。
(1)農林水産省ホームページ 食文化 > うちの郷土料理 > 茨城県 赤餅(あかもち)
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/akamochi_ibaraki.html
こちらのサイトに、「赤餅」の写真とその云われや、原料の「もろこし」の写真があります。
こちらのサイトによると、
「鎌倉時代ごろ、阿弥陀寺中興開基安養上人が、「赤餅」の原料であるもろこしの種を生国である現在の群馬県より坂東市長須の地に持ち帰り伝えられたといわれている」
とのこと。
やはり、板東市の郷土食ですね!
また「もろこし」についても説明があり、
「もろこしは、イネ科の1年草で、夏になると穂がなり、秋の収穫の時期になると、赤紫色に変化する栄養価の高い穀物」で、
「稲や小麦が育ちにくい地域でも育てられることから、利根川、那珂川(なかがわ)、久慈川流域の農村地帯など、よく水害が起こる地域で栽培されていた」
とのこと。
昔の人々の生活の知恵が伝わってきます。
なお、こちらに紹介されている「赤餅」のレシピは、後述する(2)の文献(「いばらきの味-郷土料理献立集 食・彩・百・景」)から引用されたものです。
(2)「いばらきの味-郷土料理献立集 食・彩・百・景」(茨城県衛生部成人病対策課 編集・発行 1995年1月発行)
こちらは上記(1)の農林水産省の「赤餅」の記事の参考文献となっています。
旧 岩井市(現在の坂東市)の「赤餅」として紹介されています。
作った赤餅や、たかきびの実がたわわになった穂も写真になっているので分かりやすいです。
この写真から、やはり、ここでいう「もろこし」は「たかきび」なのが分かります。
材料: もろこし粉、湯、きな粉、砂糖
おおかまな作り方: もろこし粉に湯を入れ、耳たぶくらいの柔らかさになったら丸める。
それを茹でて、熱いうちに、きな粉をかける。
砂糖ときな粉を使うので、甘くして頂くお餅ですね。
(3)「聞き書 茨城の食事 日本の食生活全集⑧」(発行:社団法人農山漁村文化協会)
こちらの文献では、同じ「もろこしもち」の名で、県央畑作地帯、北部山間地帯、鹿島灘沿岸 それぞれの食として紹介しています。
ただし、いずれも写真がなく文章だけなので、「もろこし」が「たかきび」なのか実ははっきりしません。
① 県央畑作地帯の「もろこしもち」
概要:
もろこしは「もちもろこし」を使う。精米所で搗いてもらい、もち米と一緒にひやし、せいろでふかす。
3割くだいもち米を入れた方がいい。
搗きたてのうちにあんをまぶして食べる
残ったら円筒形にして輪切りにしておく。焼きながら、醤油、きな粉、あんをつけて食べる。
「冷めるとまずい」とのこと。
筆者註:ここでいう「もろこし」は「もちもろこし」という記述から、
もしかすると「きび」かもしれません。
きび(黍)には、お米と同じように、「うるしきび」と「もちきび」がある
とのことなので、「たかきび」でなくて「きび」を使った餅の可能性があります。
この書籍には写真がないので詳細は不明ですが。
② 北部山間地帯の「もろこしもち」
概要:
精白したもろこし二升と、もち米1升の割で搗く。
焼き餅にすると香ばしく、腹にもたれない。
また薄く切って干しもちにし、春先の間食やお茶菓子にする。
③ 鹿島灘沿岸の「もろこしもち」
概要:
寒中、もろこしを搗いて水にさらす。毎日水を取り替え1ヶ月くらいおく。
それを二、三日からからになるまで干して、それを石臼で粉にしたものを団子にする。
茹でてお汁粉に入れる。つるつるしておいしい。
もろこし粉を「もろこしの寒ざらし」というとのこと。
「赤餅」「もろこし餅」も、作り方も食べ方もいろいろあるようです。
★「おらげの赤餅」にトライ!★
で、とにかく、実際に作ってみました。
