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エロと野望小説 【地獄極楽この世にあり】 2 地獄の惨状

2024-07-08 16:54:41 | 小説
 


一日以上かけてようやく神戸に着いた

夕闇が迫る中で見えるのはバラックの群れと焼け落ちたビルが


その間にポツポツ・・無数の煙がそのバラックから立ち昇っていた

飯焚いているんだろう・・明かりがところどころに見えるが 電柱から盗電してるのだろうか

三の宮にさしかかると 山手の一帯があかるい そこだけは潤沢に電気が来ているのだ

芦屋川という看板が見えた


【ここは財閥系の住むところですよ 爆撃も免れてるようだし・・くそ! いい気なもんだ 中尉殿 豪華な屋敷がみえますよ・・】

前島が 指さす方向にそれらが・・建ち並ぶ

バラック庶民の 食うや食わずの暮らしから見たら雲泥の差だ・・

前島もそうだが村木だって同じだ 財閥や軍閥に憎悪を燃やしていた 

226事件の時 決起の一員として 自発的に参加した それというのも 東北冷害で多くの貧しい農家に

娘を売ることをせまり 年季奉公名目で 女郎に売り飛ばしたのも 陰で糸を引いていたのも 奴らだったからだ

それに義憤を覚え、村木は決起に参加した

時の政権は 軍閥が支配し 天皇を頂点とする本来の君子制度をないがしろにするものがあり それを本来の皇道に立ち返えさせるという大義に燃えて決起したのだ

それが反逆罪という思いもかけない逆賊の烙印を押され失敗に終わった 

加わった罪は軽からずということで 僻地のソ満国境に左遷送りのハメに・・

終戦の詔勅のあとの武装解除の指揮に従ったが丸腰の日本兵に 数々の修羅場に見舞われることになった 移送団に加わる上海までの道のりは 夥しい死者を出しながらの 地獄の日々・・・ そんなことになったのも みんな財閥 軍閥のせいだと憎悪したのだ

大阪に着いた

(駅の子)といわれる浮浪者 傷ついた傷痍軍人 あるいは 闇屋といわれる買い出しの人の波でごった返していた

戦災孤児が 物乞いなのか 次々と手を出してくる 真っ黒な顔に目だけが白くギョロギョロ

どの子も雑巾のようなボロをまとっている 立って動いている子はまだいい 駅の内外にうずくまって 生きているのか死んでいるのか分からない それを誰もが気にもしてない

(地獄だ・・)

前島も 村木も目前の光景に同じことを思った

【中尉殿200円にしかならなかったです】

両替所で新円交換してきて 村木に告げた 二人で家が一軒建つほどのお札を持っていたが それが

公務員の一カ月分程度の給料にならないとは・・・

【そか・・仕方ないな・・】

腹が空き 5円のラーメンを注文したら2杯で10円!

十三行きの市電に乗るために 二人で30銭払った 十三は二人の親戚があるにはあるが、
 
前嶋は実家を飛び出しているし 村木だって妻に裏切られている
 
そうは言っても 生まれ故郷だ アテらしいものはないしとりあえず尋ねてみることにしたが

この調子だと数日で一文なしだ・・なんとかせねば なるまいと思った 
路面市電を颯爽と抜いて走る車があった・・ それに 黒髪の白い肌の女が見えた

高価そうな着物を着た 若い女・・髪には簪が光っていた

(この時節になんだ、あの女は!どこかの金持ちの娘だろう・・) 前嶋はワケもなく腹が立った・・

【戦争がおわって財閥が解体されたと聞くが 全然変わってないようだな】・・村木がその車を目で追いながら 言うと

【みたいですね・・こんなこと許されていいんですか!】前嶋が 怒ったように言う

【中尉殿 満人の娘はよかったですよ・・・ヤリまくり しまいにヨガってさ・・】(笑)

【あはは 立夫はホント好きだな 落ち着いたら それを再開したいのかい?)(笑)

【はい!もう下の息子が 元気良すぎて】

思わせぶりな 村木の言葉に スキモノの前島がニンマリした・・

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十三で下車した ご多聞にもれず ここも焼け野原・・すっかり日が落ちているが

同じ光景ということが分かる・・

真っ黒な焼け焦げた瓦轢やゴミがうず高く積まれていて そのせいなのか 悪臭がたれこめている

排泄とか腐った臭いなのだ・・

消息や安否を書いた立札があちこちに立っていた・・
 
あまりの変貌ぶりに言葉もない
 
【中尉殿 一旦体を休める場所に行きませんか‥これからの方策はそれから考えましょうや・・】
 
親や親せきたちを訪ね歩くにも疲労困憊だったし 限界が来ていた。
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