秋風に歩行(あるい)て迯(にげ)る螢哉
筏士(いかだし)の箸(はし)にからまる螢哉
大家根(おほやね)を越えそこなひし螢哉
熊坂(くまさか)が長刀(なぎなた)にちる螢哉
舟引(ふなびき)の足にからまる螢哉
本町(ほんちやう)をぶらりぶらりと螢哉
(きりつぼ、源氏も三ツのとし、我も三ツのとし
母に捨られたれど)
孤(みなしご)の我は光らぬ螢かな