県水産試験場(和歌山県串本町、竹内照文場長)は、梅加工業「紀州ほそ川」(みなべ町、細川清社長)と養殖業「岩谷水産」(串本町、岩谷裕平社長)との共同研究で、梅酢を添加した配合飼料を食べさせた「梅マダイ」が病気に強いことを突き止めた。2月に特許出願した。試験場は「梅酢で養殖マダイが健康になることが証明された。安心安全を求める上で大きな成果。低迷する養殖業界の救世主になれば」と期待している。
試験場では2007年11月から梅マダイと普通の配合飼料を与えた「普通マダイ」を比較。出荷サイズの2、3歳魚が徐々に死ぬ細菌性疾病「エドワジエラ症」と、主にゼロ歳魚がかかるウイルス性疾病「イリドウイルス症」について、発生しやすい6~8月に感染実験をした。
現在、エドワジエラ症に対する認可された治療薬はない。イリドウイルス症には、注射ワクチンが市販されているが、1匹当たり約30円と高価で、接種には多大な労力が必要になり、養殖業者の大きな負担になっている。
エドワジエラ症の実験では、7カ月半それぞれの餌を与えた2歳魚(全長40~45センチ、重さ1・2~1・8キロ)11匹ずつを、感染魚と一緒に飼育した。初めの10日間は双方に変化はなかったが、14日目に普通マダイ1匹が死んだ。その後、22日目、30日目、35日目と1匹ずつ徐々に死んでいき、64日目に全滅した。梅マダイは50日目に1匹死んだだけだった。
イリドウイルス症については、それぞれの配合飼料を2カ月与えたゼロ歳魚(約17センチ)20匹ずつを、感染魚と一緒に3週間飼育。双方とも7、8日目から死に始めたが、普通マダイの死亡率が6割だったのに対して梅マダイは4割程度に抑えられた。試験場増養殖部の堅田昌英研究員は「エドワジエラ症については、口から入る腸内細菌で、梅酢の整腸作用によって腸の働きが良くなったことが考えられる。梅マダイの白血球を調べたところ、異物への攻撃性が普通マダイの約2倍高くなっていた。これも両症状に作用した可能性がある」と分析している。
今後もクエやシマアジなど他の魚類にも効果があるかどうか科学的に証明していきたいという。梅マダイについて串本町大島の養殖業者でつくる「紀州梅まだい組合」(岩谷裕平代表)が「紀州梅まだい」と名付け出荷している。これまでに健康素材として注目されているエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸が増加することが分かっている。料理人によるテストでは、甘み、香り、身の締まり、歯応えなど、すべての項目で普通マダイを大きく上回った。
(紀伊民報、YAHOO!JAPAN)