045:幕（ほたる）

暗幕をひいた教室セーラーのリボンが揺れて秘密めく夏

044:わさび（ほたる）

おさかなをいただく前にする儀式いのりを込めて練る粉わさび

043:係（ほたる）

セロファンの赤を重ねていくように見えにくくしてしまう関係

042:クリック（ほたる）

クリックヲシテハイケナイ　本当はしらなくていいいくつかのこと

041:越（ほたる）

越えられぬかなしい夜に抱いている灰色猫の残した重さ

040:すみれ（ほたる）

すみれ色したしあわせとふしあわせ　ひとさしゆびでかき混ぜている

039:広（ほたる）

許される範囲は広いほうがいい　赤い付箋は少なくていい

038:→（ほたる）

路面には消えぬチョークの→とねじ曲げられた時間が残る

037:藤（ほたる）

「厳密に言えば」だなんてその先はどうでもよくて藤蔓を編む

036:意図（ほたる）

どの意図に添えば正しく生きられる　カクテル今朝も濡れながら咲く

035:ロンドン（ほたる）

ロンドンへ行く夢を見た翌朝はうさぎのカップに紅茶を淹れる

034:序（ほたる）

デジタルな人たちはみなＹｅｓ，Ｎｏ　順序立てて話すこともない

033:冠（ほたる）

飾り羽の抜けたクジャクの冠もアタシのティアラも指輪も曇る

032:世界（ほたる）

とまらない回転木馬に跨って世界平和を祈る雨の日

031:てっぺん（ほたる）

てっぺんにたどりつけない真夜に降る雪とアメイジング・グレイスと