芥うかべて寒の水の澄まうとする雲かげ
夫婦喧嘩もいつしかやんだ寒の月
たばこやにたばこがない寒の雨ふる
なんときびしい寒の水涸れた
(三河近江の境に川橋あり。それを渡りて)
我裾は三河の露とまじりけり
(初雪に友をまねきにつかはしける)
我宿の雪のはしり穂見にござれ
我(われ)が身に秋風寒し親ふたり
我(われ)が身の細うなりたや牡丹畑
我はまだ浮世をぬがでころもがへ
(つくづくとおもふ)
我むかし踏みつぶしたる蝸牛(くわぎう)哉
夕暮は鮎の腹見る川瀬かな
夕立のまたやいづくに下駄はかん
夕立や隣在所は風ふいて
幽霊の出どころはありすゝき原
ゆがんだよ雨の後(うしろ)の女郎花
雪の降夜(ふるよ)握ればあつき炭団(たどん)哉
むかしから穴もあかずよ秋の空
むかしやら今やらうつゝ秋のくれ
虫籠を買(かう)て裾野に向ひけり
(父の身まかりける忌中の名月)
虫も鳴(なき)月も更たり忌(いみ)の中(うち)