よしーの世界

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江戸の旅日記   ヘルベルト・プルチョウ

2021-04-04 07:34:57 | 
日本人の日記の面白さを紹介してくれたのが、私が敬愛する故ドナルド・キーン先生。本書の著者は

18世紀はじめ、八代将軍徳川吉宗の時代に、それまでの歌を主体として現実を直視しない紀行もの

から、実際に見た物を書き残すという新しい見方に変わったという。登場する人物は貝原益軒、本居

宣長という有名な人物から、古川古松軒、そして富本繁太夫なる人物迄幅広い。そして書かれている

ものも科学的なモノから風俗、下世話なモノまで広範囲だ。


最初に衝撃を受けるのが高山彦九郎、菅江真澄による天明の大飢饉の記述で、生々しくあまりにも悲

惨で幕府や地方の藩政に対する批判に繋がっている。現実を見つめることで批判精神が養われるとい

う紀行物の側面を大きくして、後々の維新活動に影響を与えている。


絶対的な中央集権体制は観念的なものに陥りやすい。現代においてもそうだが江戸時代の情報網があ

まり発達していない頃は特に顕著だ。江戸時代のアイヌを取材した菅江真澄も松浦武四郎も明治以降

の民族差別意識がない。逆にアイヌ語を詳細に書き残すことで貴重な資料になっている。そして松浦

武四郎は函館奉行から現地調査も頼まれている。今あらゆるものがヴァーチャルで体験できるが、そ

こには発信する側のバイアスが必ずかかる。これからリアルがとても重要になる。


江戸の旅日記     ヘルベルト・プルチョウ            集英社新書
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