屏風のかげ、「心を奪う」と屏風のかげに誘われる
(平凡社 『世界大百科辞典 2』 初版)
あるリサイクルブック店での経験
つい最近、読まなくなった古い本、30冊くらいを、大手の本のリサイクル販売店に持って行ったときのこと。
カウンターで若い女性の店員に「これ、買ってくれますか」と言うと、店員は査定しますと言って店の奥に持って行った。1000円位にはなるかなと思って待っていたら、戻った店員曰く、「これとこれは1冊10円、こちらの本は1冊5円」、「お客様、170円で買取ります」。
これを聞いた瞬間、馬鹿にされたような気持ちになり、ムカッとした。店員はマニュアルに定めたとおり行動したのであろうから、間違いはない、落ち度もない。だが、味もそっけも何もない。この店員とこのように店員を教育する この店、この会社の、なんとも言えない浅さ、軽さにがっかりした。
あなたが読んでいるものは、どれもこれもゴミのようなものと馬鹿にされたような気分になった。“売るもんか!”と思った私は一言、「持って帰ります!」と答えたら、店員はあっけにとられた表情をしていた。
思いがけない客の返事に返す言葉が出ないようだった。マニュアル人間の底の浅さが、また見えた。
後日、これらの本は、古新聞とともに市のゴミ収集日に出して処分した。
「餡」がなければ うまくない
見かけはよいが不味い菓子「胡麻胴乱」
江戸時代の文化文政年間 (1804~1830)、江戸に「胡麻胴乱」という菓子があった。
外見はうまそうだが、餡が入っていなのでまずかった。見かけはよいが、内容が伴わないもののたとえを「ごまかし」というようになった。騙して人目を紛らわしたり、外見を取り繕っても、相手に見破られてしまう。
ガマの油売り口上を演ずるのも同じだ。覚えたセリフをただペラペラしゃべるだけではつまらない。
覚えた知識を披瀝して悦になるのは見苦しい。キザな文言・アドリブは避けねばならない。
歌舞音曲などは、レベルが高いもの程、演者が観客にゲラゲラ笑いや拍手喝采を求めない。
相手に喜んでもらうために媚、諂うことは見苦しい。相手は、何を求めているのだろうか。紛いものか本物か。
見る人、聞く人の目は肥えている。偽物、まがい物はすぐ分かる。
行動は、言葉がなくてもそれ自体多くのことを物語る。
どんな行動であっても、そこに自分の心を反映させていれば、心ある人は、その行動の意図するところをはっきり理解してくれる。相手に伝えたいことは何なのか。「自分(の虚栄心)」なのか「心」なのか、考えねばならない。
「心」は自ら体得するもの
筑波山神社の神様は (人を迎える)心を大切にする。口上を演ずるときは、何をさておき(人を)迎える心を持つ、心に “マニュアル”を持っと良い。
この ”マニュアル” は、書籍のように文字で表現されたものではない。旅館の女将は、マニュアルを見なくても臨機応変、どのようなお客さんでも、もてなすことができる。このような“マニュアル”を身につけたらよい、口上が上手くなりたいなら「心」を学ぶことだ。
「心」、「心おきなく」「心配り」「心ある」と、「心」で始まる言葉はたくさんあるが、「心」は上から下に伝わるもの。子供が親に「心」を教えることはできない「親心」。これを教えてもらえる人もいる、教えてもらえなし人もいる。大切なことは、自分で学び体得することなのだ。今日は、心を込めてやってみる。ガマの油売り口上の演技も これが大事だ。
障子に映った影・・・・・・。
研鑽を積んでも 「色恋」 の世界に及ばない。
巧妙な心理の駆け引きが必要だ。
人情の機微を知らなければ実らない。
藤原千恵子編 「江戸っ子のたしなみ」 河出書房新社
心が通うようにする
●「心」が通う、「心」通う
●「心」が弾む
●「心」が解ける
●「心」ときめく
●「心」を許す
●「心」温まる
●「心」を通わす
●「心」を奪う
●「心」の丈
喜多川歌麿「ねがひの糸口」
吉原の待合でくつろぐ遊女と愛人
心が通じていないと こうはならない。
新潮社 『芸術新潮 2003年1月号』
心に残る口上を演じる
●「心」を奪う
●「心」を躍らせる
●「心」を引く
●「心」を許す
●「心」を寄せる
気配り、細心の注意をもって
●「心」が届く
●「心」行くばかり、「心」行くまで
●「心」を致す
●「心」を入れる
●「心」を傾ける
●「心」を砕く
●「心」を配る
●「心」を遣う
●「心」を尽くす
●「心」を用いる
●「心」を掛かる
●「心」を向ける
●「心」に浮かぶ
●「心」に留める
●「心」に残る
媚 諂い、ごまかし は禁物
●「心」内にあれば色外に現る
●「心」内に動けば詞外に現る
●「心」と口と違う
●「心」ならずも
●「心」にもない
●「心」の外
●「心」は顔に似ぬもの
泰然自若、虚心坦懐で臨む
●「心」を臍の下に納む
●「心」を虚しうする
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