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理論編〔「社会に開かれた教育課程」と「学校を核とした地域づくり」のつながり〕

2018-08-19 15:14:32 | 社会に開かれた学校

〔パソコンサイト〕

 今から述べることは、国立教育政策研究所社会教育実践研究センター「地域学校協働活動推進のための地域コーディネーターと地域連携担当教職員の育成研修ハンドブック」第2章理論編「地域学校協働活動の推進と人材育成についての考え方」2地域と学校の連携・協働の在り方(1)「社会に開かれた教育課程」と「学校を核とした地域づくり」のつながり(執筆者:岡山大学大学院教育学研究科教授 熊谷愼之輔 氏)から転記した内容です。表記内容を理解するうえで大変参考になるものです。〔読みやすくするために、少し加工してあります。〕※筆者の了解を得ています、

 本文を直接読みたい方はここをクリックしてください。表記冊子がダウンロードできるページに移ります。ページに移ったら全体版《地域学校協働活動推進のための地域コーディネーターと連携担当教職員の育成研修ハンドブック》か分割版《第2章理論編2.地域と学校の連携の在り方》をダウンロードしてください。

「社会に開かれた教育課程」と「学校を核とした地域づくり」のつながり

ア 「地域づくり」と「学校づくり」のつながり

「社会に開かれた教育課程」と「学校を核とした地域づくり」のつながりを理解するには、まず「地域づくり」と「学校づくり」がつながっていることをおさえておく必要があります。「地域づくり」と聞くと、「学校づくり」とは関係ないと思われる方も多いでしょう。しかし、学校を舞台にして、大人と子供や、大人同士の「人間関係のつながり」、専門的にいうと「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」を豊かにすることが学校も地域もよくすることにつながっていることを見落としてはなりません。もう少しいうと、他者への「信頼」、お互い様という「互酬性の規範」、人びとの間の「絆」がソー シャル・キャピタルです。 このソーシャル・キャピタルは、目に見えるものではありませんが、教育とは互いに影響し合っています。例えば、子供にとって“家庭・家族とのつながり”、“地域社会・近隣社会とのつながり”、“学校・教師とのつながり”という三つの「人間関係のつながり」が豊富なものであるとき、子供たちの学力形成に積極的な影響を与えることが多いと報告されています。つまり、「地域、家庭、学校と子供とのつながりの多さが、今日の子供たちの学力に大きな影響を及ぼしている」のです。また、学力のみならず、ソーシャル・キャピタルが豊かな地域(都道府県)では不登校率が低く、さらには高等学校の中途退学率や校内暴力発生率の低さとも強い相関がみられることも指摘されている。 このようにみると、ソーシャル・キャピタルを豊かにし、よい「地域づくり」をしていくことが、子供たちにもプラスに影響し、よい「学校づくり」につながっていると考えられています。逆に「学校づくり」に保護者や地域住民が関わることは、子供だけでなく、大人自身の育ちや「地域づくり」にもつながっているともいえます。 つまり、ソーシャル・キャピタルを通して、「地域づくり」と「学校づくり」は密接につながっているのです。 そうだとすると、「めざす子ども像」を考えていくことは学校の課題だけでなく、地域の課題でもあると認識する必要があります。もう少しいうと、どんな子供に育てたいかは、学校と地域の共通課題となるため、学校にかかわる大人たち同士で「めざす子ども像」についてもビジョンを共有していくことが肝要になってくるのです。

イ 計画的で継続的な「学校を核とした地域づくり」の推進
 こうしてみると、地域と学校のつながりを強め、「地域づくり」と「学校づくり」を循環させて、相乗効果を上げていく必要があることがわかります。だからこそ、 学校側に「地域とともにある学校づくり」への転換を求めるだけでなく、地域に対しても、学校を核とした協働の取組を通じて、地域の将来を担う人材を育成し、自立した地域社会の基盤の構築を図る「学校を核とした地域づくり」の推進を促していくことが重要です。つまり、「地域とともにある学校づくり」と「学校を核とした地域づくり」は改革の両輪なのです。 ただし、「学校を核とした地域づくり」は、「地域とともにある学校づくり」に 比べて、すぐには成果を実感できないものです。学校・家庭・地域の連携協力において、「学校支援」という「地域とともに ある学校づくり」の主なねらいの成果が認識される時期と、それによって地域の教育力そのものが向上するといったねらいが浸透する、「学校を核とした地域づくり」 の成果が実感できる時期には、一定のタイムラグが存在します。だからといって、学校にとって成果が実感しやすい「学校支援」を中心とした取組に偏り、「学校を核とした地域づくり」の視点や取組が疎かになれば、「地域づくり」 と「学校づくり」の好循環を生み出せなくなります。「地域づくり」にとって、学校と地域の連携・協働はじっくりと効き目が出てくる“漢方薬”にたとえられます。だからこそ、「学校を核とした地域づくり」は、「地域とともにある学校づくり」以上に、意図的な処方箋をもって計画的・継続的に取り 組むことが求められます。

