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カールじいさんの空飛ぶ家

2009年12月22日 | 映画(カ行)
★2009年 アメリカ

★スタッフ
監督
ピート・ドクター
ボブ・ピーターソン
製作総指揮
アンドリュー・スタントン
ジョン・ラセター

★あらすじ
ピクサーによる記念すべき第10作目。老人が抱き続けてきた夢をかなえるため、驚くべき方法で冒険の旅に出る。ファンタスティック・アドベンチャー。ピクサー初のディズニーデジタル3-D(TM)版も公開。

★寸評
PIXAR作品のブランドイメージは大人から子供まで楽しめる娯楽作品である。
今回は主人公を老人にし、共感を得られにくいかと危惧していたが、さすがPIXARだ。
テーマは普遍的で、子供・夢・冒険ファンタジー・心の通い合いなどを随所に散りばめた作品になっている。
しかし、この邦題、いかがなものだろう。
原題は非常にシンプルに「UP」だ。
これに比して邦題はジブリそのものである。
その方が売れる作品になるという日本側の判断だろう。
この邦題だと、作品自体を小さな枠に縛ってしまわないだろうか。
原題の非常にシンプルでポジティヴなイメージからは程遠いタイトルだ。
ジブリ作品に対するリスペクトと捉えるべきだろうか。
販促のためとはいえ、あまり賛同できない。

本作では、家が空を飛ぶのは重要な設定だが、この作品はファンタジー色が薄いし、魔法も怪獣も出てこない。
社会的弱者の老人とアジア系の肥満児が主人公だし、美少女もイケメンも出てこない。
描きたかったのは日常的行動からの大きな飛躍だろう。
主人公周辺のキャラクター群は犬も鳥も少年も皆、自分の能力以上に、良心に従った飛躍的行動をする。

これが爽快感を生み、物語に躍動感を与えている。

ところで、宮崎駿が本作を見て、
「実は僕、『追憶のシ-ン』だけで満足してしまいました」
というコメントを出している。
この言葉尻を捉え、最初10分だけで本作の良いところは終わり、という口コミも見られる。

一理あるのかもしれない。
子供が見ることを前提に加えると、あまりにも感傷的過ぎるし、これだけでは満足してもらえない。
そこに、やや設定上無理をしてでも痛快さや高揚感を入れなくてはいけない。
そこには成功しているのではないだろうか。
そもそも冒頭の追憶シーンは設定の説明のシーンなのだ。
にも関わらず、説明的と感じる部分はなく、それどころか出来が良すぎて本編の中に食い込みすぎたのだろう。


ところで、設定上の無理は気にするとキリがない。

・あの冒険家は何歳だ?
・カールじいさんの体力が異常に回復
・そもそもカールじいさんとはあまり呼ばれない
・冒険家の扱いがぞんざい

といったところは気になった。
が、これらを以て本作の価値を貶めるのは少し勿体無い気がする。
これは、原題の「UP」という響きがそれらを解決してくれるような気がする。



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