一橋MBAブログ 「くにたち」な日々

HMBA有志による非公式リレーブログ

知識を整理する指針

2006-11-16 23:50:13 | 戦略ってなに?(P&N)
こんにちは。P&Nです。 

先週読んだ『野中郁次郎・竹内弘高1996「知識創造企業」東洋経済新報社』の後半に「ハイパーテキスト型組織」という部分があります。この部分を読んでいて、なるほど、と思ったことがありました。

まず、本の中で言われていることは、私が理解したところでは、次の内容であるようです。普段働くときに社員はいろいろな経験をします。まず、①普段所属する部門で働くときに知識を実践、蓄積します。②また特別なプロジェクトなどに参加し、他の部門の人と接したりして新しい知識を獲得します。③そしてこの知識は、企業のビジョンや組織文化の文脈に沿って再分類、再構成されます。この①、②、③を行ったり来たりすることで組織はより効率的に知識を創造できる、ということのようです。

今回私が、なるほど、と思ったのは③の部分です。

普段自分の部署で普通に仕事するときは、自分が持っている経験や知識を使って働いています。そしてちょっと特殊な仕事を割り当てられて新しい経験をすることで、また一つ知恵がつきます。ここまでは別に新鮮さはありませんでした。

しかし、自分が得た知識を再分類・再構成するために何らかの指針が必要だということは、今まで明確に意識していませんでした。確かに、仕事で知識が増えたといっても、そのままでは頭の中で、ただの知識の羅列、知識のごった煮状態です。何かの方法でそれを自分の中で整理し、心の倉庫のどこかに位置づけておかないと、別の機会に、うまくその知識を思い出せず、利用できないかもしれません。

例えば、急にあるプロジェクトに狩り出され、そこで今まで知らなかったエクセルの使い方を教わったとします。その結果仕事が効率的に処理できました。その経験はそのままでは、あ~よかった、あの時は苦労しなくて済んだ、という思い出になるだけです。しかし、その経験を「仕事の効率化の例」として頭の中に一度整理しておけば、所属部署に戻ってエクセルで表を作るときに、「何とか効率的にできないか」→「効率化といえば、そういえば、あのとき教わったあの手を使えば楽になる」と思い出すことができます。もちろん、この程度は普段無意識にやってしまっているのですが、効率化という心の倉庫の中に入っているからこそ、思い出せるのだと思います。

心の倉庫に整理しておく意義は、もうひとつあると思います。それは心の倉庫の中にある別の知識と結びつけて、さらに一歩先を考えられるようになる、という点です。仕事を効率的にやりたいと思ったときに、心の倉庫を探してみたら、別の成功例が保管されてありました。「そうだ、効率化といえば、別のときには別の方法でも効率化できた。ではその両方を使えばもっと楽に処理できるのではないか」ということで、複数の効率化例を組み合わせることで、相乗効果が出てくるように思います。

こうなるためには、社員の心に「効率化」という棚が作ってあることが大前提です。そして、それは社員の心がけでもありますが、組織の雰囲気がそう促すかどうかも重要でしょう。思うにトヨタ自動車では、組織文化の働きかけによって、社員の皆さんが自分の心にいろいろなテーマの整理棚を作っているのではないでしょうか。コストダウン例、部品点数をどうやったら減らせるか、どうやれば短時間で作業できるか、不具合を減らすには、材料の無駄遣いをしないためには、・・・。そして普段の仕事から得た知識をどんどんその整理棚に蓄積していき、必要であれば自由に取り出し、組み合わせ、活用しているのではないかと思います。