「もろこし」という名では売られていることは少ないようですが、
「たかきび」という名ですと、市販品もあり比較的手に入りやすいです。
私はつくば市内の自然食材のお店で購入しました。
昔はもち米の代わりに使われたとのことですが、現代ではたかきびの方が高級食材です・・・。
上の参考HPや文献にあるような粉は手に入りませんので、たかきびは粒のままもち米と一緒に炊いたものをすりこ木で搗いて餅状にして、作ってみました。
レシピも上の文献からも特に決まってはいないようなので、まずはトライ
「おらげの赤餅」ということで、今回のように作ってみました。
★材料★
たかきび 120cc
もち米 80cc
(合計1合程度)
お好みの調味料:今回は醤油
砂糖、きな粉、小豆あんなど、お好みで。
★道具★
すり鉢
すりこぎ
クッキングシート
オーブントースター
★作り方★
1.たかきびは1日ほど水につけておく。
2.もち米は洗った後、30分程ざるにあげておく。
3.炊飯器に、1と2を入れ、1号の米を炊く時と同じ分量の水(炊飯器内釜の1合の目盛り)を入れて、普通に炊く。
(写真は炊き上がったものをすりこぎに移したところ)
4.すりばちに炊きあがった たかきび+もち米を移し、すりこぎで粒々をつぶすようにして搗く。
機械で搗くとなめらかなお餅になると思いますが、根性のない私が数分程度すりこぎで搗いたもので、たかきびのつぶつぶが残って、素朴といいますか、ちょっとワイルドです(笑)。もっと長い時間丁寧にすりこぎで搗いたら、もっと滑らかになるかと思います。
また上の文献にある赤餅は、もろこし粉から作ったり、専門の所で搗いてもらったりするようなので、実際はこの写真のものよりずっと滑らかで、たかきびの粒々は残っていないかと思います。その点、ご理解下さいませ。
★食べ方★
①まずは、つきたてに、お醤油をちょっと垂らして。
私が作った「おらがの赤餅」は一見ワイルドでつぶつぶは残っていますが、柔らかいです。
(数分程度のすりこぎでの搗きでも十分柔らかく美味しい)
クセが全然なくて、食べやすいです。もち米だけのものより少し歯ごたえがある感じです。
ぱくぱく食べられちゃいます
② 次に、残りをクッキングシートの上で薄く広げ、そのまま1日ほど乾かしました。
(写真は1日乾かしたもの)
表面は乾き、中はまだしっとりしているセミドライの状態ですが、これを食べやすい大きさにカットして、オーブントースター(1000W)で7~8分ほど焼いてみました。
それにちょっとお醤油を垂らして頂きましたが、香ばしくてとてもおいしい。
家族から「また作って」とリクエストがあったくらいです。
今度作る時は、もっとお餅をからからに乾かしてみたものを、焼いて食べてみたいです。
すり鉢とすりこぎで、手で搗くと量は沢山作れませんが、ちょっとしたおやつにはちょうど良い量かもしれません。
たかきびが手には入ったら、是非お試し下さい。
素朴な味わいで、実においしいです
また、実際に「赤餅」・「もろこし餅」を召し上がったことのある方、是非、教示頂けると幸いです。
(市川)
その中で「郷土食」の「赤もち」を最中に入れた創作和菓子がありました。
「古くから郷土食として親しまれてきたモロコシ原料の赤もち」の一文に、私はくぎづけ。
写真をみる限りでは、最中の餡の中にある四角いお餅は柔らかそうで、滑らかな感じです。
残念ながら、その日は時間が無くて、紹介されていた和菓子は購入出来なかったので、
坂東市の「赤もち」がどういうものかまだ知らないのですが、
「赤もち」という初めて知るお餅の名に惹かれて、調べてみました。
★もろこしとは?★
まず、「もろこし」とは、別名、「たかきび」「コーリャン」「ソルガム」とも呼ばれるとのこと。
・・・「コーリャン」という名は、中学・高校の頃の地理で、中国の農産物として習った記憶があります。
