015:型（ほたる）

型落ちの液晶テレビが映し出す巻き戻せない過去の残像

014:煮（ほたる）

煮くずした桃の味見は指でする舌先で掬うぬるい憂鬱

013:カタカナ（ほたる）

カタカナでまばたきもせず告げられる機械仕掛けのコトバのように

012:達（ほたる）

かみさまに配達されたやわらかくかけがえのない存在の意味

011:嫉妬（ほたる）

黒々と眉間にとどまるはずなのに嫉妬の文字がうまく書けない

010:街（ほたる）

スパンコールが弾けたあとの歓楽街赤い鱗の散らばる舗道

009:ふわふわ（ほたる）

ふわふわの綿毛を飛ばすくちびるはほんの一瞬無防備になる

008:飾（ほたる）

お迎えの来ない夕暮れいつまでもシロツメクサで編む首飾り

007:ランチ（ほたる）

ランチよりディナーをしたい関係になれたら薄いタイツに変えて

006:水玉（ほたる）

カラフルな夢を見たいの水玉はマーブルチョコの色のパジャマで

005:調（ほたる）

調律の可能なまでに音域を上げられてゆく、そう、その指で

004:ひだまり（ほたる）

ひだまりのような瞳で微笑んで桜の蕾ひらいてゆく人

003:助（ほたる）

そのあとに溺れてしまうはずだから助けてなんてくれなくていい

002:一日（ほたる）

あと少し好きになるまで待っていて半日以上一日未満

001:笑（ほたる）

ウソ泣きに困ったような顔をして口の端だけ歪めて笑う