030:牛（ほたる）

牛乳に浸したままのビスケット罪悪感の連鎖は続く

029:くしゃくしゃ（ほたる）

くしゃくしゃのタオルケットが離せずに待つことだけに慣らされていく

028:透明（ほたる）

透明な傘のクラゲが寄り添って孤独分け合うマルキュー前で

027:既（ほたる）

既製品にはなれなくてはみだした二個目のボタンは外されたまま

026:コンビニ（ほたる）

温度差を確かめたくて手をつなぐ夜更けのコンビニまでの直線

025:氷（ほたる）

氷嚢の水が囁く戯れ言に微熱を帯びたやわらかな頬

024:天ぷら（ほたる）

天ぷらの油のはねた手の甲の小さな痕を撫でられている

023:シャツ（ほたる）

負けそうな気分の朝は赤いシャツ　スカート丈はギリのラインで

022:職（ほたる）

現職のポストに右腕まわしつつ片方で探る不確かな未来

021:くちばし（ほたる）

くちばしからこぼれておちるチョコボールふたりの部屋のスキマにはまる

020:貧（ほたる）

蒼白く透き通る胸貧弱な少女のそれはリボンで隠す

019:ノート（ほたる）

結局は使われぬまま棄てられるノートに貼ったプリクラを剥ぐ

018:格差（ほたる）

公園で眠り続ける猫のうえ格差社会に軋むブランコ

017:解（ほたる）

裏付けのないたくさんの約束は解（ほど）ける嘘がやさしく滲む

016:Uターン（ほたる）

かなしみのベクトルゆるくＵターンスイッチはまだ切らないでいて