そして、中国のお酒「白酒(パイチュウ)」の原料・・・酒好きなので、ついそんな連想が(笑)。
余談は置いといて、大事なポイント。
「もろこし」という名前から、「とうころこし」や「きび」とも混同されやすく、
・もろこし/たかきび/コーリャン:イネ科モロコシ属
・とうもろこし:イネ科トウモロコシ属
・きび:イネ科キビ属
で、それぞれ違う植物です(Wikipedia「モロコシ」より)。
・・・勉強になります。
★「あか餅」について文献で調査★
さて、「もろこし」=「たかきび」を使ったお餅「赤もち」「もろこし餅」について手元の文献等で調べました。
すると以下のようにいろいろあるようです。
(1)農林水産省ホームページ 食文化 > うちの郷土料理 > 茨城県 赤餅(あかもち)
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/akamochi_ibaraki.html
こちらのサイトに、「赤餅」の写真とその云われや、原料の「もろこし」の写真があります。
こちらのサイトによると、
「鎌倉時代ごろ、阿弥陀寺中興開基安養上人が、「赤餅」の原料であるもろこしの種を生国である現在の群馬県より坂東市長須の地に持ち帰り伝えられたといわれている」
とのこと。
やはり、板東市の郷土食ですね!
また「もろこし」についても説明があり、
「もろこしは、イネ科の1年草で、夏になると穂がなり、秋の収穫の時期になると、赤紫色に変化する栄養価の高い穀物」で、
「稲や小麦が育ちにくい地域でも育てられることから、利根川、那珂川(なかがわ)、久慈川流域の農村地帯など、よく水害が起こる地域で栽培されていた」
とのこと。
昔の人々の生活の知恵が伝わってきます。
なお、こちらに紹介されている「赤餅」のレシピは、後述する(2)の文献(「いばらきの味-郷土料理献立集 食・彩・百・景」)から引用されたものです。
(2)「いばらきの味-郷土料理献立集 食・彩・百・景」(茨城県衛生部成人病対策課 編集・発行 1995年1月発行)
こちらは上記(1)の農林水産省の「赤餅」の記事の参考文献となっています。
旧 岩井市(現在の坂東市)の「赤餅」として紹介されています。
作った赤餅や、たかきびの実がたわわになった穂も写真になっているので分かりやすいです。
この写真から、やはり、ここでいう「もろこし」は「たかきび」なのが分かります。
材料: もろこし粉、湯、きな粉、砂糖
おおかまな作り方: もろこし粉に湯を入れ、耳たぶくらいの柔らかさになったら丸める。
それを茹でて、熱いうちに、きな粉をかける。
砂糖ときな粉を使うので、甘くして頂くお餅ですね。
(3)「聞き書 茨城の食事 日本の食生活全集⑧」(発行:社団法人農山漁村文化協会)
こちらの文献では、同じ「もろこしもち」の名で、県央畑作地帯、北部山間地帯、鹿島灘沿岸 それぞれの食として紹介しています。
ただし、いずれも写真がなく文章だけなので、「もろこし」が「たかきび」なのか実ははっきりしません。
① 県央畑作地帯の「もろこしもち」
概要:
もろこしは「もちもろこし」を使う。精米所で搗いてもらい、もち米と一緒にひやし、せいろでふかす。
3割くだいもち米を入れた方がいい。
搗きたてのうちにあんをまぶして食べる
残ったら円筒形にして輪切りにしておく。焼きながら、醤油、きな粉、あんをつけて食べる。
「冷めるとまずい」とのこと。
筆者註:ここでいう「もろこし」は「もちもろこし」という記述から、
もしかすると「きび」かもしれません。
きび(黍)には、お米と同じように、「うるしきび」と「もちきび」がある
とのことなので、「たかきび」でなくて「きび」を使った餅の可能性があります。
この書籍には写真がないので詳細は不明ですが。
