壁にあるふたつの時計お互いの刻みし音を意識する四時
「短歌研究」 8月号 『うたう☆クラブ』 小嶋ゆかりコーチ 選
あをぞらに五線譜引きし電線の雀は歌う日曜の朝
「短歌研究」 8月号 『短歌研究詠草』 佳作 高野公彦 選
区切られし鈍色の空持ちよりて霞ヶ関の風生ぬるく
振り向いてほしいわけではない花の見詰めつづける視線の彼方
♥純子さんのお部屋で詠みました♥
路地裏のスキマへ逃げるゆふぐれは掠れた音のハモニカのやうに
水鏡透かして映す吾のこころあをぞらまでの距離ほど遠く
背中から雨に起こされ眠らない羊の国の迷い子になる
昏々と眠りゐるわれ地下鉄の胎児となりてトンネルを出づ
「短歌研究」 7月号 『短歌研究詠草』 佳作 高野公彦 選
「とまります」の赤いランプに囲まれてバスはぼんやり雨夜を走る
ゆふぐれの砂場に残るトンネルと赤錆色のシャベルと靴と
うつくしいゆめをみましょうびいどろの金魚はあかいべべきておどる
週末の空の距離感つかめずにまた見失うアタシの居場所
泣きたくて涙こぼれぬ金曜の瞳に映るみづいろの翅
さらさらとシュガーポットに降り積もる
甘い時間にウズもれてゆく
開いた穴塞ぐ冷たいピアスには色のつかない硝子をひとつ