「かきもち」というと、鏡餅など、乾燥した餅を割って揚げた、いわゆる「揚げ餅」を想像しますが、こちらは、同じ「かき」でも「柿」です。
「聞き書 茨城の食事 日本の食生活全集⑧」(発行:社団法人農山漁村文化協会)によると、
「『みょうたん種』の柿でつくるとよい」
とのこと。
みょうたん種の柿とは渋柿の一種のようです。
一般に渋を抜いた柿の方が、甘みは濃厚と聞きます
つづいて同書では
「霜がおりて木からもぎ、囲っておく。正月近くになるとべとべとしてくるので、片口などにいれてつぶす」
とあります。
秋の果物の代表の柿を使いますが、熟して柔らかくなった柿を使うので、正月明けの食べ物の位置づけのようです。
つぶした柿に「麦こがし」を「固まるくらい」たくさん入れて食べるとのこと。
そして
「つくってすぐ食べるより、一晩くらいねかせておいた方が、味が麦粉にしみておいしい」
とのこと♪
「麦こがし」は大麦を炒って粉にしたもので、「はったい粉」「こうせん(香煎)」「麦こうせん」とも呼ばれているものです。
つまり「柿もち」の作り方はとても簡単。
① 柔らかくなった柿の実をかき出して、さらにペースト状にする。
② そこに、お団子が出来るくらい硬めになるまで、麦こがしを加えて練る。
③ そして、そのまま食べても良し。1日ほど寝かして食べても良し。
簡単なのが嬉しい!
早速作ってみました
今回は、正月前に柔らかく熟した柿の実をペースト状にして冷凍保存したものを使いました。
また私の好みなんですが、ペースト状にした柿の実に、生姜(秋だったので新生姜)を刻んだものと、ふくれみかんの皮を刻んだものを少し加え、一度火を通して香りと風味をしみ込ませたものを使いました。

それに、麦こがしの香ばしさが加わって、高級和菓子に匹敵する美味しさ

しかも、とても簡単に作れる

秋に柿を食べるのが更に楽しみになってきました。
柿は少し置いておいて、あえて柔らかくさせて、この「柿もち」を作るのも良いですね。
秋に収穫した柿がまだギリギリ食べられる1月。
手に入らなかったら、今度の秋のお楽しみで。
簡単に作れて美味しいこの茨城の郷土食、是非ご家庭で楽しまれて下さい
(市川)
2021年、新年あけましておめでとうございます。
昨年2020年は新型コロナで大変な年になりました。引き続き先が見えない状況ですが、とにかく感染予防を徹底して、頑張りましょう。
当ブログ、ゆっくりですが更新を続けていく所存です。
よろしくお願い申し上げます。
さて、お正月ですので、正月料理ということで「がりがりなます」です。
霞ヶ浦沿岸、茨城県南から鹿行地域の郷土食です。
「聞き書 茨城の食事 日本の食生活全集⑧」(発行:社団法人農山漁村文化協会)によると、
南部水田地帯の食として、「がりがりなますは、正月になくてはならない料理である」
とのこと。そして
「大根を目の粗い『がりがりおろし』でおろして、焼いた小ぶなの身を入れ、酢であえる」とのことで、材料は大根、焼いた小鮒、酢が基本のよう。
「こぶなのかわりにわかさぎを用いることもあるが、小ぶなのほうがおいしい」
とのことです。
また以前、当研究会で郷土食アンケートをした時に、神栖にお住まいのNさんからも「がりがりなます」を教えて頂きました。
Nさんによりますと、「がりがりなますは、冠婚葬祭に出される」とのこと。
材料は、「だいこん、にんじん、フナ(酢漬け)」で、「フナはタコなどで代用」し、
「だいこんとにんじんは、鬼おろしでおろし、フナの酢漬けを加え、合わせ酢(酢、砂糖、塩)と混ぜ合わせる」
とのことでした。大根の他に人参も入れるのですね。
上記の本にある「がりがりおろし」は「鬼おろし」のことのようですね。
すみつかれを作る際に大根をおろすのも、鬼おろしが必須ですので、茨城では鬼おろしは必須アイテム
です(^^)
写真は我が家の鬼おろし。鬼おろしは竹製です。
伝統的には鮒(ふな)を使うようです。
冬のこの時期の鮒(寒鮒)は非常に美味しいものと聞きますが、残念ながら、私の住むつくばでは、なかなか手に入りません。
使う魚については、別の文献「食彩百景 いばらきの味 郷土料理献立集」(発行:茨城県衛生部成人病対策課)では、「酢漬けの魚」」となっています(こちらのレシピでは味噌も少々使用)。
更に別の文献「いばらきのおかず 郷土の食材と料理」(協力:茨城県食生活改善推進団体連絡協議会、発行:開港舎)では、鹿嶋市の協議会のレシピとしてタコを使っています(こちらのレシピでも人参が入ります)。
