日本人の日記の面白さを紹介してくれたのが、私が敬愛する故ドナルド・キーン先生。本書の著者は
18世紀はじめ、八代将軍徳川吉宗の時代に、それまでの歌を主体として現実を直視しない紀行もの
から、実際に見た物を書き残すという新しい見方に変わったという。登場する人物は貝原益軒、本居
宣長という有名な人物から、古川古松軒、そして富本繁太夫なる人物迄幅広い。そして書かれている
ものも科学的なモノから風俗、下世話なモノまで広範囲だ。
最初に衝撃を受けるのが高山彦九郎、菅江真澄による天明の大飢饉の記述で、生々しくあまりにも悲
惨で幕府や地方の藩政に対する批判に繋がっている。現実を見つめることで批判精神が養われるとい
う紀行物の側面を大きくして、後々の維新活動に影響を与えている。
絶対的な中央集権体制は観念的なものに陥りやすい。現代においてもそうだが江戸時代の情報網があ
まり発達していない頃は特に顕著だ。江戸時代のアイヌを取材した菅江真澄も松浦武四郎も明治以降
の民族差別意識がない。逆にアイヌ語を詳細に書き残すことで貴重な資料になっている。そして松浦
武四郎は函館奉行から現地調査も頼まれている。今あらゆるものがヴァーチャルで体験できるが、そ
こには発信する側のバイアスが必ずかかる。これからリアルがとても重要になる。
江戸の旅日記 ヘルベルト・プルチョウ 集英社新書
18世紀はじめ、八代将軍徳川吉宗の時代に、それまでの歌を主体として現実を直視しない紀行もの
から、実際に見た物を書き残すという新しい見方に変わったという。登場する人物は貝原益軒、本居
宣長という有名な人物から、古川古松軒、そして富本繁太夫なる人物迄幅広い。そして書かれている
ものも科学的なモノから風俗、下世話なモノまで広範囲だ。
最初に衝撃を受けるのが高山彦九郎、菅江真澄による天明の大飢饉の記述で、生々しくあまりにも悲
惨で幕府や地方の藩政に対する批判に繋がっている。現実を見つめることで批判精神が養われるとい
う紀行物の側面を大きくして、後々の維新活動に影響を与えている。
絶対的な中央集権体制は観念的なものに陥りやすい。現代においてもそうだが江戸時代の情報網があ
まり発達していない頃は特に顕著だ。江戸時代のアイヌを取材した菅江真澄も松浦武四郎も明治以降
の民族差別意識がない。逆にアイヌ語を詳細に書き残すことで貴重な資料になっている。そして松浦
武四郎は函館奉行から現地調査も頼まれている。今あらゆるものがヴァーチャルで体験できるが、そ
こには発信する側のバイアスが必ずかかる。これからリアルがとても重要になる。
江戸の旅日記 ヘルベルト・プルチョウ 集英社新書