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映画批評etc

映画の感想ではなく批評
その他諸々

ハンニバルライジング

2009年04月13日 | 映画(ハ行)
監督
ピーター・ウェーバー
出演
ギャスパー・ウリエル
コン・リー
リス・エヴァンス
ケヴィン・マクキッド
スティーヴン・ウォーターズ
リチャード・ブレイク

あらすじ
幼き日のレクター博士。第二次世界大戦のさなか、レクター一家は戦禍を逃れ山小屋に退避するが、やがてドイツ軍とロシア軍の戦闘に巻き込まれてしまう。両親は死亡、生き残った幼い兄妹だったが、その後彼らに降りかかる悪夢のような出来事… ハンニバルの心には決して癒すことの出来ない深い傷が残るのだった。トマス・ハリス原作のハンニバルシリーズの本作は、原点に回帰し、怪物誕生の秘話が綴られる。


寸評
復讐劇&サイコサスペンスとしては面白い。
残念ながら本作は、他作品との比較などからは逃れられない。
なぜなら、主人公が映画史上に残るサイコキャラクターである、ハンニバル・レクターだからだ。
どうしても過去の作品との比較なり対比の議論が生まれる。

私も過去の作品を抜きにして、本作を観られたのか、どうも自信が無い。
ただ、詰らないとは思わなかったのは事実である。
羊たちの沈黙ありきの作品で、単品では楽しめないものだったかどうか。
これがまず、重要。
そうでなくてはフェアな批評にならないからである。
あと別の視点では、このシリーズのファン(?)が満足しうる作品になっているかどうか、である。
どうもそうでもないらしい。

まず、日本のテイストが邪魔。
何故異様な日本人を出したか。

次にレクターは天才云々の設定があるが、この作品では見られない。
すなわち凶悪な復讐者なだけ。
しかもかなり逮捕されそうな痕跡は一杯残して殺人を行う。
当時、科学捜査が今より稚拙だったとしてもさすがにバレるんじゃねーか?と思う。
単に凶悪なだけなのだ。
ハンニバルの知性や残虐性があまり見受けられなかった。

ここら辺が残念だ。

役者はいい。
本作で初めて観た、ギャスパー・ウリエルの美しくも不気味な演技は悪くない。
三白眼になりすぎで、幅はあまりないんだけど。
コンリーは美しい。
日本人じゃないのに日本人を演じてるのは、日本の女優に適任者がいなかったんだろうか。

及第点の作品ではあるが、シリーズのファンでなければ特別観る必要性は感じない。


ニライカナイからの手紙

2009年04月13日 | 映画(ナ行)
監督
熊澤尚人

キャスト
蒼井優
平良進
南果歩
金井勇太
前田吟
斉藤歩

あらすじ
竹富島で、父の死後、郵便局長であるオジイと2人で暮らしていた風希。毎年誕生日に、東京で暮らす母から届く手紙は、風希を励まし、勇気づけ、彼女にとって何よりの宝物であった。いつしか亡き父のカメラを手に写真の練習を始める風希。14歳の誕生日に20歳になったら全てを話すという内容の手紙が届き、その約束を信じる風希は高校を卒業して上京する。そして20歳の誕生日がやって来る。

寸評
まず、竹富島の映像が美しい。
蒼井優がその映像に美しく映える。

設定はどうってことない。
一人の健気な少女の静謐な物語である。
田舎の郵便局に勤める祖父と倹しく暮らす少女。
その少女を支えながら秘かに思いを寄せる少年。
東京に出て写真を撮りながらもまだ見ぬ母を探す。
吉祥寺の町。

蒼井優の独壇場である。
蒼井優の、繊細で丁寧な演技は光っている。
この女優の存在なくしては成立し得ない映画であろう。

他の出演者は殆どが素人だ。
そしてオジイはちゅらさんのオバァ役で有名な平良とみの夫だ。

ところで。
これ、学生時代に見るべき映画なのではないだろうか。
大人が見て、どうこう考える映画ではない。
青春の甘酸っぱい要素が多く詰まっている。
すなわち、青春時代特有の不安感、将来への漠然とした希望。
母親に対する複雑な感情。

他には親の立場で、この健気な少女を見ると、別の味わいというのもある。


大人のおっさんの視点で見ると、矛盾なり突っ込みどころは出てくる。
が、これはこの映画本来の意図しているところではない。
一番おっさんが気になるのは、風希が母と別れて20才になるまでの13年間、母親の消息がわからない、という設定だろうな。

電話は?
番号知らないのね?
母親の葬式って島でやんなかったの?
だから島の人は誰も知らなかったのね?
いや、知ってるみたいだな、じゃ誰も伝えなかったんだな。
よく隠し通せたもんだ、13年も。



などと、考えてる時点で野暮だ。
製作者の意図を素直に汲み取れないのがおっさんだ。


やたらと出てくる「郵政」の画が「?」となってしまうが、これはなんだろう。
公開時期と郵政民営化法案と重複するが関係あるんだろうか。



総評、良作である。
蒼井優の芝居だけでも観る価値はある。
加えて、竹富の夕暮れや二人の住む家、全体を覆う淡い色彩、どれもが甘酸っぱい。
爽やかな清涼飲料水を飲む感触である。