神栖のNさんも「タコでも代用」とのことでしたので、手に入りやすいタコもよく使われるようですね。
今回、私は、「聞き書 茨城の食事」にある「わかさぎでも作る」ということと、わかさぎはつくばでも手に入りやすいということから、「わかさぎ(煮干し)」を使って作ってみました。
また彩りと栄養も加わるので、人参も入れてみました。
※霞ヶ浦の「わかさぎの煮干し」は、煮干しと言っても柔らかい塩ゆでされたわかさぎです。
- 煮干しのわかさぎを、味醂と酢を合わせたものに漬けておきます。
煮干しなので既に塩味が強めについていますので、基本的に塩を加えませんでした。もし味見して足りなければ少しだけ塩を加える程度で良いと思います。
- 大根と人参を、「鬼おろし」(これが絶対のキ-ポイント
)でおろし、①を和えて出来上がり。
さっぱりして、滋味豊かで、美味しいです。
「正月に欠かせない」とのことですが、おせち料理で疲れた胃にはとても優しいですし、優しいだけでなく旨味のあるなます
です。
「わかさぎより小ぶなの方が美味しい」とのことですが、わかさぎでも大変美味しい。
…そうすると、小ぶなを使うとどれだけ美味しいのでしょう 小ブナ(それも寒ブナ)が手には入ったら作ってみたいと思っています。
おまけ。
人参を入れたバージョンと入れないバージョンの比較。
赤い人参が入るとやはり鮮やかですね。
(市川)
「うなぎ」といえば、やはり「蒲焼き」が一般的。
その「うなぎの蒲焼き」も関西と関東では、調理の方法が少し違うそうで。
ところが、霞ヶ浦沿岸地域では、伝統的に、うなぎは「煮うなぎ」、煮て食べる方法が一般的だったと、聞いたことがあります。
「聞き書 茨城の食事 日本の食生活全集⑧」(文献1)では、
うなぎ料理は、県央地区と鹿島灘沿岸地区の調理方法が簡単に紹介されています。
・県央(涸沼沿岸か)では、「いろりで焼いてから、醤油で煮る」
・鹿島灘沿岸では、「強い遠火で素焼きにし、身をほぐして、砂糖・醤油で煮る」
どちらも、
① 焼いてから、
② 醤油(と砂糖)で煮る
のが、伝統的な食べ方で、やはりごちそうだったようです。
(文献1では「うなぎはいったん焼いた方が美味しい」と耳より情報も)
さて別の文献「食彩百景 いばらきの味―郷土料理献立集」(文献2)では、
出島村(現在のかすみがうら市出島地区)の食生活改善推進協議会が、「うなぎの帆引き煮」というレシピを紹介しています。
こちらのレシピでは、焼かずに醤油・砂糖・酒で作ったタレで煮ます。
※こちらの詳細なレシピは、農林水産省公式ホームページの中の「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」で紹介されています(参考サイト1)
どちらにしても、全国一般的な「うなぎの蒲焼き」(関東風は蒸してから焼く、関西風は蒸さずに焼く)とは違う調理法ですね。
実際、「うなぎの大和煮」「うなぎの佃煮」が、霞ヶ浦周辺エリアの名物
になっています。
写真は、土浦市の常磐商店さんの「うなぎのやまと煮」
歯ごたえがあって、噛むと、蒲焼きとはまた違う味わいのうなぎの旨味が、甘辛味とともに口に広がります。
ご飯にも日本酒にも合います。
同じ「うなぎの大和煮」「うなぎの佃煮」も、地域やお店で少しずつ違うかもしれませんね。
食べ比べも楽しそうです
●参考文献
1.「聞き書 茨城の食事 日本の食生活全集⑧」 農文協
2.「食彩百景 いばらきの味―郷土料理献立集」 茨城県衛生部成人病対策課 編集・発行
●参考サイト
1,農林水産省 「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」 茨城 うなぎの帆引き煮
※ レシピは文献2が引用されています。
(市川)
2019年・令和元年も、いよいよ年の瀬。あと数日で大晦日。
大晦日といえば、年越し蕎麦ですね。
ということで、先に江田さんが書いてくれた、つくば市の土浦野田線沿いにある日東農場さんの「けんちんそば」の話の続きです(^^)。
江田さんが既に詳細に書いてくださっているので、特に私から加えることはないのですが、やはり、こちらのお店の「けんちんそば」の特色は、
1.味噌味ベース
2.こんにゃく
かなと思います。
江田さんと一緒に食べに行ってますので、写真は前回の記事と同じです。
私は「けんちんそば」には詳しくはありませんが、醤油仕立てのお汁が多いと思います。今までいくつかのお店で食べたものがそうだったので。
ところが、こちらは味噌仕立てのお汁。
味噌味も美味しいですね!