ウ 「学校づくり」と「地域づくり」をつなぐ軸となる「社会に開かれた教育課程」
  そのためには、学校の“教育課程”とつながることが有効です。教育課程とリンクするからこそ、「学校を核とした地域づくり」を意図的・計画的・継続的に推し進めることができます。そうした意味でも、次期学習指導要領の特質の一つとして、「社会に開かれた教育課程」が示されたことの意義は大きいのです。「社会に開かれた教育課程」は、中央教育審議会教育課程部会の教育課程企画特別部会において議論がなされ、平成27(2015)年8月26日に「教育課程企画特別部会論点整理(案)」として発表されました。 その基本的な構想は、以下の3点にまとめられる。

① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会づくりを目指すという理念を持ち、教育課程を介してその理念を社会と共有していくこと。
② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合っていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化していくこと。
③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。

 まず、①の「よりよい学校教育を通じてよりよい社会づくりを目指すという理念」には「学校づくり」と「地域(社会)づくり」がつながっていることがしっかりとおさえられています。さらに、「教育課程を介して」には、そうしたつながりを強化し、理念を共有していくのは、“教育課程”に他ならないことが示されています。こうしてみると、先ほど、「地域とともにある学校づくり」と「学校を核とした地域づくり」は改革の両輪であると指摘しましたが、この両輪をつなぐ「軸(シャフト)」になるのが、「社会に開かれた教育課程」といえるでしょう。

 ②に関連して、教育課程については、「『何を知っているか』という知識の内容を体系的に示した計画に留まらず、『それを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか』までを視野に入れたものとして」、構造的な見直しを行う必要も述べています。つまり、学校での「学習」と現実社会の「生活」とを統合し、「知の総合化」をはかる教育課程が目指しているのです。
 ③の「社会に開かれた教育課程」の実施については、「学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させる」必要があり、さらにそれを「保護者や地域の人々等を巻き込んだ『カリキュラム・マネジメント』」によって運営していくことが示されています。たしかに、「社会に開かれた教育課程」を推進していくには、学校内だけではなく、保護者や地域の人々等を巻き込んだ「カリキュラム・マネジメント」の確立が重要になります。その意味では、これからの地域連携担当教職員は、地域との窓口というより、教務関連の校務分掌に位置付けていく方が有効かもしれません。 さらに、「社会に開かれた教育課程」の実現には、学校・家庭・地域といった、いわば“ヨコ”の連携による「カリキュラム・マネジメント」に加えて、子供の発達を 踏まえた学校種間の“タテ”の連携による「カリキュラム・マネジメント」も求めら れてこよう。学校という場を核にした地域づくりを進めるには、子供の発達を意識した異学年・異年齢・異世代間での交流や学びあいの機会をつくっていく必要があります。そのためには、小・中、さらには保幼・小・中・高といった“タテ”の連携による中長期的な「カリキュラム・マネジメント」の視点が不可欠なのです。このようにみると、「地域とともにある学校づくり」と「学校を核とした地域づくり」を推進していくには、「社会に開かれた教育課程」が軸となって双方をつなぎ、「学校づくり」と「地域づくり」を循環させ、相乗効果を上げていく必要がある。そして、この「社会に開かれた教育課程」を実現するうえでのカギを握っているのが、“タテとヨコ”の「カリキュラム・マネジメント」と位置づけることができるでしょう

