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2009年09月11日 | 映画(ワ行)
2006年【米】

監督 オリヴァー・ストーン

キャスト
ニコラス・ケイジ
マイケル・ペーニャ
マリア・ベロ
マギー・ギレンホール

あらすじ
2001年9月11日。港湾局警察に勤めるベテラン巡査部長のジョン・マクローリンとウィル・ヒメノは、普通に業務を開始した。だが、午前8時40分過ぎ、突如、タワー1に、アメリカン航空11便が激突した。続いてタワー2にも、ユナイテッド航空175便が激突。

寸評
今日で「911」から8年だ。
本作はあの事件の日、救助に向かい生還した警官を描いた作品。
監督はあのオリバーストーン。
だが、結果としては残念な作品だ。
まず、作品単体として観て、盛り上がりに欠ける。
と言うのも、実話をベースにしているため、フィクション要素を入れられないのだ。
フィクションを入れるにはまだ時間が経ってなさすぎるのだ。
だからあと数年経っていればもう少し面白く作れたかも知れない。

別に面白くなくても、資料として興味深い作品はある。
「こんなことあったんだー」という新発見に繋がるような知的興味を誘う作品は存在する。
が、この作品にはそれも無い。
「ふーん。そりゃそうだわな」
くらいにしか思わない。


かつて左翼として名を馳せたオリバーストーンの政治的主張は特に無い。
ヒス気味の家族を淡々と描く退屈なシーンと痛々しい生き埋め寸前の警官のシーンが続くのだ。
こんな残念な話は無い。

あと、911について。
確かにテロは許されることではない。
が、「テロじゃ世界は変わらない」
というのは嘘だ。
この事件では残念ながら世界は大きく変わった。
アメリカは政策としてアフガン侵攻、イラク侵攻という2つを選択した。
これは明らかに911の生んだ副産物だ。
時代は明らかにこのテロによってミスリードされた。
そしてアメリカは歴史を知らない国ゆえ、攻撃を受けたら反撃を行うという、原始的な政策しか知らない(これをネオコンとか呼んでいたが名前ほど立派なイデオロギーには思えない)。
テロで世界が変わってしまったということをまず認識する必要がある。
そして、この変化を選択したのだということも忘れてはならない。
以前の小泉首相はテロに対する報復を支持した。
これは明白な憲法違反である。
それを国民は支持したのだ。


次、911という事件は現象としてはどうだったのか。

テロ組織アルカイダがハイジャックによる同時多発テロにより、民間人含め三千人の死者を出した事件。

アメリカは海に守られ、他国から国土を直接攻撃されたことが独立以来ない。
歴史として持たない。
従って、建国以来初めて他国から受けた攻撃と言える。
それも、戦争という国際法上フェアな手段ではなく、テロという言わば非合法の手段によって受けた不意打ちだ。
そしてこの攻撃に対しては報復という手段を取る。

最後の報復を支持しないのは大方の日本人の賛意を得られる可能性が高い。

が、個人的には「ざまーみろ」と思っている部分がある。
(「現象」に対してである。個々の犠牲者は実に痛ましいと思う。ここは区別する必要がある。)
アメリカはかつて、日本に対して、東京大空襲に於いて8万人、大阪で1万人、広島で12万人、長崎で7万人の非戦闘員を無差別に殺害している。
数字の問題じゃないとは言え、日本はアメリカに桁外れの人間を殺されているわけだ。
これに比してこの事件では3千人の被害者だ。
戦時と平時の違いだけで、ここまで殺していいモンだろうか。
そんな日本人の立場からは「ざまーみろ」ってちょっと思ってもバチが当たることはないんじゃないだろうか。

当時、「世界が終った」くらいの大袈裟な騒ぎようだったが、その後のアメリカのヒスっぷりには吐き気を憶えたのも事実。

この映画を見ながらそんなことを思い出した。