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手紙

2009年03月30日 | 映画(タ行)
監督 生野慈朗
原作 東野圭吾
脚本 安倍照雄
キャスト
   山田孝之
   玉山鉄二
   沢尻エリカ
   吹石一恵
あらすじ
武島剛志は高校3年生の弟である直貴が安心して大学へ行けるような金が欲しくて資産家の老婆の家へ家宅侵入・窃盗を行なうが、老婆に見つかり衝動的に殺人を犯してしまう。そのために、直貴は「強盗殺人犯の弟」という目で見られ続け、就職も何もかもできない。

寸評
佳作である。
まず、キャスト陣は健闘している。山田孝之は流石に陰気で無口な役は巧い。玉山鉄二はまあまあ良い。
女優では沢尻が巧かった。彼女は現在、パブリックイメージは最悪かもしれないが、実力は折り紙つきであり、安心して見られる高い技術の持ち主である。関西弁は全くなっていないが、そこを気にするのは関西弁が喋れる地域の人のみだろう。
吹石一恵はどうだろう。キレイな女性のイメージの役で作っているようだが、セリフや表情など全部雑である。
しかし、メインキャストで気になったのは彼女くらい。
他は脇役も含めて、良い。

さて、台本だが、社会派の内容であり重いテーマである。
しかし、本来暗いテーマをストレートに重く描いている。
役者の得手不得手もあるだろう。
この描き方でこの作品に関してはそれほど間違っていない。
下手に軽くしようとしたら失敗しただろう。
大事なテーマとしては、犯罪加害者の家族に降りかかる悲劇なわけで、そこは痛々しくも伝わってくる。

ところで、主役が取り組む趣味は、原作ではバンドマンだが本作では芸人である。
これはそれほど気にはならない。
山田孝之が漫才をするのはあまり巧くはないが、まぁいいだろう。
むしろラストで実にいい演出になっていた。


沢尻の七変化は良い。
常に自信に溢れた、信念のある役である。


しかし。

ここで大事な点としては監督がテレビ出身ということである。
非常にテレビっぽい。
スケール感が出ないのだ。
画面全体に奥行がないといったほうが正確か。

場面次第で、もっと巧く演出すればスケールのある画が作れる筈が、それが無い。
動きのあるシーンは無いわけではない。
これは製作費なり、演出の芸の無さなのだろう。
そこが残念である。

だから結果、ドラマでいいんじゃないかとなってしまう。