病院の午後は紅梅の花さかり
河風の藪の中なる紅梅ぞ
紅梅の火加減もよき接木哉
紅梅の落花燃らむ馬の糞
紅梅や入日の襲(おそ)ふ松かしは
紅梅や黄鳥(うぐひす)とまる第三枝
紅梅や比丘より劣る比丘尼寺
紅梅や比良(ひら)の高ねに雨の雲
紅梅や古き都の土の色
早稲酒や朝市ひけし肴河岸(さかながし)
早稲酒や自慢につるす杉の枝
早稲酒や店(たな)も勝手も人だらけ
早稲酒や難波長者の笑ひ声
我にきけとばかり啼(なく)の歟(か)閑子鳥
葭雀(よしきり)や弁当すみし作事(さくじ)小屋
(須 磨)
寄せて来る女波(めなみ)男浪(をなみ)や時鳥
世の塵を降りかくしけり今朝の雪
世は花と誉る新茶の薫り哉
好い連(つれ)を誘ひ合せて梅屋敷
宵ながら提灯借て花心
宵ながら花に灯(とも)せる火は朧
宵の間に露けき月の光りかな
宵闇にかゝる匂ひや梅屋舗
行雁に後れて立や安旅籠(やすはたご)
行春を惜む二階の灯(ともし)かな
行人(ゆくひと)の笹をかざせし残暑かな
ゆるむ日の罔両(かげぼし)見るや寒の入