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映画批評etc

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時計じかけのオレンジ

2008年12月11日 | 映画(タ行)
★1971年公開

★キャスト
マルコム・マクドウェル

★スタッフ
監督 スタンリー・キューブリック
原作 アンソニー・バージェス
脚本 スタンリー・キューブリック
音楽 ウォルター・カーロス

★あらすじ
傍若無人な少年の理由なき反抗。そこには強姦あり、超暴力あり、現実からの逃避行ありで・・そんなギャング一団のリーダー、アレックスのその後を追ったストーリー。

★寸評
キューブリックの真骨頂とも言える映像美学が結晶した作品。
全編を通じて、シニカルな台詞と毒気に満ちた映像が吐き出される。

本作のウルトラヴァイオレンスに対して、嫌悪感を感じる向きもあるようだが、それは好みの問題である。
暴力描写を以って作品の好悪は決められても優劣は決められない。
それはタランティーノの作品群を軒並み否定するという暴挙に繋がるわけだから。

台詞は実によく練られている。
スタイリッシュな台詞である。

「わけなしのトルチョック制裁にはうんざりだよ」

実にクールな台詞である。

インテリアデザインや音楽、衣装に小道具全てが毒に溢れた秀逸である。
特に主人公のアレックスの前半の衣装と小道具。

30年を経過した今、本作がスタイリッシュであるということが通用していること自体がほとんど奇跡と言える。

キューブリックの作品のテーマは実に深遠だが、本作もまた例外ではない。
近未来のロンドンを舞台としているが、実のところ、現代の日本とも相似している。
所謂、若年層による凶悪な犯罪、政府と反政府運動家の世論操作、洗脳の恐怖などのモチーフが時にコミカルに時に絶望的に描かれる。

実は続きがあるらしく、wikipediaからの引用が以下。

第21章では元に戻ったアレックスが再び新しい仲間たちとつるむ生活に戻るが、ある日かつての仲間の一人と再会し結婚して子供も生まれたことを聞く。アレックスは自分も18歳になったことだしそろそろ女でもつくり落ち着こうと考え、暴力から卒業しようと決意する。しかし一方で、かつて犯した犯罪は全部若気の至りだと総括し、子供時代にはだれでも避けられない道だろう、おれの子供にもいつか若い頃の話をするだろうけど暴力の道に進むことを止めることはできないだろう、とうそぶく。

これが描かれるとまた、印象の異なる作品になっただろう。
が、ラストの疾走感は若干鈍る気がする。

いずれにせよ、この時代にこの作品が存在することは奇跡であり、テクノロジーに依らずとも良作は生まれることを実証している。


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