10日にHPの更新を一気に行う。8日、9日の東海集会の様子と、正三のHPをまとめる。
東海集会で、写楽の会のD氏と親しくお話しをすることができた。メールのやり取りが今続いている。以下に掲載するのは、D氏が主催する社楽の会で報告される今回の初志の会・東海集会の様子だ。
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(D氏からのメール)
これまではいろいろな研究会に参加しているが、その中でも初志の会は好きな会の
一つである。
あくまでも子どもが主役で、子どもの気持ちにより添って、始めに子どもありきで授
業を組み立てると
いう考え方は、教育者としてあるべき姿だと思っている。
今回特に参加してみたいと強く思ったのは、現在の社会科に危機感を抱いているか
らである。総合
的な学習の時間が入り、これまで丹葉社会科が大切にしてきた教室外の活動を総合に
取られ、座学
の分だけが残ってしまった。文科省は、それでも社会科で「資料を選択し活用する学
習活動を重視す
るとともに作業的,体験的な学習の充実を図るようにする。」(学習指導要領)と
言っているが、現実に
は物理的に難しいことは現場の誰もが感じている。
そこで、社会科発足当時の、さらに言えば、社会科解体論を乗り切った当時の話
を、もう一度上田薫
先生の言葉で聞き、社会科のあるべき姿をとらえなおしたいと思ったのが本当の動機
である。
あいにく、上田先生は体調を崩され、話を聞くことができなかったが、渥美先生の
お話や、参加者の
真摯な態度が、上田先生の思いを具現化しているように感じた。その点で、自分に
とって心が洗われた、
十分有意義な会であった。
ただ、ここでは敢えて、初志の会のために、別の視点でとらえ直してみたい。
初志の会は、私が生まれた前日に熱川で誕生した。私の人生と同じ長さの伝統があ
る。その研究の
手法の意図はおおよそ理解しているつもりである。中でも、授業記録をおこして、そ
こから分析する手法
は高い価値があると思っている。
ただ、2~3年前、全国の研究指定校で授業を100以上見て回って思ったことだ
が、やはり授業は(当然
ながら)生が一番。子どもの目、口元、指先。声に出さなくても、気持ちは伝わって
くる。子ども同士のやり
取り、教師の目配りなど、テレビのドラマ以上に面白い。
今回、中学校の分科会に参加して思ったことは、文字情報の限界だ。これがせめて
動画なら、教室で
生徒が向かい合っているという配置、しかし、気持ちは一人ひとりが教師に向かって
いたと言うことはすぐ
に読み取れる。文字情報と動画を併用すれば、もっと深い議論ができたのではないか
と思う。
人間は、視覚から7割以上の情報を得ているという。また、文字情報はテープ起こ
しをする教師によって
フィルタリングされている。今後ますます増えていくだろう、ペア学習やグループ学
習の話し合いの様子は
拾えない。個々のつぶやきも拾えない。そして、何より、過大な労力がかかる。初志
の会の初期は動画を
保存する技術がなかったため仕方がないが、今は簡単に撮れ、それがメールで送れる
時代である。これ
までの手法を大切にしながら、新しい手法も取りいれてみてはどうか思う。
前回、大阪で初志の会に参加した時は、一人の発言に2時間費やして話し合った。
それは決して悪い
ことではないが、私には前に進まない議論に思えた。実際、同じ言葉が何度も繰り返
されていた。その子
の生育歴や家庭生活に入るのもあってよいことだが、主題がそちらへ移ってしまっ
た。そうした児童理解
なら、心理学の手法を用いたもっと優れた別の方法がある。
社会科授業の検討として大切なのは、いかにして社会認識を通して公民的資質を身
につけるか、平和と
民主主義を大切にし人間の真の幸せを希求する人を育成するかという方向性をもって
いなければならない
ということである。それを見失うと、社会科ではなくなり、社会科の初志はつらぬけ
なくなることになるだろう。
あの場に上田先生がいたのなら、きっとそう言われたのではなかったか。
今回参加してきた人たちは、今の例と異なり、社会科の目標を理解している人たち
ばかりであると思う。
座談会での事例も優れたものであった。そのような中で、共に同じ空気を吸うことが
できたことは刺激に
なった。何より、早川先生はもちろん、酒井先生や川合先生、足立先生、あかりの会
などの力量の高い、
前向きな先生方と話ができたことはとても楽しい時間であった。ぜひとも、来年の三
重県でも参加したいと
思うと同時に、もっと自分の力量を高めなければと感じた2日間であった。
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D氏の「社会科の危機打開のために初志に参加した」という一文に深い感銘を受けた。初志の会はその力を秘めている。
授業分析についての提言など、今後の初志の会の中で話し合うべき示唆にとんだ意見だと感じた。