■頭のよい子は自分の部屋で勉強しない
頭のよい子が育つ家とは“五感が満足できる空間を作る”、つまり親子のコミュニケーションを基にした『空間共有』。こう話すのは、首都圏有名私立中学に合格した200世帯以上を調査し、それに見合った住まい方を提案している「 space of five株式会社 」代表取締役の四十万靖さんは、綿密な調査から割り出された、現代の子供たちに必要な学習環境とはどのようなものでしょうか。四十万さんにお話を聞きました。
◆四万十さんの話
私には3人の子どもがいますが、彼らが中学受験のとき、自分の部屋で勉強しないことで妻によく怒られていました。しかし意外なことに、近所で受験したお子さんのお母さんたちから『うちも子ども部屋では勉強していなかった』という声をたくさん聞いたのです。
今でも多くの大学生たちと空間とコミュニケーションの研究をしていますが、首都圏の有名私立中学に合格した子どもたちのいる約200世帯を対象に、間取りや家庭環境を調査したところ、 頭のよい子たちは自分の部屋ではなく、リビングや台所など家族と同じ空間で勉強している、ということが判明しました。
つまり、頭のよい子が育つ家は親子のコミュニケーションがスムーズで、それは『空間共有』をしている結果だということがわかったのです。それらを基に本を書いたこところ、子育て中の多くのお母さんに興味を持っていただきました。
■子どもたちは自分が集中できる場所を知っている
既存の部屋でも空間共有の改造はできます。一番大きいのは意識の問題。大人は空間を言葉で既定したがるので、子ども部屋=勉強部屋と思っている母親が多いのですが、子どもはそうじゃない。自分にとって気持ちのいい場所、勉強に集中できる場所を子どもなりの理由で選んでいるのです。
台所などで勉強している子などは、勉強していることをアピールしたい、母親に自慢したいという気持ちで傍にいたりする。家族がいるところで勉強するとはかどる、それが空間共有という考え方です。
子ども部屋はあってもいいと思います。 ただイコール勉強部屋ではないということ。お子さんによっては自分の部屋を勉強部屋に工夫できる子もいますから、それはその子にとって一番いい環境なので、否定することはありません。既に住まいをお持ちの方で、頭のよい子が育つ家を作りたいならば、まず子どもをよく観察して、よくいる場所がなぜそこなのか理由を聞いてあげるといいでしょう。
■昔ながらの日本の住まいが空間共有
頭のよい子が育つ家とは、五感を適度に刺激する家ということ。親の気配が感じられる、家族の声がする、それが逆に子どもにとって安心できる環境なのです。考えてみれば、これは昔ながらの日本の家そのもの。もともと日本の家は田の字型構造で、障子やふすまで空間を可変的に使っていたので、家族の声や気配をいつでも感じることができた。
ところが近代的な住まいでは、無理やり仕切って外部からの音が聞こえない空間を作ってしまっています。そういうことを見直そうというのが、私たちの提案している五感の家なのです。
新しい戸建のモデルハウスが横浜の青葉台と四国の新居浜に間もなく完成するのですが(4月中を予定)、今回のコンセプトは?頭のよい子が育つ窓?です。元来の戸建の場合、三次元空間が売りなのですが、今回は2階の床から1階にいるお父さん、お母さんを見下ろせる?窓?を設置しました。いつも下からお父さん、お母さんを見上げているこどもにとっては、全く逆の上からの視点で両親を見下ろせる新しい空間提案です。
「お母さん窓」からは、キッチンの真上でいつも家族のために家事をしてくれているお母さんを見ることが出来ます。「お父さん窓」からは、お父さんの食卓を真上から見下ろすことによって、将来、お父さんと同じ味付けの料理を食べる日を想像することが出来ます。
頭のよい子が育つ家や食卓などでのインタビューで判明した、母親の背中、父親の背中を異次元空間から見下ろすことについての大切さを体現した住宅です。
四十万靖(しじま・やすし)氏
「住まい方」の提案企業、スペース・オブ・ファイブ株式会社代表取締役。慶應義塾大学経済学部卒業後、伊藤忠商事株式会社を経て2003年12月より現職。記憶に残る空間で人をもてなすという日本の古き良き住文化の継承をテーマに活動し、人気私立中学合格者の学習環境調査を実施。今必要な子供たちの学習環境をテーマにしたセミナー等を通じて、新しい住まいのあり方の普及に努める。著書に「頭のよい子が育つ家」(日経BP社)、「頭のよい子が育つ本棚」(学習研究社)、「頭のよい子の家にはなぜホワイトボードがあるのか」(主婦と生活社)、「頭のよい子が育つ食卓」(朝日新聞出版)など。大学生の息子2人と中学生の娘の父。
(niftyニュース、http://news.nifty.com/cs/headline/detail/yucasee-20100331-2996/1.htm)