エ 地域における中高生の出番づくりの意義
 ところで、これまで学校・家庭・地域の連携協力というと、「地域(大人)から学校(子供)へ」の支援を連想し、一方向の取組に偏ってしまいがちでした。しかし、実社会や実生活とのかかわりを重視した「社会に開かれた教育課程」となれば、地域の中で子供たちに出番や役割を積極的に設け、活躍を承認していくという「学校から地域へのベクトル」も含んだ取組を展開していくことも重要になってきます。双方向性のある取組が、協働を生み、学校・地域づくりを促す。 とくに後者のベクトルでは、地域で中高生の「出番と役割と立場」をつくる取組が効果を発揮すると考えられます。これは、彼らを“支援”の対象としてではなく、これからの地域をともに支える“パートナー”として捉え、彼らの出番づくりを地域で意図的・計画的・積極的に推し進めていく取組に他なりません。このような取組を通して、地域の人間関係のなかで、中高生を中心に「あてにする-あてにされる」という相互関係を生み出し、彼らが「役に立っている」、「必要とされている」と実感することが、自己肯定感や自己有用感の向上につながり、成長を促していくでしょう。 こうした中高生の出番づくりの際、彼らにとって年少の子供たち、あるいは年長の大人たちとの交流や学びあいの場面を積極的に取り入れてほしい。児童期の子供たちにとって、発達の先にいる中高生たちとの交流、そして中高生にとって若者(大学生)や地域の大人たちとの交流は、彼らの中に「あこがれ」の対象を生み出し、お互いの活力も増していくと考えられます。このように中高生の出番づくりに、異年齢・異世代間の交流を取り入れることで、“ヨコ”だけでなく、“タテ”の視点にもつながっていきます。こうしてみると、中高生の出番づくりは、“タテとヨコ”のマネジメントによって、「あてにする-あてにされる」関係を地域の中に創造していく、正に「学校を核にした地域づくり」の取組といえるでしょう。 とくに、中高生の出番といっても、当日だけの手伝いでは彼らのやらされ感も高まるでしょう。彼らを“パートナー”とするのなら、事前の企画段階から彼らとかかわっていく方が効果的なはずです。そうだとすれば、 「事前参画」という大事な学びのプロセスを見逃してはなりません。例えば、こうした重要性に着目し、「事前参画」、さらには「ふり返り」を「社会に開かれた教育課程」の一環として組み込んでみるのも面白いでしょう。

オ サービス・ラーニングの可能性
 それに関連して最後に、「サービス・ラーニング(以下、SLと略)」の導入について提案しておきましょう。SLは、学校の教育課程、とりわけ教科で学んだ学習と地域の社会奉仕活動(サービス活動)とを組み合わせた体験的な学習方法である。例えば、教科で学んだことを、「総合的な学習の時間」等を利用して、地域で生かして実践し、さらにそれらの体験を振り返ることで、子供たちは学校で学んだ知識を生活と結びつけ、「知の総合化」を図ることができます。
 我が国の現状にひきつけてみると、学校現場にボランティア活動が積極的に導入されてきていますが、「なぜ、今日は海岸でごみ掃除をするのか?」、「なぜ、老人ホームでお年寄りの方々とふれあうの?」など、子供たちの疑問の声もしばしば耳にします。その場合、「ボランティア活動だから」と教師も返答に窮してしまいがちです。 しかし、SLの手法を取り入れた教育実践の場合、単なるボランティア活動ではなく、子供たちが教科で学んだことを踏まえて地域で実践することになり、こうした疑問や問題も解消していくと思われます。こうしたSLを企画し、実践するには地域の力が不可欠です。そのため、SLは、「コミュニティのニーズ」に応じた地域課題を出発点としています。つまり、地域住民のニーズにもとづいたサービス活動でなければ、SLにはならない。しかも、地域住 民や保護者の協力がなければ、その活動を子供たちが地域で実際に取り組んでいくこともできません。だからといって、地域だけでSLに取り組むのは難しいことです。というのも、SLは学校の教育課程とつながっており、企画していくにはどうしても教師の力が必要となるからです。このようにみると、SLの取組は、学校(教師)と地域 (地域住民・保護者)が力を合わせないと実践できない。だからこそ、SLは、学校に関わる大人同士の「協働」を生み、「地域とともにある学校づくり」と「学校を核とした地域づくり」を推進し、双方の循環を促す有効な手法と考えられます。

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