② 北部山間地帯の「もろこしもち」
概要:
精白したもろこし二升と、もち米1升の割で搗く。
焼き餅にすると香ばしく、腹にもたれない。
また薄く切って干しもちにし、春先の間食やお茶菓子にする。
③ 鹿島灘沿岸の「もろこしもち」
概要:
寒中、もろこしを搗いて水にさらす。毎日水を取り替え1ヶ月くらいおく。
それを二、三日からからになるまで干して、それを石臼で粉にしたものを団子にする。
茹でてお汁粉に入れる。つるつるしておいしい。
もろこし粉を「もろこしの寒ざらし」というとのこと。
「赤餅」「もろこし餅」も、作り方も食べ方もいろいろあるようです。
★「おらげの赤餅」にトライ!★
で、とにかく、実際に作ってみました。
「もろこし」という名では売られていることは少ないようですが、
「たかきび」という名ですと、市販品もあり比較的手に入りやすいです。
私はつくば市内の自然食材のお店で購入しました。
昔はもち米の代わりに使われたとのことですが、現代ではたかきびの方が高級食材です・・・。
上の参考HPや文献にあるような粉は手に入りませんので、たかきびは粒のままもち米と一緒に炊いたものをすりこ木で搗いて餅状にして、作ってみました。
レシピも上の文献からも特に決まってはいないようなので、まずはトライ
「おらげの赤餅」ということで、今回のように作ってみました。
★材料★
たかきび 120cc
もち米 80cc
(合計1合程度)
お好みの調味料:今回は醤油
砂糖、きな粉、小豆あんなど、お好みで。
★道具★
すり鉢
すりこぎ
クッキングシート
オーブントースター
★作り方★
1.たかきびは1日ほど水につけておく。
2.もち米は洗った後、30分程ざるにあげておく。
3.炊飯器に、1と2を入れ、1号の米を炊く時と同じ分量の水(炊飯器内釜の1合の目盛り)を入れて、普通に炊く。
(写真は炊き上がったものをすりこぎに移したところ)
4.すりばちに炊きあがった たかきび+もち米を移し、すりこぎで粒々をつぶすようにして搗く。
機械で搗くとなめらかなお餅になると思いますが、根性のない私が数分程度すりこぎで搗いたもので、たかきびのつぶつぶが残って、素朴といいますか、ちょっとワイルドです(笑)。もっと長い時間丁寧にすりこぎで搗いたら、もっと滑らかになるかと思います。
また上の文献にある赤餅は、もろこし粉から作ったり、専門の所で搗いてもらったりするようなので、実際はこの写真のものよりずっと滑らかで、たかきびの粒々は残っていないかと思います。その点、ご理解下さいませ。
★食べ方★
①まずは、つきたてに、お醤油をちょっと垂らして。
私が作った「おらがの赤餅」は一見ワイルドでつぶつぶは残っていますが、柔らかいです。
(数分程度のすりこぎでの搗きでも十分柔らかく美味しい)
クセが全然なくて、食べやすいです。もち米だけのものより少し歯ごたえがある感じです。
ぱくぱく食べられちゃいます
② 次に、残りをクッキングシートの上で薄く広げ、そのまま1日ほど乾かしました。
(写真は1日乾かしたもの)
表面は乾き、中はまだしっとりしているセミドライの状態ですが、これを食べやすい大きさにカットして、オーブントースター(1000W)で7~8分ほど焼いてみました。
それにちょっとお醤油を垂らして頂きましたが、香ばしくてとてもおいしい。
家族から「また作って」とリクエストがあったくらいです。
今度作る時は、もっとお餅をからからに乾かしてみたものを、焼いて食べてみたいです。
すり鉢とすりこぎで、手で搗くと量は沢山作れませんが、ちょっとしたおやつにはちょうど良い量かもしれません。
たかきびが手には入ったら、是非お試し下さい。
素朴な味わいで、実においしいです
また、実際に「赤餅」・「もろこし餅」を召し上がったことのある方、是非、教示頂けると幸いです。
(市川)