そして、市川が一番気になっている、そして気に入ったのが、こんにゃく!
食べてみると分かるのですが、これ、
「凍みこんにゃく」
だと思います!
茨城県北が誇る、伝統食材の「凍みこんにゃく」
生産者さんが激減して、今や希少な食材。それが使われいる
ただこんにゃくを冷凍して解凍しただけでは、この歯ごたえと風味は出ません。
(自分で試したことあります)
独特の歯ごたえ、そして、凝縮された「こんにゃくの旨味」
味のないこんにゃくにも、ほのかに旨味が感じられるのが、この「凍みこんにゃく」だと感じます。
こちらのお店の、「けんちんそば」は、伝統商材「凍みこんにゃく」も使っている、
堂々の
茨城のそば
だと思いました!
【追記】
先の記事は、11月上旬の時のものです。その後、12月下旬に再訪して食べた時は、具にはキノコ類はなく、ゴボウ、大根、人参の根菜類と里芋がたっぷりでした。
多分、季節によって具も変わるようですね。
ただ、こんにゃくは残念なことに普通のこんにゃくでした。
凍みこんにゃくが在庫切れか、はたまた味の分からない客が『こんにゃくが変だ』と言ったのか(違うと信じたい)。
貴重な食材なので、なかなか難しいかとは思いますが、凍みこんにゃくの復活を祈ります。
(市川)
皆様、こんにちは♪
久しぶりの江田の投稿です♪ いつもパートナーの市川さんに”おんぶにだっこ”(この表現ふるっ??)で、このブログが成立しております(心から感謝です<(_ _)>)が、今回は江田が♪
ただし、ご紹介するお店にはご一緒に伺いました。
寒くなってくると温かい汁物が欲しくなりますが・・・
嬉しい事に茨城の郷土料理に「けんちん汁」があります
そこで、蕎麦の季節にもなったしと、パートナーの市川さんと「けんちんそば」を食べに行く事にしました
それはもう、うきうきで・常陸秋そばのお店、日東農場さんに行きました。お店に入ると学食みたいにお盆をもってカウンターを進んでいきながら、注文をしていく作りで、左右2レーンあり、左がわがそば、うどん。右のレーンは中華料理となっていました。
けんちん汁の始まりは、中国の普茶料理(ふちゃりょうり)の巻繊(けんちん)が起源とされていて、巻繊(けんちん)とは、根菜類(大根、人参、ごぼう)や豆腐などを油で炒めて、湯葉などで巻いてあげた料理だったらしい。
メニュー様々ある中、選んだのはもちろん「けんちんそば」ですが、温かいかけそばのけんちんそばと、冷やし麺を温かいけんちんのつけ汁につけて食べる2種があり、両方食べてみたいので、市川さんが冷やしのつけ、江田が温かいかけとしました。
レーンで注文する時、「みそ?しょうゆ?」と聞かれ、「え!!けんちんに、味噌味があるんだ」と内心ちょっと驚き、そちらを注文
呼ばれて取りに行ったのが写真のこの2つ! 待ってました♪
上の画像1枚目が、温かいおそばで、「おいしい!!!」温かい蕎麦はお汁の味がしっかりついて、けんちんのたくさんの具との組み合わせが、バランスが良く・・・
そして2枚目は冷たいおそばです。これはつけて頂くわけですが、こちらは、おそばそのものの香りや美味しさが、全面にでてきます。蕎麦好きにはたまりません
なお具材はどちらも同じで、大根、にんじん、きくらげ、ごぼう、ねぎ等を小さく切ったものになります。こんにゃくはかなり、小さく、薄く(写真)・・きのこの香りがとても効いていたのですが、入っていたきのこはなんと、なめこ(写真)でした。一瞬ではなめことわからないくらい大きいのが・・・
ということで
あ~美味しかった!ごちそうさまでした
是非、茨城ならではのけんちんそば♪ 皆様も(^^♪
(文:江田)