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エロと野望小説 【地獄極楽この世にあり】1 復員

2024-07-08 16:48:57 | 小説
終戦翌年の昭和21年5月・・
 
九死に一生を得て命からがら 酷寒の満州から 祖国日本に引き上げてきた 
 
しかし焦土と化した 故郷
祖国の地に再び戻ることができたが 復員兵の多くがそうであるように
 
二人の復員兵は 失意のどん底に突き落とされた 
これからどんな希望をもって生きて行けと言うのか・・
 
物語はそこから始めます 長編小説になる予定
他の小説の執筆も愉しみながら ゆっくりと書いていきます(^-^)
 


昭和21年5月

終戦の翌年だった  二人の復員兵が上海から祖国に向けての引き揚げ船に乗船していた

復員軍人が甲板にも テントを張り 溢れかえっていた

出港して半日も経っただろうか 髪は乱れ髭がぼうぼうの復員兵が 7,8人、突然取り巻いた

【中尉さんよ・・ずいぶん世話になったな 船から降りてもらおうか・・】

そいつらの 眼光は 殺気に満ちていた 全員が部下だった

【なんだ! おまえらは 俺に降りろと?】

【そうだ 天気もいいし 水泳訓練だ・・】と一人が嗤うと どっと沸く

(リンチか・・) 

村木中尉は士官学校を出て内地で入隊し 満州事変後

不穏な動きのある  ソ満国境に近い守備隊に中尉として赴任した 

部下を80人程束ねていたが 

新兵や初年兵を軍事教練し 鍛えるために殴ることもしばしばあり それを恨みを もったのも少なくない

こうして 帰りの復員船から 上官や指揮官が 海に放り込まれているという噂も聞いていた

【僕は軍規に従いそれを忠実にしていただけだ それをとがめられる筋合いはない!】

じわじわと 包囲を縮めてくる手には こん棒も持った奴もいた

死にやがれ!と叫びながら 一人が殴りかかってきた 僕は身をかわし そいつの顎にこぶしの一撃を加えたが

二人が襲いかかってきて 両手をつかまれた それを巧みに 振り払い甲板上に殴り倒した

陸軍士官学校出は伊達ではない 身長は175センチ足らずだが腕っぷしは筋金入りだ・・

この野郎やっちまえ!・・・こん棒を振りかざした男が前に出てきたのを合図に5人が飛びかかってきた

多勢に無勢・・さすがに その場で袋叩き・・

(くそ・・ここで死ぬのか・・)

その時だった 

【おい、お前ら やめろ! ソレ以上やると 撃ち殺すぞ!】

ピストルを手にして 銃口を向け 仁王立ちした男が一人・・

【中尉殿は身を挺して貴様たちを上海にまで 送ってきたんだ 本来なら八路軍の餌食にされていたんだぞ

その恩義を忘れてこれはなんだ! 私的制裁は戦争が終わっても禁止されてるんだ 軍法会議もまだ あるんだ! それとも射殺されたいのか!】

その男こそ 部下で 衛生兵の 前島軍曹だった

襲った兵隊たちは 蒼くなった

おい冗談だぜ 撃つな・・・と すごすごと 散った

【前嶋君、ありがとう 命拾いしたよ 】

中尉は唇からの血をぬぐいながら礼を言った

【村木中尉殿 大丈夫ですか? 私が中尉殿をお守りします!】

四角い顔した大柄の前嶋は中尉に包帯を差し出した

【お、まだ、救護品をもってたのか?・・】

【はい! ピストルも隠し持ってくすねてきました(笑)】

村木中尉とは同郷の大阪で それもごく近いことを知り 親近感を覚えたのか 上下関係など意識せず 兄弟のように
可愛がってもらっていた

僕は前島立夫 28歳、 村木中尉は30歳だった

船は長崎に着き・・今度は列車に乗った 途中の列車から見えるものは 一面の焼け野原・・
広島を通った時は その惨状に出る言葉もない・・
(この分だと 大阪も こんなものだろう・・もっとひどいかも・・)
 
村木中尉は結婚をしていたが戦地で妻の裏切りを知った。
幼子を棄てて他の男と乳繰り合っているという内容の手紙が届いたのが最後だった
村木中尉の事を 気の毒なことだと思ったが、世の中なんてそんなものだろうと思った
 
立夫は結婚せず独身だった 
【戦いの前線にいくんだ・・命などねーかもな・・】
自暴自棄になり女とヤリまくってから召集に応じて満州に渡ったのだ
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